「……娘です、血の繋がった娘です」夫の浮気調査で真実を知った妻
嫉妬、恨み、欲望、恐怖。探偵事務所を訪れる人間の多くがその感情に突き動かされているという。多くの女性の依頼を受けてきたべテラン探偵の鈴野氏が、現代の「女の暗部」を語る。
若いころ真面目だった女ほど、30代から驚くほど派手に浮気に走る人が多い。調査依頼をしてくる夫は、妻にまだ愛情を持っている人がほとんどだ。浮気を辞めさせたいというよりも、浮気している妻をどうにかしたいという気持ちが強い。浮気の調査結果を見せると、妻側の依頼者は無言で報告書を見つめるだけだったり、急に笑い出したりする。逆に夫側の依頼者は、浮気の報告書を見ると「みっともない」とか「節操がない」と世間体を気にするのが特徴だ。
最近は、浮気調査の95%が夫からの依頼。つまり、妻の浮気が多過ぎるほどに多い。もはや、妻の浮気は珍しいことではないのだ。そんなある日、久しぶりに妻側から夫の浮気調査の依頼が入った。
妻・A子の疑いでは、夫は土日に浮気しているという。早速、日曜に夫・B男を自宅から尾行する。東急田園都市線から渋谷に出て、渋谷の駅ビル前で待ち合わせをしているようだ。B男は、背も高く俳優かと思うようなナイスガイ。相手は20代前半とおぼしき若い女である。109やパルコなどを周りあちこちで買い物をして、レストランでランチ。最後に円山町のホテルに入った。まだ午後2時。かなり日は高い。11月なのにジリジリと照りつける日差しを浴びながらホテルの前で待機していると、明らかに援助交際だと分かるカップルがホテルに入っていく。B男と女は、それとは違い恋愛中の男女の雰囲気が見受けられた。結局、サービスタイムを目いっぱい使って、ふたりはホテルから出てきた。
ちなみに浮気調査の場合、調査対象者が自宅に入るまで尾行する。その日、ふたりの帰り道を尾行すると、ふたりとも同じ電車で帰るではないか。不思議に思いそのまま尾行を続けていると、なんと降りる駅も一緒。調査で組んでいる相棒もいぶかしがる。
「どういうことなんですかね?」
「きっと、ご近所さんとかで仲良くなっちゃったんじゃないの?」
ふたりで仲良く夜道を歩いている姿を見ながら、探偵は浮気のきっかけをあれこれ想像していた。途中、女がコンビ二に入っていき、男はそのまま妻のいる自宅に帰った。家に入ったのを確認したら調査は終了だ。ところが機材を片付けていると、さっきの浮気相手の女がこちらに近づいてくる。慌てて身を隠すと、女はA子とB男が住む家に入っていくではないか。
「きっと住み込みしていて、手を出したんじゃないの?」
「下宿人とかそういうやつですかね」
調査を終え事務所に戻った。2日後、報告書を妻・A子に差し出した。表紙を開き、調査結果を読み始めたA子の様子が明らかにおかしい。絶句し手が震え、顔面は蒼白。あまりに尋常じゃない様子に声をかける。
「どうしたんですか?」
「……娘です、血の繋がった娘です」
あろうことか夫の浮気相手は、実の娘だった。顔も似ていないので調査中にまったく気づかなかったのだ。こういう思いもしない結果が潜んでいる場合もあるのだから、浮気調査といえども真実を知るのは、覚悟がいる。
後日談だが、このB男は、「どっちとも別れるつもりはない。俺にとっては両方大切にしたい存在だから」と言って、謝るどころか居直ったそうだ。A子の気持ちは察するに余りあるが、しかし、ここから先は入り込むべきではない。探偵は、ただ依頼された調査を完了させるだけなのだ。
(カシハラ@姐御)
取材協力:総合探偵社オフィスコロッサス
※この話は事実に基づいて構成されていますが、プライバシーを考慮し細かい事実関係などはフィクションとさせていただいております。
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