カルチャー
[女性誌速攻レビュー]「婦人公論」別冊「快楽白書 2012」

局部イラストでマスターベーションを解説、40代以上向け「快楽白書」がすごい

2011/12/20 19:30
「快楽白書 2012」(中央公論新社)

 さあさ、やってきました、2012年オナニー元年の到来です! 今、中年女子のセックストレンドはオナニーです。間違いありません。40代からの性を考えるムック「快楽白書 2012」(中央公論新社)を読めば分かります。年に1回「婦人公論」の別冊として発売される本書は、中高年のリアル&理想のセックスライフに迫るオリジナルコンテンツのほか、この1年間「婦人公論」に掲載されたセックス企画から一部を再収録しています。今年は、なんとDVDの付録もあり! 内容は、サイゾーウーマンでもおなじみの女性向けAVメーカー「SILK LABO」のサンプル集です。ハートがチュクチュクしちゃうようなシーンが惜しげもなく収録されています。ここからして「快楽白書」のオナニーにかける情熱がうかがえます。老舗女性誌別冊の付録にAVのDVDですよ。時代は確実にオナニーです!!

<トピック>
◎読者アンケート結果発表 みんなでセックスのこと、話してみよう
◎女性のためのマスターベーション講座
◎[広告付録]女性が愉しむためのアダルト・ムービーDVD

■いつまでもオンナ、いつまでもセックス!

 まずは、巻頭の読者アンケートの結果発表「本音炸裂! 止まらない赤面告白 みんなでセックスのこと、話してみよう」を見てみましょう。回答者は、38~83歳、平均52.5歳の女性258人。序盤は「人生に『セックス』または『性的な快感』は必要ですか」「夫・パートナーとのセックスでの不満は?」といったスタンダードな質問から始まります。が、それは4つほどで終わり、早々に「婚外恋愛や婚外セックスの経験はありますか?」といった核心へ挿入! この質問に「ある」と答えた人がダントツの98人(「ない」は55人)もいるという事実もさることながら、世間では「不倫」とひとまとめにする概念を、「婚外恋愛」「婚外セックス」とわざわざ区別しているところにもビックリしました。つまり、婚外恋愛はしたことないけど、婚外セックスなら経験があるって人もいるわけですね。時代は変わったもんだ……なんておぼこ発言をしたら、「婦人公論」読者から「考えが古い!」「女性だって楽しむ権利がある!」「解放、解放!」と石を投げられますから気をつけて。

 「普段、性的な興味や興奮が満たされるアイテムは?(複数回答)」「女性のための性風俗を利用したことはある?」といった質問もちゃんと用意されています。前者は「小説・官能小説などの本」が100人とずば抜けて高く、ほかのレディコミやAV、ネットなどは20人前後しかいませんでした。そのあたりは古風で知的なマダムです。よく殿方は”昼間は淑女、夜は娼婦”が理想などと言いますが、まさにその像に当てはまるのが「婦人公論」読者なわけです。後者の性風俗については、「ない」が64.1%を占めましたが、「ないが興味はある」が26.7%、「ある」は2.6%でした。本書にも性風俗の突撃ルポ「絶頂感をお金で買ってみた」が掲載されていますから(「婦人公論」の記事の再録)、みなさん興味があるトピックなのでしょう。

 最後の「私たちからの本気メッセージ」コーナーでは、「3カ月前から、72歳の男性と週2~3回セックスして絶頂感を味わっています(54歳パート・夫61歳)」、「年齢は無関係。毎回満足。相手、本番可能(83歳無職・夫83歳・結婚1年)」といった赤裸々なメッセージが掲載されています。「月に2~3回、1人で大声を出し、おもちゃなどを使って思い切りオナニーを楽しむ(60歳パート)」というコメントもありました。もっとも本文では、中高年に多いセックスレスの悩みをフォローしていて、性的に満足している人ばかりではないことは分かるのですが、結果を見ているとなぜか焦りを感じます。この感覚、どこかで味わったことがあるな……と思ったら、生娘時代に「いつ初体験を済ませるか」で焦っていたころを思い出しました。あのときは、セックス経験のある同級生がオトナに見えてまぶしかったものです。中年の今となっては、セックス習慣のある同世代がオンナに見えてまぶしいです。

■顔を洗うように潮を吹いてみよう

 そうやって人と比べて焦ってばかりの女性へ、ひとつの解決策となる記事が掲載されています。「女性のためのマスターベーション講座」です。なんと、オナニーの仕方が局部のイラスト付きで詳細に解説されているのです。いわく、「マスターベーションは女のセックスライフを豊かにしてくれる、いわば”セルフケアのひとつ”」「顔を洗う、歯を磨くことと同じです」「あなたがあなたらしく、心地よく生きていくために必要な日常の営みなのです」とのこと。

 じゃ、どうすればいいのかというと、まずは、性器を指で刺激します。ローションを塗ってから「人さし指と中指でクリトリスの包皮をつまみ、亀頭を露出させて、つまんだまま上下にしごくように刺激を」。次に、膣の中でイク感覚をつかむため、Gスポットを探します。指を挿入し、「膣の上壁(おなか側)で、第2関節を曲げて指が触れるあたりがGスポット。指先で軽くこすりあげて、自分が気持ちイイと感じるポイントを探してみる」そうです。最後はグッズの紹介で、「ひとり潮吹き」が体験できるかも……なんてことまで書いてあります。このあとの企画は、内田春菊の描き下ろしマンガ。セックスレスの45歳人妻がアルバイト先で若い男にせまられる……という内容で、もうこれはオナニーするしかないっしょ、という巧みな流れ。

 なにせオナニーは洗顔のようなものだそうですから、そのうち「帰ってウンコして寝るべ」くらいのカジュアルさで、アラフォーが「帰ってオナニーして寝るべ」と言い出してもおかしくありません。男が「なんて下品な女なんだ!」と眉をひそめるものなら、「女だって人間だ。自然な行為を下品とは何事だ!」と反論される世の中になるはずです。婚外恋愛から婚外セックス、そしてオナニーへ。女性の性の解放の象徴は変化したのです。

 今、女性は生きやすい時代なのでしょうか。結婚しなくていい、子どもを産んでも仕事をしていい、夫とセックスレスなら婚外セックスすればいい、自分でおもちゃを使ってしたければすればいい。「快楽白書」を読む限り、もう女性にタブーは何もないように思われます。いや、「快楽白書」だけではありません。たくさんの女性誌で「自分を大切にする」「自分のために」「自分らしく」といった、オナニー(的生き方)礼賛の言葉を見ることができます。自分を愛して、快楽を感じて、自分らしさを守って生きる。満たされる条件は整っているはずです。でも……。満たされてますか。本当にそれでいいのかな。みなさんも「快楽白書」を読んで、身悶えながら考えていただければ幸いです。
(亀井百合子)

「婦人公論別冊 快楽白書2012」

この登場人物は、自己肯定のためじゃなく、本当に快楽としてセックスしてる?


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最終更新:2013/03/25 20:19
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