産んだだけで全部チャラ? 「婦人公論」誌上で母性神話のタブーに切り込む
「婦人公論」3月7日号の特集は、「心と体の免疫力を上げる」です。作家の曽野綾子、建築家の安藤忠雄らが自分の病歴と健康法を語っています。昨年10月に心臓の手術を受けた武田鉄矢のインタビューも掲載されています。タイトルは、「『僕は死にません!』と誓ったあの日から」。シャレがきいてておもしろいタイトルではありますが、いくらなんでも20年も昔のドラマにひっかけなくても……と思ったら、なんとっ! 今年3月に舞台『時代劇版 101回目のプロポーズ』が上演され、主演するのだそうです。もちろん相手役は浅野温子。62歳と50歳、合わせて112歳のプロポーズ。いや〜、特集の内容よりこの舞台のほうが気になっちゃいます。特集についてはご興味のある方は各自ご覧下さい。このレビューでは特集以外についてお伝えしたいと思います! SAY YES!
<トピックス>
◎信田さよ子×村山由佳 「神」として私を支配する母の呪縛から逃れるまで
◎嵐 魔法より軌跡より強く思ってる ここからきっと世界が変わる
◎韓流! 未体験ゾーン
■母さん、あのとき私に……
まず、臨床心理士・信田さよ子と作家・村山由佳の対談「『神』として私を支配する母の呪縛から逃れるまで」を見てみたいと思います。こちらは抑圧の強い母親と娘の確執がテーマ。村山由佳は、躾が厳しく、善し悪しや好き嫌いなどすべての物事の基準を決める母のもとで育ち、中学時代より後は母に愛してほしいと思ったことは一度もないそう。支配力の強い母と心を通わせられない自分をモデルに小説『放蕩記』を著し、昨年刊行しました。彼女ほど強烈ではなくても、母と娘の愛憎半ばの微妙な関係性に思い当たる人は多いのではないでしょうか。信田によれば、「(母親の支配やそれに対する怒りを)大学に入って家を出て悟る人や、子どもを妊娠、出産して初めて『ああ、母は自分に何てことをしてきたんだ』って関係を見直す人も多い。中には介護の段になって気づく人もいる」とのこと。対談中、いろいろと名言があったので抜粋します。
信田「男性にとって、父親であることはアイデンティティの2、3割とか、ゼロでも許されたりするじゃないですか。でも母親であることは、時に女性にとってアイデンティティの9割とか100パーセント。それが母性神話の温床になる」
村山「だからこそ、母を棄てる娘は悪い娘だっていう社会規範、目に見えないモラルは強い。自分も縛られていると痛感しました」
村山「自分は完璧な母親だと自信満々な人ほど怖い」
信田「怖い、怖い! もうどこからくるんでしょう、その自信は。『産んだだけで悪いこと全部チャラ』と思っていて、子育てに迷いがないの。だから、同じく産む性である娘から否定されるのは、母として我慢ならない」
信田「女性がみんな母親に向いているわけでは、決してないんですよね」
ゾクッとするような言葉がたくさんありました。ママタレントの「母になって幸せ」インタビューを掲載したり、若々しい母親と娘の「友だち母娘」スナップを掲載したりする女性誌はよくありますし、それはそれでいいことですが、それが「女として当然である」「女とはそういうものである」と思われることに苦痛を感じる人は少なからずいると思います。女性のための女性誌だからこそ、ガチガチの価値観で女性の首を締めることはしてほしくない。真正面から堂々とこうしたテーマに切り込んでいっていいのではないでしょうか。女なら誰でもこの関係に陥る可能性があるのです。みなさん、自分と母親の関係性、自分と娘の関係性を見直してみてはいかがでしょうか。
■婦人公論のライブレポシリーズはネタとしてアリの境地へ
今号は嵐のライブレポートが掲載されています。といっても「婦人公論」はただのレポじゃございません。昨年行われた嵐の国立競技場コンサートのときは、歴史小説家が嵐人気をお江戸モノに例えて伝えるというマニアックな仕掛けを披露しました。今回は、嵐ファンの歌人・加藤千恵によるスペシャル短歌付き! 三十一文字でメンバーの魅力を語り尽くします!! しかも、加藤さんは1983年生まれで、二宮和也、松本潤と同じ28歳。いい年頃ですネ。
短歌でライブレポ、いったいどんな誌面になるのかと思ったら、これがまた……これでいいのか!?と一瞬戸惑ってしまいました。いえ、短歌は素晴らしいと思うんですよ。句の頭文字をつなぐとメンバーそれぞれの名前になるという難易度の高いとても凝ったつくり。すごいです。だけど、なんと言ったらいいのか、嵐ファン、短歌(加藤)ファン、どっちも興味がない読者、三者のポカーンとした顔が目に浮かぶ、そんな企画でした。いやいやいやしかしですよ、出版不況で雑誌の企画が無難に流れがちな中、編集部のチャレンジ精神はすばらしいと思います。これからもジャニーズ+文化人の異色コラボよろしくお願いします!
今号は、もうひとつイケメン特集があります。「韓流! 未体験ゾーン」です。ドラマ、映画、K-POPなどで2012年活躍が期待されるメンズの紹介と、韓国時代劇の魅力を紹介。さらに、韓国人男性と結婚した日本人女性に生活ぶりを聞いた「日韓夫婦のリアルライフは甘く、時にほろ苦く」というルポがあります。旧正月や法事のときに一日中チヂミを焼き続けた、義父に「肌が荒れているね」と言われた、義母が冷蔵庫を勝手に開ける……などなど、ルポとして聞いてる分には笑える内容なのですが、実際自分が嫁の立場でそんなことがしょっちゅうあったら辛いなと思うことばかり。国際結婚の難しさ、おもしろさがよくわかります。マッチョな韓国イケメンとの出会いを夢見ている方は、行動に移す前にぜひチェックを!
(亀井百合子)
嵐をオフィシャルにネタ化できてうらやましいな〜
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