バラエティーより怖い? 『ミュージックステーション』のワイプが映すモノ
今回ツッコませていただくのは、『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)の「ワイプ(小窓)」。
一般的にバラエティー番組のワイプの場合は、リアクションが大きかったり、涙を流してみせる芸人・タレントなどが「ワイプ職人」として重宝されることが多いもの。『ミュージックステーション』でももちろん人気のある人やリアクションの良い人がたくさんワイプに抜かれるという意味では、共通している。特に、AKB48やHey!Say!JUMP、EXILEなど、大勢のグループの場合には、自然と人気メンバーがたくさん映るため、メンバー内格差がかなり大きい。
また、ワイプに抜かれたときの態度や表情で「イイ人(イイ子)そう」「ノリがいい」などと判断されることも、バラエティーのワイプと同じだ。
だが、『ミュージックステーション』の場合は、事情が異なる部分もある。バラエティー番組の場合、出演者が見ているものは自分と関係のないロケVTRなどが一般的だが、『ミュージックステーション』の場合は、流れるのはあくまで「別の誰かの曲」だけに、別の意味を孕んでくるように思う。
別の人の曲を聞きながら一緒に口ずさんでいる様子がワイプに映し出されると、前述のように「イイ人そう」「ノリがいい」「かわいい」などと見る人が多い一方で、「鬱陶しい」と感じる人も結構いる。
そうした人たちの言い分は「ワイプで抜かれることが分かっていて、わざとノリノリに振る舞っている」ということ。特に、バラエティーなどで「わざとらしく驚く・笑う・泣く」のと違い、モノが「音楽」であるだけに、「音楽性が全く合わないのに、ノッているフリをする=わざとらしい」とか「曲をリアルに知らない世代なのに口ずさむ=わざとらしい」などと見る向きもあるようだ。
確かにワイプというもの自体を鬱陶しく感じる人が多いのは頷ける。だが、実際、ワイプに抜かれることを常に意識して振る舞っているとしたら、プロ意識が高くて立派なものだと思うし、リアルに知らない世代が口ずさんでいるのも「よく勉強してるな」と思う面はある。
個人的には、L’Arc~en~Cielのhydeなど、表情を見せない真っ黒なサングラスを着用したアーティストが、わりとミーハーなJ-POPでも楽しそうに体を揺らしている姿などを見ると、かわいらしく思えてしまうけれど……。
ただし、時折、恐ろしいものを見てしまう瞬間もある。それは、日頃、愛想の良い女性アイドルが、ふと「素」の顔をさらした瞬間が映し出され、挙句、すぐさま笑顔に切り替えるところまでも映ってしまうとき。
バラエティーに溢れるありふれたワイプと一線を画した、『ミュージックステーション』ならではの、ときに鬱陶しく、ときにかわいく、ときに恐ろしい「ワイプ」に着目してみるのも面白いかも。
(田幸和歌子)
「ワイプなんかでやる気出すヤツは~」と言いそうなタモさん
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