“育児をクリエイト”したがるパパだらけ! 「nina’s」から漂う新たな臭み
隔月のお楽しみ「nina’s」。前回のレビューでは「同じ女性としてこれといった引きはないにもかかわらず、『子どもを産んだ』ということで箔が付いたタレントさんたちが並びます」と、改めて読むと失礼なことを書きましたが、今号の表紙はそれらのママタレントから頭ひとつ抜け出た感のある紗栄子。ナチュラルコスメ、ほめられスイーツ、そして”おしゃれ家族”。漠然としたキーワードながら特定の人の琴線にビンビン触れまくる文章が、くるくるパーマの外国人子どもモデルと共に微笑む紗栄子の周りを踊ります。あぁ怖い、ページをめくるのが! 今回こそ、「nina’s」の放つクリエイター臭にノックアウトされないように読み進めなければ…..。
<トピックス>
◎子どもといっしょにもっと遊ぼう
◎ほしのあき、森貴美子、中西モナetc有名人初産ママ続々!ママデビューします
◎おしゃれ家族のバギー&ベビーカースタイル
■ベビーカーに乗せられる「おしゃれ」という重み
まずはじめに、「nina’s」名物ストリートスナップを拝見しましょう。今号は「おしゃれ家族のバギー&ベビーカースタイル」と題し、街行く素敵なファミリーの自慢の愛車を紹介しています。それにしても、どこに行けばこんな一族郎党おしゃれな方たちに出会えるのでしょうか。パパは今流行りの雰囲気イケメン、ママは原色づかいの上級ファッション、子どもはUGGのムートンブーツ……成長ゆえ光の速さで履けなくなるというのに!
乳母車と呼んでいたのも今は昔、のベビーカー業界。さらに、アップリカ、コンビなど一般的な4輪も「nina’s」では少数派のようです。なんでも「ファッションにあったベビーカー&バギー選び」が大切とのこと。スタイリッシュな3輪バギー、カラフルな海外もの、人目をひくハイテクベビーカーをおしゃれに押してる私を見て!ということですね。
さらに大切なのは、バギー&ベビーカーという素材をいかに”ウチららしく”カスタマイズするか、ということ。若い頃から「人と違う」を命題に生きてきたパパママたちです。「子どもが飽きないように」とシートに取りつけられたおもちゃは「Sassy」(海外知育玩具)、「UNIKKO(フィンランド・マリメッコ社)の生地で友人が作ってくれた」フットマフ、fafa(人気子ども服ブランド。なかなかお高い)のポーチは哺乳瓶入れに……という具合に、両親のこだわりがどんどこベビーカーに乗せられています。そんなに夢と希望と理想を乗っけたら、子ども下ろした途端に後ろひっくり返っちゃうよ!
この企画を見て、筆者は地元の友達(元ヤン)が乗っていたトンデモないアメ車を思い出しました。ダッシュボードにフェイクムートンのマット、ルームミラーにはレイ、なぜかハンドルカバーはミッキーマウス……。ヤン車のデコりと、おしゃれパパママのカスタマイズが、遠く”自己顕示欲”という地平で重なると共に、両者のこだわりが一般人レベルには全くもって響かないという事実が。ベビーカーは歩道の無法者だったりしますしね。
余談ですが、登場するパパママたちの肩書が「プレス、デザイナー、エディター、美容師、ネイリスト、スタイリスト」である場合は表記、その他は全て会社員or主婦という、「nina’s」の鉄の掟を発見したことをご報告致します。潔い!
■モナさんの「ハッピー連呼」が辛い
今まさにベビーブームの様相を呈す芸能界。ほしのあき(5カ月)、モデルの森貴美子(6カ月)、SHEILA(7カ月)、中西モナ(3カ月)、モデルの小泉深雪(10カ月)。続きましてはそんな”プレママ”5人が夢見る妊婦生活を語る「ママデビューします」を見てみましょう。
入籍後、即妊娠が報告されたほしのあき。「一時期コンビニのツナマヨネーズのおにぎりをずっと食べていたら、彼が仕事先からツナマヨネーズのおにぎりを握ってきてくれたこともありました(笑)」と年下夫の手綱バッチリであることをアピールしております。また「具合が悪くなることもないし、お腹より胸のほうがまだ目立つくらいだから(笑)お母さんになるんだ!っていう実感は、実際まだあまりないんですよ」「妊娠したから、子どもを産んだからって女性を捨てないようにしなきゃね、って旦那さんにしっかり言われたのもありますし」など、読み手を静かにイラつかせるテクニックもさすがです。
みなさんのインタビューを読んでいると、まぁ夫が妻に尽くすことこの上ない。
「彼は結婚してから料理に興味を持ち始めて、今は料理が苦手な私よりずっと上手になり頼もしい限り」(森)
「毎晩日課のように足の裏とふくらはぎをマッサージしてくれるの」(SHEILA)
そんな中、一番月数が浅い(3カ月)というのに一番恰幅のいいあの方、元山本モナでおなじみの中西モナさんは一人異彩を放っておりました。「山本モナから結婚後の本名の中西モナになって、メディアでの私の印象から解放されて楽になったんですよね。山本モナっていうイメージに自分が寄っていかなきゃいけないところがあったんです」と、ノッケから”昔の私は無理してた”発言。そのイメージでひと稼ぎしたじゃないですか! もうこうなるとその後の発言が全てエクスキューズに聞こえてしまいます。
「自分がハッピーになれるような場所づくりをして、環境や考え方を整えるのが大事」「幸せな場所や人に自分から近づいていけば、幸せが連鎖していくような気がしますね」……どうやら芸能界でもまれていたことを”負”と捉えているようなのですが、モナさんがいろいろやりっ放しにしたことで不幸になった人も数知れずですよ。妊娠したら全部チャラ?
「妊娠中の気持ちをできるだけ活字に残して、あとで子どもに見せたいなって思っています」。そう活字は残るんです。過去の自分とはそう簡単にお別れできない、タレントさんという職業。ハッピーハッピー連呼するモナさんの複雑な心境が、泥臭いことを忌み嫌う「nina’s」で浮きに浮きまくっていたこのプレママ企画。やっぱりほしのあきが一番強かですな!
モデルの森貴美子の夫はカメラマン。「マタニティ写真をたくさん撮っています。彼は検診にも頑張って来てくれるんですが、その帰りにいつも同じスポットで写真を撮るのを決まりにしている」んだそう。「たまごクラブ」(ベネッセ)も「I LOVE mama」(インフォレスト)も、爆発しているのはママの自意識ですが、「nina’s」の幸せ家族の指標はパパたちのこんな強いこだわり。「VERY」のイケダンが”ママの評価物”なのに対し、「nina’s」のパパたちは”育児をクリエイトするオレたち”なのです。意思ある生き物だけに厄介だわ~。クリパパ(筆者命名)って、どこか昭和の頑固親父引きずってるところあるんですよ。もしかしたら「nina’s」家族は平成の寺内貫太郎一家なのかも。来号でさらに探りたく思います。
(西澤千央)
ヤンキー上がりのおしゃれさんが多そうだもんね~
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