サイゾーウーマンカルチャー女性誌レビューピン子色と聖女色が強まった「STORY」、その”変化”は何を試みる? カルチャー [女性誌速攻レビュー]「STORY」3月号 ピン子色と聖女色が強まった「STORY」、その”変化”は何を試みる? 2012/02/06 21:00 女性誌速攻レビューSTORY 「STORY」2012年3月号(光文社) 春、出会いと別れが交差する季節です。「STORY」3月号の大特集は「変わろう!富岡さんといっしょに」。富岡さんとは「STORY」の表紙モデルであり、同誌が絶大な信頼を寄せる40代女性のアイコン。長くバブル世代の残滓を引きずってきた「STORY」は、富岡佳子の表紙モデル起用辺りから、DKJ(団塊ジュニア)世代を意識した誌面づくりへと変わっていったように思います。何人のアッシー&メッシーを従えていたのか、ミツグくんに何を献上されたかで女の価値が決められる(と思っていた)バブル世代の分かりやすさから一転、女としてよりよく生きるにはどうすればいいのか、さらに言えば内在する”女”を克服するにはどうすればいいのかという、非常に難解な命題を突きつけられている40代女性及び「STORY」。これから何を「変えよう」と提案しているのでしょうか。まずは今月のラインナップを。 <トピックス> ◎大特集 変わろう!富岡さんといっしょに ◎[クチコミ]40にして旅立つ!「韓国・台湾・香港」弾丸ツアー ◎”アスリート夫人”に学ぶ「夫の逆境は夫婦のチャンスです」 ■40代女性に今なぜピン子? 富岡大特集の前に、「40代のツンデレ人生相談 悩んだらピン子に訊け!」を見てみましょう。2011年9月号からスタートした「40代のツンデレ人生相談 悩んだらピン子に訊け!」がなんと早くも書籍化が決定したそうです。それまで所帯染みた話をあえて避けてきたキライのある「STORY」が、”ババアの扉を開いた”ことでも衝撃的なこの企画。ピン子先生自身も「私の最後の本になるね」と気合い十分とのことです。 さて今回のテーマはズバリ「浮気のこと」。「ホステスからの電話で夫の浮気発覚」という昭和的なお悩みや、「年下の彼と浮気中。体の相性がベストで別れられない」という好色40代女の叫びに「夫が浮気したらわが身を振り返りな。浮気するなら人生捨てる覚悟をしな!」と名言をぶちかましておりました。「世の妻たち、こそっと『浮気してます』なんて、美しく言ってるけど、『私、クセなのね。ただの好きもんなのね』って、認めたほうがいいよ」と、40代女の性欲をズバリ言い当てるピン子先生。さらに「年下とは、愛だの恋だの、ない。最終的にはお金。ホテル代、プレゼント、小遣いやったりすることで、くっついてんだよ」と追い打ちをかけます。ヒィィ。しかし先生のアドバイスより衝撃だったのは「年下男と別れられない」という相談主のペンネーム。”44歳・専業主婦・仁くんファン”……! 寄せられるお悩みもその解決方法を探るというより「叱ってください」的なニュアンスのものが多く、ピン子先生の一言一言が40代女性にとっての猪木ビンタであることが読み取れます。誰かに強い口調でズバっと叱ってほしい。その方が楽ですもの。今この企画が40代女性に受け入れられているとするなら、「何があっても離婚はご法度」「男の浮気は甲斐性、女の浮気は不貞」「女は我慢してナンボ」という前時代的な考えが、一周回って”いいね!”なのかもしれません。 「大・大・大反響につき、書籍化決定!」というテキストの横で、何の脈絡もなく”E.YAZAWA”のビッグタオルを拡げてご満悦な表情のピン子先生。”ピン子先生は永ちゃん好き”といういらない情報をまたひとつ得てしまいましたね……。 ■いつかインタビューされるときのために、頑張ったんだね 今月の大特集は「変わろう!富岡さんといっしょに」。表紙モデル、富岡佳子を大フューチャーしながら、ファッション・ヘア・そして生き方に至るまで、40代女性へ”変化”を促す企画です。前表紙モデルの清原亜希が常に「番長清原の妻」という命題を背負わざるを得なかったのに対し、富岡佳子はその真逆のフツーっぽさがウリ。嫌みのない笑顔と、360度どこからも攻撃されないファッションセンス。ギラつかない「STORY」の申し子的存在と言えます。 まずは「STORY」お得意のバイオグラフィー構成で、富岡さんのモデル人生を振り返ります。簡単に説明しますと、短大時代に「CanCam」(小学館)などでモデル活動を開始、20代半ばを過ぎ仕事が減ったのをきっかけにモデルを一時休業し、半年間のパリ留学。その後30歳で結婚、出産。それからは「VERY」(光文社)を経て「STORY」へ活躍の場を移したとのこと。特に「VERY」に出始めたころは、幼子を抱えていたことに加え「姉妹誌出身でない彼女は転校生扱いされ、疎外感を感じる日々」だったそうです。モデル界の「転校生扱い」って一体どんな……靴に画鋲? 衣装にマチ針? それとも席にブーブークッション? 「富岡さん流『日々の生活の中で、美しく生まれ変わる習慣』15」では「出会った方には、必ずお礼状を」「すべての美の素は、キレイに掃除された環境」「決して言い訳はしない」など、透明感10代レベルの富岡よっちゃんを形作るさまざまなルールが網羅されています。高価なエステや過激な美容法に頼らない、地味で控え目な生活習慣の数々に若干目まい。 次ページの新米ママモデル春香との対談でも、四万十川のせせらぎのような凛とした受け答えをされています。「(子どもに)手のかかる間は、自分の時間はナシにしようと決めたの」「保育園の間は、お迎えの時間に間に合わない仕事は引き受けない。小学校低学年の間も、娘が家に帰ってくるときに『お帰り』って迎えてあげられる仕事だけって」「その代わり、一度受けた仕事に対しては全力で臨もうと。(中略)振り返ってみると、撮影時間が予定より遅くなっても、『早く帰らせてほしい』と言ったこともないし、ロケの朝に娘が高熱を出しても仕事をドタキャンしたことは一度もない」……もうそれくらいで勘弁してください! 読めば読むほど、己の矮小さのみが頭をかすめる、とんでもない企画! 自身の人生を重ねられる猛者だけが、深い悟りの境地に達することができる、難易度高めの大特集でした。 このほか「”アスリート夫人”に学ぶ『夫の逆境は夫婦のチャンスです』」ではスポーツ選手に尽くす糟糠の妻たちが大集合。全体的に”良き妻・良き母、なおかつキレイ”な女たち祭りだった今月号。「STORY」であれば、何か、こう、もうひとスパイス欲しいと感じてしまうのは、筆者のワガママでしょうか。春に向け、ぜひともはっちゃけた「STORY」が読みたいです。 (西澤千央) 「STORY」 「STORY」がいい子になる=日本がますます生きづらくなる、ってこと! 【この記事を読んだ人はこんな記事も読んでます】 ・林真理子の閉経宣言、泉ピン子の連載スタート! 「STORY」から何かが香る ・岡本夏生が、荒木師匠が語る! 去りゆくバブルに「STORY」が捧げる巡恋歌 ・「STORY」が新規顧客「DKJ」世代に擦り寄り、誌面に大きな変化が! 最終更新:2012/02/06 21:00 次の記事 サーフィン、居眠り運転、指切断……九死に一生を得たセレブたち >