カルチャー
[女性誌速攻レビュー]「Domani」1月号

夢を見させるという役を果たした、「Domani」の着回しコーデ企画

2011/12/05 21:00
「Domani」1月号(小学館)

 今月号の「Domani」を触った瞬間、「薄っ!!」と衝撃を受けてしまいました。12月号と比べたら、何と約90ページ減。これまで寅さん特集、華麗なる貧乏特集と耳目を集める特集を続けていたのですが、今月号は「2012年これが30代(オトナ)の”リアル”です!」と平凡な企画で広告が集まらなかったのでしょうか?

 ちなみに「30代のリアル」特集は箸にも棒にもかからない特集。ハイライトはお馴染みの「Domani」うっとりポエムです。30代のオトナを演出するアイテムを一つひとつ紹介していますが、「テーラードジャケット」の文章にしびれました。

「細身のジャケットを着たら大人になれる気がしていたあのころ、思い描いていた”オトナ(30代)”にいつの間にやらなっていた。背伸びのためから、等身大のアイテムへ。Not真面目に、But気楽に。着こなす気分に進化を感じる」

 まさかの「Not~、But~」文法ですよ!! 「Domani」読者である30代の多くは、代ゼミのテキストで繰り返し勉強しましたよね。目頭が熱くなります。涙によって、意味不明なポエムもよくよく読まなくていいという効果まで! 30代になるとこういったイヤミがうまくなると筆者が実証したところで、早速中身へ。

<トピック>
◎2012年これが30代(オトナ)の”リアル”です!
◎女として、妻として、母として…3人の35歳、「これが働くいい女の”リアル”です!」
◎30代の2文字白書

■「これがリアルです!」と言いきっちゃう強さ

 今月号は、着回し企画に並々ならぬ情熱を注いでいる「Domani」。「女として、妻として、母として…3人の35歳、『これが働くいい女の”リアル”です!』」では、なんと「Domani」のモデルが実在する企業で働く女を演じています。着回しシーンやタイムスケジュール、ドレスコードなども取材に基づいているんだとか。着回しコーデに取材……斬新です。独身・ナナは「モエ・エ・シャンドン」でおなじみのMHD モエ ヘネシー ディアジオに、妻・佳子はJ-WAVEに、母・悠美は日本マイクロソフトにお勤めです。

 ナナは、まるで石田純一がゲストに来そうなシャンパンイベントにエルメスのスカーフでさっそうと登場、お昼は外国人スタッフと社内の試飲会でイチャコラし、デートには「何人目の石原軍団ですか?」と聞きたくなるようなゴッツいサングラスをかけています。

 佳子は番組スタッフとの打ち合わせに、JIN AKANISHIのようなオシャレなハットを被り、資料探しの際もメガネ、でかイヤリング、パールと小物でバッチリきめています。

 悠美に至っては、週2日の在宅勤務でさえもパールネックレスと高級時計を身につけ、ママ友とのランチにはとってもゴージャスなファーポンチョをお召しになられているとか。ランチを食べるというより、ママ友を食べてしまいそうな装いに、筆者ならチビってしまいそうです。

 こういった経済的余裕と美貌とやりがいのある仕事をお持ちの女性はきっといるんでしょう。ただ、9割の「Domani」読者は該当しないはず。それでも筆者がこの企画になんとなく好意を抱いてしまったのは、他の女性誌が放棄した「読者に夢を見させる誌面」を展開してくれたからです。最近の女性誌はファッションにおいても「狙い過ぎない」「プチプラでかわいく」「悪目立ちしない」といった手堅い感じですし、セックスレスか嵐かK-POPを載せときゃいいんでしょとばかりに、どの誌面を見ても似たようなメンツがそろって、雑誌の個性がなくなり貧困化しているように思うんです。たまにはド派手な世界を見たいし、妄想したい。それは女性誌の大きな役割でもあったはず。女性誌の大義を思い出させてくれた企画でした。

■それとも人生が浅いのか?

 さて、こちらもある意味では現実逃避といえる企画。「30代の2文字白書」では、結婚・出産・転職・不倫・育児・離婚など、30代に襲いかかってくる漢字2文字の問題を告白するそうですが、インタビュー形式でもなく、ただのアンケート結果を羅列したような一言コメントがメイン。

結婚→猫以外と一緒に住める気がしない
出産→女なら一度は経験してみたい
不倫→結婚しても女でいたい。人妻の不倫は罪ですか?
家族→地震以降、家族で過ごすことのありがたさを痛感した

 浅い、浅すぎる! こんな感じなのですが、これを読んで何を思えばいいのでしょうか? 企画のまとめとして岡本夏生に「潜伏」「復活」というテーマで話を聞いているのですが、ハイレグで10億円以上稼いで、自分でマンション買って、節約生活でローンを完済したという岡本の人生は、「Domani」読者の人生と一ミリもかぶらず、果たして役に立つのかが不明。

 20代よりも出産までのタイムリミットをシビアに感じ、仕事では中間管理職になる人も多く、恋愛には夢が見られなくなっている30代。その層をターゲットにしている雑誌であれば、この手の企画をいくらでも掘り下げることができるはずなのに、あえてのスルー。やっぱり、夢見させる雑誌にドロドロとした読み物は不要との判断なのでしょうか。

 毎号思うことですが、「Domani」は企画の幅が大きすぎて、イチ読者としても媒体の特性がつかみづらいのです。「寅さん」があったと思えば、「35歳・モテ期説」を始めたり。同じ号でもフリ幅が多くて、イマイチ「Domani」に熱狂的なファンが付きにくいのはそのあたりなのでは? と勝手に分析してみました。2012年、レビューを通してもっとその魅力が伝わるようにワタクシも精進いたします。
(小島かほり)

「Domani」

労力のかけどころが間違っている


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最終更新:2011/12/05 21:52
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