カルチャー
[女性誌速攻レビュー]「婦人公論」2月7日号

「婦人公論」暴排条例企画の後に、吉本社長インタビューのミラクル技

2012/01/29 17:00
「婦人公論」(中央公論新社)2月
7日号

 今号は江原啓之の大特集が組まれています。テレビ界では4年ほど前にBPO(放送倫理・番組向上機構)が「面白さを求めて『スピリチュアルカウンセリング』をPRするような構成・演出は避けるべき」とのお達しを出したため、とっくに手を引いたというのに、雑誌界ではいまだにしぶとく起用されています。その中でもこの「婦人公論」は、代表的なご活躍の場所といえます。ま、数ページのインタビューやコラム程度ならお遊び感覚であってもいいのかもしれません。しかし、巻頭で特集を組み、しかも表紙&グラビアに起用となると編集部の良識を疑わざるをえません。よくよくみたら婦人公論発行元の中央公論新社から江原の書き下ろしが今月発行になったので、そのPRでもあるようです。いろいろ事情があるのでしょうか。今号は別のページで氷川きよしが登場しているので、どうせならきよしクンを表紙にすればいいのに……残念。婦人公論編集部は江原様>きよしクンなんですね。いやそれとも、婦人公論読者はふだん「セックス、セックス」「イケメン、イケメン」と煩悩にとらわれ過ぎているので、たまには非イケメンのビジュアルに耐えて厄落とししやがれというメッセージなのでしょうか。そうか、これは修行なのか。想像以上に辛い修行です。

<トピック>
◎特集 江原啓之さんがみちびく 負の感情をプラスに変える秘訣
◎暴力団排除条例、あなたはどう考えますか?
◎氷川きよし「離れていても、心はいつもあなたと一緒です」

■これぞ、江原啓之の天職だ!

 しかし、見ればみるほどツヤツヤパンパンの顔なんですよ、江原。以前より肥えて若返っているように見えます。特集タイトルは「江原啓之さんがみちびく 負の感情をプラスに変える秘訣」なんですが、「江原啓之さんがみちびく アンチエイジングの秘訣」だったら少しは読む気が起きるかも。コラーゲンたっぷりのいいモンばっか食ってんだろうね!

 インタビューの内容は、何か差し障りでもあるのか、かつてのような「タモリの前世は河童」といった眉唾話は何も出てきません(注・タモリ河童説は江原ではありません)。「現実を受け止めて」とか「冷静になって」とか、極めてまっとうな、つまり誰でも言えるお説教に終始していました。前世や守護霊の話をされても困るんですが、しないならしないでそれもまた困ります。この人から霊能というタレントを取ったら、なんのために話を聞くのか意味が分からないからです。この人に「(放射能汚染の)公式に発表されていることに対して、もしあなたが疑問に感じるのなら、機器などを用いて計測する。そういうふうに、具体的に自分で考えて、行動を起こしていけばよいのです」なんて話を聞きたいですか? 学者でも宗教家でも人格者でも芸能人でもイケメンでもないのに。あんた誰?

 真矢みきとの対談も、「強いオーラを放っています」と、そこらのナンパ師でも言えるお愛想はありましたが、霊的な話はなし。そのかわり「真矢さんが宝塚音楽学校に入った当初の席次は、39人中37番だったとか(江原)」と、プロインタビュアー・吉田豪氏ばりのリサーチ力を披露し、真矢を「どうしてそんな哀しい情報を入手してらっしゃるんですか。(笑)」と驚かせていました。かつて、江原の番組ではスタッフがゲストの過去を念入りに調べて、その情報を元にしながらあたかも霊視で過去を言い当てるかのようなことをしていると報じられたことがありました。その報道が事実かは分かりません。しかし、案外プロインタビュアーというのはこの人の落としどころとしていいかもしれないなと思いました。本人すら忘れているような過去のレア情報を掘り出して相手を驚かせ、思い出話で気をよくさせてから人の道を説く、上から目線のインタビュアー。そういうキャラがあってもいいかも。

■極妻だってパートに応募することもある

 江原啓之特集よりスリリングで面白かったのは、「暴力団排除条例、あなたはどう考えますか?」という企画です。まずはじめは、極妻インタビュー。本サイトでもおなじみのライター神林広恵さんが、「条例施行で聞こえてきた”極妻”たちの悲鳴」と題し、3人の極妻の生活事情をレポートしています。「ヤクザの家族と知られたら、クリーニングも出せない」「親がヤクザだとバレて、子どもが私立幼稚園を辞めさせられたという知り合いの組員もいる」「パートに応募したが、素性がバレているためか採用を断られた」といった生活に密着したリアルな嘆きや、月収が200万円あっても上納金に50万円、子分の世話に50万円など支出も多く、家計は意外と厳しいことなどがわかりおもしろかったです。警察側でなく、やくざ側でもなく、妻の視点というところが新しいですね。

 で、その流れから、山口組三台目組長の娘、田岡由伎インタビュー「お国が差別して、どないすんねん?」を経て、吉本興業社長・大崎洋氏インタビュー「ひんしゅく買ってまで”紳助復帰”を公言した理由」へとつながっています。吉本興業社長インタビューは、「暴力団排除条例」とは別企画として区切っているようですが、ページは一続き。読みながらなぜかドキドキしてしまいました。「極妻→極娘ときて極タレ」です。ホップ、ステップ、ジャンプみたいな華麗な構成。内容も充実しています。

 紳助に「戻ってきてほしい」と公言した大崎社長は、「僕があそこで言いたかったのは、『10代で吉本の門叩いたら、死ぬまで吉本。この世界やめたって、吉本や。みんな家族やで』ということです」と語ります。熱いね、漢だね、仁義の世界だね! おそらく紳助の体内にもこの吉本イズムが脈々と流れているはずです。窮地で世話になった相手に「違法ですから縁切ります」なんて手のひらを返して生きていくことなんてできるわけがありません。「世話になったら死ぬまで家族や!」と、あちらさんにも言ってるんじゃないかなあ。なんてことを考えさせられる、意味深インタビューでした。

 今号はほかに、「ヒロシです」のヒロシのインタビュー「月収5万でもクサらない、”愚痴のプロ”の心持ち」、氷川きよしグラビア「離れていても、心はいつもあなたと一緒です」、安部譲二×山田詠美の人生相談劇場「どうしても子どもがほしい」、大塚ひかり×酒井順子「女の欲望は、千年前から変わらない」など読みどころがたくさんありました。学ぶところが多い「婦人公論」は大好きな雑誌なので、江原啓之の使い方に関してはもう少し慎重にご検討をいただきたいところです!
(亀井百合子)

「婦人公論」

江原さん、エイミーの結婚は長続きしそうですか?


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最終更新:2012/02/03 16:11
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