夫の性欲処理にお金を請求! 「たまひよ」の新造語「鬼妊婦(オニンプ)」
「妊婦ライフ、明るく楽しく、イケイケGOGO!」
ウインクしながらそう言ってくるので一緒になって踊り出すと、急にスリッパで後頭部を叩いて、「アンタそんなんで、お腹の赤ちゃん守れてると思ってるワケ!?」とマジな顔して説教を始める――。
そんな、支離滅裂で情緒にムラのある年上女みたいな妊婦雑誌、それが「たまごクラブ」です。
「たまごクラブ」は下ネタはお好きじゃないようですが、今月号は久々に「セックス」特集が! しかも表紙の「たまごクラブ」のロゴのちょうど「た」と「ま」のあいだに明朝体で「セックス」って文字を浮かび上がらせちゃってます。なぜよりによって意味深な場所に? 本人はクールにセックスを語ってるつもりが、ものすごいスケベな顔になっちゃってる人を見てるみたいでなんだか気恥ずかしいですよ!
<トピック>
◎妊娠中&産後初のセックス していいことvsいけないこと
◎鬼妊婦(オニンプ)列伝 鬼嫁&鬼娘ですが、何か?
◎全国たまごママ16人のわくわく妊娠日記
■セックスを促してるのか、阻止してるのか分からないセックス特集
「妊娠したら、アタシになんでも聞いて!」と、日本中の妊婦へ平等に呼びかけているようで、意外と対象者だけにしか優しくない「たまごクラブ」。対象者というのは、年齢も外見も健康状態も夫婦関係もすべて「標準」な妊婦のこと。
なので、「流産・早産にならないために」とか、「○○にならないために」という表現がとっても多い。標準ニンプちゃんにとっては有益な情報だけど、”そうなっちゃった人”に対してのアフターケア的な記事はない、そんなシビアな一面も持ち合わせています。
セックス特集も然り、「人生最大の危機!? セックスレス夫婦にならないために☆」というサブタイトルがついてます。まずは「妊娠中はセックスしなかった54%」「2~3回はした20%」と、女性誌セックス特集恒例”円グラフ”の登場です。確かに参考にはなるけど、パーセンテージ知っても……なんですよね~。
それに、「挿入したらおなかの赤ちゃんに当たりしませんか?」とか「セックスすることで早産を招くなどの危険はありませんか?」とか、不安が前提のQ&Aが書いてあるんで、いくら監修の宋美玄先生が「大丈夫、セックスしていいんですよ!」って言ってくれても、「やっぱいいや……」って気分になっちゃう。現在妊娠9カ月の私は、「みんなクンニもしてるの?」とか「体に負担がかからない楽しいセックスグッズ」とか、そういったことも知りたいんスよー!
けれど妊婦雑誌のセックス特集って「いかに挿入を受け入れる気持ちを持つか」とか「体よく断る方法」とかの話になりがち。しかも「セックスはしていいけど、妊娠中のオーガズムは危険なのでNG!」と書いてあるのが一般的です。腹ボテ状態でセックスした上にオーガズムは寸止めなんて、誰がそんな高度な技術を習得してるんスかって話ですよ。無理難題です。宋先生は「イッちゃってOK!」と言ってくれてホッとしましたが、やっぱり妊娠中のセックスって普段通りにはいかないもの。
だから自分が気持ちよくなるよりも、男性器に対して改めて興味を持てるか、にかかってるような気がするんですよ。挿入はなくたって「相手の射精」に楽しみを感じることができるほうが、妊娠中の夫婦生活はスムーズにいくような気がします。つまり「セックス特集」じゃなくて、「男根」特集を組んだほうが理にかなってると思うのは、私のアタマが妊娠中でお花畑になっているからでしょうか!? 妊娠中にしかできないセックスの楽しみ方を是非、「たまごクラブ」にはレクチャーしていただきたいものです!
■「席を譲らない人」を撮った写メをツイッターに投稿するくらいじゃないと……
お姫様気分でポジティブに10カ月間を過ごそう、という意味の「ニンプリンセス」。妊婦に対して協力的な夫という意味の「妊夫」。「たまごクラブ」はいくつものマタニティー造語を作り出していますが、今回は「鬼妊婦(オニンプ)」が登場。妊婦という状況に甘えて他人に対して鬼のような行動をとる時のことを言うんですって。
そういえば、「電車で私に席を譲らないサラリーマン」を写メで激写してツイッターに載せた妊婦がいて、2ちゃんねるで話題になっていましたね……。あれこそオニンプって感じですが、「たまごクラブ」に載っているのは、「おなかが重くて寝れない夜。パパのいびきがうるさくて、鼻と口をおさえてやった」とか「つわりで気分が優れないときは、義母からの電話は居留守(笑)」とか、カワイイもんばかり。
ただ、「パパの性的処理をするときはお金を請求」という、手と口ですると夫が1回につき1万円を払うというエピソードは、鬼なのかなんなのか分からないです。他に多いのは、「子供が生まれるから」と親や義親に金をせびったり、新車の頭金を出してもらったりしてラッキー♪ 私って、オニンプ!? というエピソード。個人的に親からまったく金が引き出せない立場の私からすると羨ましくてムカムカしてきて、こっちがオニンプになりかけましたよ!
■まず、ひじきハンバーグが作れる男と結婚しないと…!
ファッションスナップ特集「ニンプSnap東西対決!」は、東京と大阪の一般妊婦たちが登場。とにかく「標準」が大好きな「たまごクラブ」なので、大阪の妊婦には片足を上げさせ「パーでんねん」みたいなポーズをさせています。”大阪と言えばコレでしょ!”みたいな? 一方、東京の妊婦はAKB48の「会いたかった~YES!」みたいなポーズです。ひねりなし!
載っている妊婦たちのファッションも見事にコンサバ、無印系ばかり。ギャルママや「旦那は黒人さんかな?」というようなブラックファッションの妊婦とか、やりすぎ美魔女とか、「標準」じゃない人は皆無なんですね。
「わくわく妊娠日記」というコーナーでは、全国の読者妊婦16人が登場し、毎月の腹の大きさの変化や持ち物など、プライベートを大公開。
妊娠5カ月の柴咲コウ似の星野さんは、「今日のメニューは、ひじき入りハンバーグ。パパのお手製です!」とかわいいお皿に乗ったヘルシー料理を紹介。「パパ」って自分のお父さん(富三・62歳)とかじゃないですよ、夫です。写真が載ってますけど、袴田吉彦に似てるイケメン夫です。「標準」が高すぎですよ! まずこっちは柴咲コウに似てないし、かろうじて存在する夫もひじきハンバーグなんて作れないんですけど。劣等感!
他のニンプちゃんたちも、フルーツケーキ作るわベーグル焼いちゃうわで、次元が高いッス。「ヤベー、マクドナルド3日連続食っちったよ……」と頭かかえてる妊婦とか、「コンビニで鬼買い! たまにはいいよね♪」とファミチキむさぼり食ってる妊婦の写真とかあれば、もっとがんばれそうな気がするんですけど~!
「無痛分娩」特集でも、日本ではまだ特殊な産み方とされてるので「無痛分娩も『普通』なの!」というアピールが必死。「痛みを感じないと赤ちゃんに愛情がわかないのでは?」「そんなことはありません」というQ&Aが何度も出てきて、最後は柴田倫世インタビューでダメ押し。かつて松坂大輔投手をそそのかしたと叩かれまくっていた倫世さんですが、第2子、第3子を無痛分娩で産んだそうです。そもそもアメリカでは無痛分娩がスタンダードらしく、アメリカ暮らしの倫世さんなのでチョイスしたって話でした。その状況なら私でもチョイスるわ! ここでも「痛みを感じることと母性は関係ない」と何度も言っててしつっこいです。分かったっつーの。
それよりも「産院の医師がレッドソックスの大ファンで、立会い出産に訪れた松坂投手に大興奮してなかなか麻酔を打ってくれなかった」というBIGな大リーグエピソードのほうが面白かったです。大ファンの野球選手の奥さんのアソコを診る……、お医者さんって、本当にスゴイお仕事ですね!
今月号も「おりものを注意深くチェックしてないと、赤ちゃんが大変なことになるよ!」と恐怖をあおってきては、顔面蒼白で次のページをめくると「そんなネガティブな顔してちゃ、お産は乗り越えらンないよ~☆」とウインクしてきやがって、はたまた「ひじきハンバーグ」を作れる夫を紹介してきたり、脅したり励ましたり蔑んだりで忙しそうな「たまごクラブ」でした!
(田房永子)
「標準」でいることって、楽であり苦しいことでもあるよね……
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