“朝ドラ”ゆえ? 『カーネーション』不倫描写に対する視聴者の反発
今回ツッコませていただくのは、大評判のNHK朝の連続テレビ小説『カーネーション』。
1月終盤の展開は、朝ドラでは珍しいほど好き嫌いのはっきり分かれる内容だった。恋を知らずに結婚・出産した糸子(尾野真千子)が父や夫、幼なじみを亡くし、ぽっかりと空いた心に入ってきた紳士服職人の周防龍一(綾野剛)。原爆の後遺症がある妻と子どもがいる周防に、自ら「好きでした」と告白する糸子。そそくさと去ろうとする腕を周防が素早くつかみ、抱きしめ、「おいも……好いとった」と告げる場面にトキメキを感じた女性視聴者は多かったはずだ。
夫を大切に思うあたたかい気持ちとは別の、初めて知る恋のトキメキや切なさ。その思いの描き方だけでなく、巻き込まれる周囲がドン引きする様子、さらには自分から決着をつけず、あくまで相手に判断を預ける周防の男としてのずるさなどなど、どこまでもリアルな脚本・演出は、相変わらず見事だった。
だが、絶賛する女性たちが多い一方で、恋を描いた件には強い反発・不快感の声もネット上で少なからず湧き起っていたよう。
それは、単に「不倫」というものに対する道徳心だけではないように見受けられた。一つは、男勝りで気持ちの良いヒロインのメスの部分を見たくなかったということ。また、心理描写があまりにリアルであるだけに、生々しすぎて生理的な不快感が生まれてしまったということもあるのではないか。他人の色恋は実はそんなにステキに見えるものじゃなくて、それが本気であればあるほど、周囲から見ると生々しく不気味で不快感を覚えることが多いものだ。
「ドラマのよう」「マンガのよう」で終わっていれば、「初めて知る恋の味」に視聴者も単にうっとりできたのかもしれないが、脚本・演出の上手さが仇になってしまった部分はあるのではないだろうか。
さらに、朝8時という時間帯もあるだろう。深夜、少なくとも夜であれば、不快感を覚える人もそういなかったのではないか。
そんな恋愛の週を終え、肩を落としている女性層と、ホッとしている層。正反対の両者の反応を見るにつけ、改めて感じるのは、『カーネーション』というドラマの引き付ける力の強さと、「朝ドラ」に対する視聴者の特別な感情であった。
(田幸和歌子)
夜に再放送してもらえると、ヒジョーに助かります
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