探偵が作った離婚情報誌「笑える離婚II」、その意図を直撃!
例えば、配偶者にほかの異性の影がちらついたら? ギャンブルが原因の莫大な借金が発覚したら? 人生プランが平行線なままの夫婦生活が長年続いたら? 幸せなはずの結婚生活が破たんする原因は、実は身近なところにある。しかし、離婚に対する正確な知識を持っているかと聞かれたときに、「YES」と言い切れる人は多くはない。人生の大きな岐路だというのに、「離婚」に関する情報は身近にはないのが実情だ。
「笑える離婚II」は、調査会社「GK探偵事務所横浜」の現役調査員・高橋はるかさんが手掛けた離婚情報誌。年間500件以上の浮気や離婚相談に応じている、離婚情報コーディネーターとしても活躍する高橋氏に、「笑える離婚II」の制作の意図や現代の離婚の特徴などをうかがった。
――「笑える離婚II」を作ろうと思ったきっかけを教えてください。
高橋はるか氏(以下、高橋) 離婚の悩みは自分の身に問題が起きてから初めて本気で考える問題です。離婚を視野に入れて結婚をする人は少ないですから。結婚のように多くの人が経験するものではないので情報も目につきにくいですし、アンテナも張っていないので、離婚の情報は入りにくいです。ただ、いざ離婚を考えたときは、結婚時以上に情報が欲しいものですし、精神的にもいろいろなケースを知りたい状況になるはず。夫婦問題や離婚問題はそれぞれですが、さまざまなケースを知って、自身の問題解決の手助けになればと思ったのがきっかけです。
――今回発売となった「笑える離婚II」の前にも、もう1冊発売されていますね?
高橋 2008年に「笑える離婚」を作ったのですが、そちらは調停や裁判の話がメインで、マニュアルのような内容だったんです。なので、今回はケーススタディに分量を割き、私のお客様だけではなく、いろんな方に実体験を語ってもらっています。
――経験談のほうが悩んでいる人に響くと?
高橋 離婚に悩む人の多くは、「他の人はどうだったんだろう?」と知りたいはずなんですが、例えば周囲に離婚経験者がいたとしても、なかなか根掘り葉掘り聞けないですよね。また、女性の場合は肉親や友人などに自分の悩みを話しやすいようですが、男性の場合は語りたがらないし、見栄があるからか、周囲に相談できる人も少ない。なので、体験談を読んで解決の糸口になればと思っています。
――調査員として浮気・不倫調査を日々行っている中で、現代の離婚問題にどんな特徴が見えましたか?
高橋 女性の社会進出が離婚に影響しているというのはあると思います。不倫の8割が男女ともに仕事関係者が相手です。特に女性の不倫の場合は、子育てや家事、仕事の両立で子どもが小さいうちに我慢していた溜まった不満や悩みを相談しているうちに……というケースもよくあります。実際に不倫するのも、子どもが少し手が離れたくらいが多いです。また、男性もそんな妻のヒステリーに疲れて外の女性に安らぎを求める場合が多い。どちらにしても、昔ほど「家庭を守る」という認識が低くなっているように感じます。無理をして守るのもよくないと思いますが……。
――女性の社会進出によって、経済的にも自立し、離婚がしやすいということでしょうか?
高橋 もちろん、その側面はあります。ただ、実際は世間が思っているほど、女性の経済的自立はできていないというのが実情です。出産を機に退職したり、パートタイム従業者になるケースも多い。また、仕事を続けていた正社員でも男性よりも給料が少ない。お子さんがいる場合は、そのお給料で自分と子どもを養うわけですから、将来の不安を感じている方が多いです。その辺が「女性の社会進出」といっても離婚が増えない要因だという気もします。
――反面、男性から妻の不貞を疑う相談が増えていると聞きます。
高橋 うちの事務所でも、昔は圧倒的に女性からの相談が多かったのですが、今は半々といったところです。でも浮気された多くの男性は、実際は離婚を望まないケースが多いんですよ。
――それは意外です。なぜですか?
高橋 男性が奥さんに不倫された場合、怒りの矛先が不倫相手の男性に向かうんです。でも妻のほうが夫に嫌気がさして出て行く。だいたいの場合は調停や裁判に発展するケースが考えられるんですが、子どもがいる場合、夫は親権を妻に取られるんじゃないかと不安になるようです。また、妻が経済力に乏しい場合が多く、慰謝料も望めない。そうすると、夫側としては妥協するポイントが見えにくいんだと思います。この手のケースは、決着までに時間もかかるし、精神的な負担も多いです。
――では離婚する夫婦と、不貞を乗り越えて結婚生活を続ける夫婦の違いはどこにあると感じますか?
高橋 離婚しないケースは、不倫以外に夫婦関係に問題がないことが多いです。ただ、浮気されたほうは簡単には裏切られたことを忘れられない、正直やり直すにしても時間がかかると思います。完全に「元通り」になるということはないですね。時間をかけて、より絆が深まることはあるかもしれません。離婚に発展する場合は、不倫前から夫婦関係がしっくりいかずに、溝ができているように感じます。溝ができているうえでの不倫の場合、それが離婚の後押しになるケースが多いです。また、溝がなかったとしても不倫相手にのめり込んでしまっている場合、気持ちの問題でどうにもならないケースだと、別居になるケースが多いです。
――本書では弁護士、行政書士、探偵と異なる立場からの「離婚」鼎談も収録されています。その中で、「弁護士、行政書士、探偵はそれぞれの役割が違うのに相談者は混同している」という記述がありますね。
高橋 弁護士をカウンセラーのように何でも相談に乗ってくれると思っている人もいるんですが、弁護士は法の専門家です。ですから、具体的な問題解決をする際に依頼するんです。不倫相手に慰謝料を請求をする、または請求したが相手が応じずにもめているなど。後は、配偶者との離婚訴訟ですね。
探偵会社は、仮に裁判になった場合に不貞行為を立証できるだけの証拠を集めるのが目的です。ただ、事実確認をするためにも有効に使えます。離婚を決意するにも相手が嘘を言っている場合、事実を知っていないと正確な判断ができません。
――では実際に離婚を考えた場合、どのようなステップで、どのように物事を考えていくべきでしょうか?
高橋 子どもがいる場合は、できるだけ子どもに負担がかからないようにすることだと思います。離婚を考えている際は、「子どものため」と言いながら実際は子どもに向き合えていないことが多く、親権争いも当人同士の意地の張り合いになっているケースも。後は、夫婦共有の財産を把握しておくことが重要です。専業主婦であれば、仕事先、子どもの預け先。父親が親権を取るのであれば、子どもの預け先、両親らの手助けなどを事前に打ち合わせしておいたほうがいいです。養育費を決めた際には、公正証書にしておくほうが後々支払われなくなった際に裁判を経なくても強制執行がかけられます。
――離婚は多くの場合、決意してから成立するまでに莫大な時間とエネルギーを消費すると言われています。その過程で、一番重要視しなければいけないことは何でしょうか?
高橋 さまざまな情報を集めても、最終的には自分自身で納得して判断することが一番大切だと思います。自分自身が納得して決断するまでには、やはり時間がかかりますし、精神的にも多大なストレスを抱えます。ただ、この過程を経て答えを出したときには、驚くほどスッキリすると聞きます。将来への不安や、相手への愛情、憎しみ、嫉妬から解放されて前を向くには、やはりこの過程を自分自身で乗り越えるほかない。その中で、慰謝料や養育費、財産分与等の現実的に交渉しなければならない面はきちんと押さえておく必要はありますが。
また、他人に悩みを相談したとき、相手に悪気はないのですが、人ごとなので「早く離婚したほうがいい」「子どものためにも離婚しないほうがいい」と言うことがありますが、やはり最終的には自分で決断すべきです。
(構成/小島かほり)
9人の壮絶な離婚体験が生々しくも勉強になりました
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