一人飯をズボラで豪華に! あのマンガの料理を再現できるレシピ集
『魔女の宅急便』のニシンとカボチャのパイ包み焼き、『パーマン』の小池さんの伸びたラーメン、『ぐりとぐら』のカステラ――。アニメやマンガ、絵本で描かれている料理は、ニオイや音といったリアルな”情報”がない分、脳が勝手にイメージを作り出し、「どうしても食べてみたい」という欲望を駆り立てる。
『このマンガがすごい!2012』のオンナ編1位、『マンガ大賞2011』4位の『花のズボラ飯』(久住昌之原作、水沢悦子・漫画)にも、どうしても食べたくなるB級グルメがあふれている。”ズボラ”な料理はさることながら、主人公・花の「おいしいもの」に対する執念と、一口食べた瞬間の相好を崩した表情、料理の湯気やとろみを表すやわらかな線、白米に卵をかけたときの「とぅるるぁあ~」といった擬音語など、マンガという表現方法の中に詰め込まれたヒントが視覚、嗅覚、聴覚すべてを研ぎ澄まし、読み手の食欲を刺激する。ブラウザの検索ウィンドウに「花のズボラ飯」と入力してみると、「レシピ」「再現」などの候補が並び、あの味を食してみたいという人の多さが分かる。
作中に描かれている花の料理は本当にズボラ。夫が単身赴任中なので、食事は基本一人。そのため、マヨネーズ入りの鮭フレークをトーストに塗って焼いただけの「シャケトー」や、残り物のみそ汁にきりたんぽとかんずりを足しただけの「みそ汁きりたんぽ」など、誰でも簡単にできそうなものが紹介されているのだ。
その人気に後押しされたのか、久住監修の『花のズボラ飯 うんま~いレシピ』(主婦の友社)という本まで発売されている。「ズボラ飯なのにレシピ本がいるのか?」と思ったのだが、「シャケトー」をアレンジした「のりキャベトー」(ノリの佃煮+キャベツ+チーズ)といった作品から派生したレシピや、市販のミートソースとうどんを一緒にレンジでチンするだけの「ミートソースうどん」など、ズボラ精神を引き継いだ料理が紹介されている。
そして、コミックでは材料が足りなくてポトフを作れない花が、思うがまま調味料を入れて完成された偶然の産物「ポトケチャミルクミソ鍋」のレシピが紹介されている。マンガを読んでこの鍋にチャレンジしたいと思った人は多いだろうが、いかんせん肝心な味付けが大雑把にしか描かれていない。しかし、久住自ら調味料の配分を教えてくれたとあっては、あの鍋を食べられるチャンスを手に入れたも同然。まさにマンガファンにはうれしい1冊だ。
それでも、筆者はマンガを未読な方にこそ、このレシピ集を読んでもらいたい。先述のように、主人公の花は夫が単身赴任なため、一人で食事をとっている。料理というのはまず自分一人のためにはモチベーションがあがらない。その割に、主婦ならば夫や子ども不在の「昼食」、一人暮らしならば疲れて帰って来た「夕食」など、一人飯をする機会が多い。大抵の場合、一人飯=貧食になりがち。そんな時こそ、ズボラ料理でちょっと贅沢な食事を楽しんでもらいたい。速水もこみちが「MOCO’S キッチン」で朝っぱらから、バルサミコ酢やオリーブオイルやパルミジャーノを多用した料理を作っていることに苦笑いの女性陣、ズボラだって手抜きだっておいしくて、食べていて楽しいのが料理だという原点に立ち戻るのだ!
(西園寺のり子)
ブス飯もいっぱい載っているので重宝!
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