“かわいけりゃモテる”という「steady.」の考えが、逃げ腰男子を遠ざける
先月の「HERS」(光文社)で湯山玲子さんが指摘していたように、現代の日本では「生身の女性から逃げ出しがちの若い男性」が多くなりつつあり、20代の若い女性の間では「いい男の青田買い」が熾烈に繰り広げられているそうです。
それを知ってか、ぼんやりしている未婚のアラサー、アラフォー世代をよそに、20代の女性たちはいかにして男性と結婚するかに躍起になっているよう。また、若い女性の専業主婦志向が高まっているとよく聞きますが、実際に筆者が20代の女子に「もっと結婚する前にやりたいこととかないの?」と聞いたところ、「自分たち不況しか知らないんスよ」と達観した顔で諭されてしまいました。
その20代の専業主婦志向、保守化を今もっとも感じさせてくれる雑誌が、この「steady.」だと思うのですが、果たしてこの雑誌の方法論で昨今の「逃げ出しがちの若い男性」を捕まえることができるのか……余計なお世話と知りながら、ちょっと心配になってきます。
<トピック>
◎ナツキノヒキダシ
◎3分で名作本をマスター!!
◎マツコヨットスクール
■チャラ男の影響じゃなくて?
そんな疑問を感じさせるのが、今月で最終回の「ナツキノヒキダシ」という連載。毎月、モデルの加藤夏希が自分の趣味に関連する話題をつづっています。加藤といえば、けっこうなオタク気質で有名。毎回コスプレやゲームといった話が出てくるのかと思いきや、今月の話題は「カラオケ」。加藤と「カラオケ」の組み合わせなら、『新世紀エヴァンゲリオン』の主題歌「残酷な天使のテーゼ」でも出てくるもの……と思いきや、「初めて一緒に行く人ならPUFFYでスタート」「モー娘。や松浦亜弥さんを振り付きで歌ったり湘南乃風ヲモノマネします」とすっかりオタクを封印。
念のため過去のテーマを見たところ、「山ガール」や「オードリー・ヘップバーン」や「着物」など、オタク臭を意地でも香らせないつもりのようです。ただ、現代はオタク人口も増え、いわゆる普通の人々でも、ひとつやふたつオタク的趣味があってもおかしくはありません。まったくの無臭というのは、果たしてモテにつながるのか疑問です。
だいたい現代の男性が「ヒラヒラした服を着て、強い主張をしない女性」が好きかというと、そうでもないはず。先月の「steady.」で、花柄ワンピに引いたという男性の声を掲載し、実証していました。これは、結婚したからといって女性を養う意思のない男性が増えたため、ヒラヒラした服をみると、女性が「依存したい!」と言っているように見えるからなのでは、と邪推。男性が本当に好む服装が「ヒラヒラしていたりフワフワしているもの」ではなくなっていても、己の「かわいい服で毎日通勤したい!」という意思を貫く姿勢は、「わが道を行く女の子の味方・宝島社的なのでは?」とも思いましたが(読者が、男性の気持ちの変化に微妙に気付いていないという線もアリ)、「モテたい」=「かわいいと思われればいい」と、手段化している感じも否めません。「逃げ出しがちな若い男性」が多い現代において、「かわいい雰囲気」=即「モテる」につながるほど単純なことではないでしょう。
■最後のセーフティーネットが外れた……
同じように、「これ、しとけばいいんでしょ!」という思いこみは、「3分で名作本をマスター!!」という企画にも滲み出ています。「舞姫」「雪国」「坊っちゃん」などの文学作品のストーリーやポイントを説明したこのページには、「知っておけば、『あの子って教養があるんだね』って言われちゃうかも♪」と書かれていて、そんな簡単に少女マンガみたいな展開にはならないのでは……と妙に暗い気持ちに。
でも、そんな読者に渇を入れるのが、俯瞰的な視点からOLの素顔の下に隠れた本当の生態をあぶり出す辛酸なめ子の「OL妄想劇場」や、ゴマブッ子がなまぬるい恋の悩みを荒療治する「LOVEパワー強化道場」、そしてマツコ・デラックスが社会問題に切り込む「マツコヨットスクール」。なんと今月で「マツコヨットスクール」も最終回だそうです。
ここ2回は、「担当編集ちゃんのチョイスしたニュースを完全にスルー状態」にして、「よくある身辺雑記を垂れ流しにしていた」と書いてありますが、それでも読者に何かを考えさせるようなページであったのは間違いありません。
翌月から、マツコ・デラックスに変わって「steady.」読者に、「男に選ばれるために平均的なかわいさを狙っているだけじゃ、足をすくわれることもあるんだよ!」と渇を入れる人がちゃんと現れるのか、気になるところです。
(芦沢芳子)
でもその安易さを「かわいい」と思う男もいるからねー
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