「安いと変な人が入ってくるから心配」という親の安心料!?　入園金の意味とは

　ある日の夕方、「入園金と年会費についてお聞きしたいのですが」という電話がありました。

　私はてっきり入園金に含まれる内容（保険料、体操着、道具箱一式、出席カード、連絡帳）と年会費の意味（新しいオモチャの購入代金や教材、製作に使うものの費用）の質問だと思ったら、「サービスについてです」とのことです。ますます質問の意味が謎。見当違いのことを答えていると、「あの～、普通保育園って3カ月通ったら入園金無料とかあるじゃないですか！」などと言い出したのでした。それ、普通じゃないから（笑）。

　サービスじゃなくてキャンペーンという意味なら分かりますよ。例えば、「オープン前の内覧会で契約していただければ入園金半額」「お友だちの紹介であれば入園金半額」「12月末迄の契約なら年会費なし」など、うちの保育園ではやってはいませんが、他の認可外保育園のサイトを見ると、たまに書いてある所があります。キャンペーンも「普通」ではありませんけどね。で、「そういったサービスはない」と答えると、話している途中でガチャ切りされてしまいました。ちなみにうちの保育園でなぜキャンペーンをやっていないかというと、1.やる必要がない（経営的に困っていない）、2.入園金3万円＋年会費1万円はデポジット（保証金）という考え方をしています。

　うちの保育園では保育料の請求を、翌月の前半自宅へ請求書を送り、20日ごろまでに振込みをお願いしています。簡単に言っちゃうと、踏み倒された時の保証金なんです。4万円で泣きましょうということ。高級住宅街で営業していても、どんな親がいるか分かりません。また、入園金を取っていると、簡単には他の保育園に流れなくなりますね。よく、入園金を無料にして敷居を下げている保育園がありますが、簡単に入園してきますが、簡単に転園していきます。目先のことだけ考えてはいけないのです。

　以前、入園の契約をしているとき、「入園金や保育料が安いと変な方が入ってきたりするから心配です」と話されたお母様がいらっしゃいました。そのことを思い出させる出来事が起こったのです。

　この間、ひとりで京都に行くことになり新幹線に乗りました。娘がいなかったのでグリーンではなく普通の指定席を予約したのです。2列の席で窓側に座っていると、4歳くらいの子どもを連れたお母さんが隣にきたんです。私はてっきり自分が座席を間違えたと思ったら、そのお母さんは子どもを通路側に立たせ、自分だけ座りました。東京→新横浜なら理解もできますが、名古屋を過ぎても横に立たせたまま。その子は「疲れた」「まだ？」を繰り返します。疲れると地べたにペタンとしゃがみ、また立ちます。

　4歳の子の体力の限界を知っているので、何度も席を譲ろうか考えました。娘と同じ年齢の子どもが、揺れる車内で3時間も立っているのは不可能です。よく考えれば、指定席なので全く譲る必要なんてなく、親がケチって子どもの分の席を購入していないだけ。お母さんの膝に座れる赤ちゃんではなく、どう見たって年中か年長。ここで私が自由席に移り、譲る行為は、この母親に「ケチっていいことあった」と思わせるだけかもしれない。生活保護者にたくさん支給しては、就業意欲がなくなり日本国をダメにしてしまうというのが私の持論で、同じことが言えるのではないかと京都までの間、自問自答を繰り返しました。

　この新幹線でのできごとで、私は「入園金のサービス」で問い合わせをし、ガチャ切りした母親と、契約の時「安いと変な方が入ってきて困る」と言ったお母様が浮かびました。うちの保育園は、預けている親御さんのステイタスを満たさないといけないのです。料理研究家の藤野真紀子さん、K-1王者のニコラス・ペタスに講師を頼んでいるのはそのためです。小さいころから本物を知ってほしいと思う親御さんが多いことに目をつけたのは私。友だちの脳機能学者・苫米地英人さんが「セミナーの受講料を10万円以下にすると変なやつがいっぱい来たので、10万円以上にしている」と言っていました。うちも、入園金3万＋年会費1万は崩せないな！

角川慶子（かどかわ・けいこ）
1973年、東京都生まれ。「角川春樹事務所」会長・角川春樹氏の長女。自身も元アイドルという異色の肩書きに加えて、ビジュアル系バンド好きで、元バンギャルの”鬼畜ライター”としても活躍。9月1日に「駒沢の森こども園」をオープンさせる。家庭では3歳の愛娘の子育てに奮闘中。

『子どものストレス 母親のストレス』

ガチャ切りはいかんでしょ～

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