「男よりも同性に認められたい」という欲望が渦巻く、「STORY」9周年記念号
今月号の「最旬王子様ファイル」に、嵐・大野智が登場です。「大人セクシー」「男を感じる」などツイッターでも話題騒然ですので、購入後真っ先に拝見致しました。これが……黒い。リーダーの日焼けはほぼネタ化しているというものの、薄暗い部屋で白いワイシャツをはだけさせるアンニュイショットという「最旬王子様ファイル」独特のテイストに置かれると、DHCダイエットサプリのCMのハイキングウォーキング・鈴木Q太郎を連想させてしまって仕方ありません。今をときめく嵐と「卑弥呼さま~」を混同するなんて、筆者は男のセクシーというものがてんで分かっていないようです。「非凡を包む平凡は底知れぬ魔力。能ある鷹が隠してきた爪で、今、観るものの心をつかむ」というキャッチの通り、いろいろな意味で心を鷲づかみにされましたよ!
<トピックス>
◎FASHION大特集 S(STORY的)K(キテる)B(ブランド)48総選挙
◎LIFE大特集 世界中で!女な女で磨かれる
◎40代ヘアメークさんが選ぶ「2011STORY的ベストコスメ」発表
■パリを語る女の痛々しさ
今月号で「STORY」はめでたく9周年を迎えます。今月は40代にとって今一番旬なブランドは何かを徹底リサーチ。名づけて「S(STORY的)K(キテる)B(ブランド)48総選挙」。ESTNATIONやRonHermanなどが「STORY的 ネ申ブランド7」として並べられています。しかし、「一番旬な」ブランドとファッションを取り上げながら、なぜ今あえてのAKBネタ? この、ちょい遅、いや大分遅い感……昔デパ地下でバイトしていた時に休憩所でよく会うオバちゃんが「今●●が流行ってんだよね~」と持ってくる情報くらいのズレです。これがもしや「大人のヌケ感」? 「STORY」はいちいち深いですね。
今月は記念号ということで、大特集が二本立て。ライフスタイルの大特集は「世界中で! 女は女で磨かれる」です。「男目線を忘れないことが女を保つ唯一の方法、そう思っていたのはもうずっと昔のこと。今は、素敵な女性をたくさん見て憧れを抱いたり、話をしたり、時間を共有したり……。そうやってお互いに刺激し合うことで、女性はファッションも生き方も変わる。つまり、美しく磨かれていくのです」ということで、PART1では表紙モデル・富岡佳子が世界的なファッションブランドのCEOであるトリー・バーチに会いにニューヨークへ、PART2ではDKJ(団塊ジュニア)世代代表モデル・倉本康子が東日本大震災でのチャリティーコラボに協力してくれたデザイナー、パオラ・フラーニさんに会いにイタリア・リミニへ。双方が母として女として力強く生きること、震災を経て思う故郷など深イイ話をされているところに、まさかのオチとして用意されていたのがPART3「中村江里子さん×雨宮塔子さん 私たちはパリの女に磨かれてる!」でした。このメンツ、そしてこのタイトル……PART1と2の含蓄を全て吹っ飛ばしても余りある破壊力。
「シッターさんを頼んでも、一年に10日は必ず夫婦で海外に行く友達もいるのよ」と江里子がかませば、「母親である前にまず女。フェロモンというか、女オーラを出している」と塔子がマドモアゼル賛美。その後もフランス人である夫がキスしたがって困るとか、フランス女性はノーメイクで濡れ髪でも色っぽいとか、こっちに来たら自分の意見をはっきり言わなきゃ生きていけないとか、この間はタクシーの運転手にビシっと言ってやったとか、「パリに憧れた日本人女性が言っちゃいそうなこと」という大喜利のような対談が続きます。
次ページではふたりのコーディネート対決が展開されているのですが、これまた「今回のスタイル、ユニクロのデニムにしたんですよ(塔子)」「えっ? 私の今日のコーディネートもユニクロのデニム。でもパリではユニクロってMUJIみたいな存在で…(以下省略)」と、よく分からないエクスキューズを噛ませ合っていました。この対談であらためてパリという病の深さを思い知りました。せっかくの9周年記念号の特集をこのふたりに預けてパリに病む女を晒した「STORY」、なかなかの策士です。
■森口さん目を覚まして!
パリ好き女性に食傷気味になったところで、「40代”バツ0″シングルズ『新しい幸せのあり方』」に参りましょう。うっとりばかりもしていられない、ひとりで生きると決めた女たちの主張に耳を傾けています。
最初に登場するのが、森口博子。夢がモリモリももう43歳。「芸能界に身を置いて早25年余り。最近は類稀な歌唱力にますます磨きをかけ、ジャズライブにミュージカル……と、引っ張りだこ」という忙しい毎日を送っているそうです。「ところが、こんなに引きよせの強い私が、結婚だけはイメージできなかったんです。なぜか湧かない(笑)」。しかし30代は仕事もうまくいかなくなり、体調も最悪に。そんな時出会ったのが青汁……ではなく、「『感謝』という言葉。リストラされそうになっても人に支えて頂き、タレントを続けながら人に感動をお届けできる嬉しさ、歌えることの楽しさ、仕事ができる喜びを経験して、ひとつひとつが本当にありがたいことだと思えるようになったんです」。
名言集を読みあさり、好きな言葉をスクラップしてマイブックを作る。ライブや舞台のお礼状は手書きで。挙句の果てには「ポジティブ波動は連鎖しますが、ネガティブ波動は伝染。常に前向きでいたいですね」とアレなニオイ。念の為に、検索してみたら「森口博子 宗教」がトップに。やっぱり。パリ女とは別次元のうっとりにハマってしまわれたのでしょうか。
シングル先輩として登場したのは、日本が誇るミュージカルスター・木の実ナナ。15歳で芸能界に入ってから、家族の家計を支えてきた彼女。20代のころ、心から結婚したいと思う人が現れ、それを父親に告げると「『ばかやろう』とお猪口が飛んできて『うちの面倒は誰が見るんだ』と怒鳴られた」と語っています。加護(亜依)ちゃんは変な男のところに行かず、ナナ姐にすべてを相談するべきですね。ナナ姐がだてに舞台で足を上げてるわけじゃないと気付くはず。
「STORY」、そして40代女性にとって”男にモテる”というのは一つの栄養素に過ぎません。実際は自らに内在する女の視線と、実際の自分との距離の計り方を常に画策しているのだなぁという思いを強く抱いた今月号。つまり、自分の中の”オンナ”をどう克服するのか? なんですね。パリに溶け込む私を、女に見てほしい。一人で生きる決意を、女に知って欲しい。女に認められて初めて、自分の中のオンナを超えられる(と感じている)のではないかと。何はともあれ、非常に読み応えのある9周年記念号でした。
(西澤千央)
森口にはキックベースがあるじゃない!
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