カルチャー
女子大生が自主AVを!?

画一化されたエロスにNO! 『東京女子エロ画祭』が晒した女の”欲望”

2011/10/23 17:00
その夜、阿佐ヶ谷はエロスに包まれた!

 去る10月15日、私と編集Nはともに、居合わせた見ず知らずの人々約50人と大画面で素人出演AVを見る、という奇特な体験をした。スクリーンにでかでかと映し出された男性のモザイク、大音量で響き渡る甲高い声……イベント『東京女子エロ画祭』での一幕である。

 今回で二回目となる『東京女子エロ画祭』は、”女性の考えるエロス”をテーマに、事前公募で集まったエロ作品を品評するイベント。作者が女性であり、倫理基準さえ満たしていれば、表現形態は自由。

「作品はすべて”エロス”を表現したものなのですが、いわゆるムラムラするようなエッチなものとは毛色が異なるかと思います。男性が女性に対して求めるエロティックなものは、隠す・想像させる要素が多いですよね。でも、『東京女子エロ画祭』に応募してくる女性たちの作品は、”すべてをさらけ出して”いるんです。単に裸を見せるだけではなく、心の内面すべてをさらけ出している。前回見にいらしてた男性たちは、自分たちが普段オカズにしているAVなどとのあまりの違いにビックリされていました。これこそがこのイベントの醍醐味だと思っています」

と、主催の神田つばきさん。エロ画祭というからには、てっきり来場客がムラッとくるようなあられもない作品の巣窟かと思っていたのだけど、違うの? 分かったような分からないような思いで12個のエントリー作品を見ていくと、なるほどどれもヤラしい気持ちになる類のエロとは言い難い。「キミと……シたいんだ」という感情をナマコのキャラクターが語り続けるアニメ作品や、汁をしたたらせながら果物をむさぼり食う映像作品など、見れば見るほど、女の欲望って果てしなく複雑なのね、と思わざるを得ない表現のオンパレード。中でも、特に目をひいたのは以下の4つだ。

■『ハム屋さん』 藤山京子・作

 「血圧計に腕を入れるとギュッとなるあの感覚が大好き」という藤山京子さんは、自らの腕をボンレスハムに見立てて、タコ糸やリボン、縄などをキツく巻きつけた写真を展示。ムニっと盛り上がった白い肌は、糸で締め付けられることでみずみずしい女性らしさが際立つ。自分で自分の腕を締め付けて撮影していながら、ステージ上で「ハムですーエヘヘ」とのほほんと笑う藤山さんだが、小学生が糸を巻きつけて「ハムー!」と喜ぶのとはワケが違う。これが、カップルがキャッキャと「見て見て、○○くん! ハム作っちゃった♪」「食べちゃうぞ!」とよろしくやるならまだいい。見かけはおっとりと素朴な藤山さんが、頭の中ではボンレスハムにエロスを感じているだなんて。”女”と”エロス”の組み合わせは、心の奥深くに眠る何かが露呈しやすいテーマなのかもしれない。

■『蝶になれない』 若林わかめ・作

 小学生の頃、よくクローゼットの中に閉じこもって泣いていた若林さん。ちょうど二十歳になったことで、その当時を再現した写真を発表していた。”二十歳になっても蝶になれないんだ。何一つ変わりはしない”という思いが原動力になっている作品なのだそう。若林さん本人は”何一つ変わりはしない”と言ってるものの、小学校時代の制服を着た写真の中の若林さんは、チャックがしまりきらずお腹がチラリと見えていた。ランドセルと制服姿でクローゼットに入っている写真は、当時よりもずっと長く伸びた足がクローゼットの中に入りきらず、生足がはみ出ている。思春期、10代への思いが根底にあるため、多くの女性の心を揺さぶるエロスだろう。

■『愛情』 水無月み遊・作

 普段はAV女優をやっているという水無月み遊さんが発表したのは、彼女自身のプライベートを切り取った動画作品。動画には、水無月さん本人が縄でがんじがらめにされている姿や、鞭で叩かれて赤くみみずばれになった体が……。動画のあまりの激しさに会場の空気が張りつめる中、「私は縛られたり、鞭で打たれたりすることで彼からの愛情を感じるんです」とうれしそうな水無月さんを見て、見る側も生半可な気持ちで臨めないイベントだと悟った。そんじょそこらのAVやエロ画像で興奮するのとは全く異質な空間だ。ただ座って見てるだけなのに、この疲労感は何?

■『もし女子大生がAVを撮ったら』 (仮)男子・作

 エントリー作品中、最も直接的なエロ表現がなされていたのがこれ。「男性のイキ顔を撮りたい!」をテーマに、女性のために作ったAVだとか。他の動画作品がどれも5分以内の短編であるのに対し、尺は23分と大作。それも、出演してくれる一般の男の人がなかなか見つからないという苦悩のドキュメンタリーに15分以上が割かれ、なかなか本番が始まらない。なんというジラしプレイ……! と会場の誰もが思っていたはず。ようやく始まった本番では、男女ともに一般人だけあって、ぎこちなーく服を脱がせ合い、探り探りで互いの体を触り合い、とスマートさに欠ける様子がリアリティーたっぷり。男優として出演したショウタくんが、恥ずかしそうにモジモジしながら女性に身を委ねたり、快感にもだえるあまり足がピクピクしている瞬間など、グッとくる名シーンが流れるたびに、一体となって沸く会場。男性が無事フィニッシュを迎えて動画が終了すると、観客全員で大きな拍手。これはもう、立派なパブリックビューイングである。

12作品のうちのほとんどが、生々しい感情が吐き出されたものだったことに対し、主催の神田つばきさんは、

「第一回目は、ボディーペインティングや裸の写真など、『私の体を見て!』という作品が多かったのですが、今回はかなりドロドロした作品が目立っていましたね。きっと回を重ねるたびに、多様な作品が生まれるのではないかと思っています。絵や写真じゃなくても何でもいいんです。例えば、書道や、料理、裁縫など、あらゆる手段で表現されたエロス作品を見られるとうれしいですね」

 と言う。世にはびこるセックス特集とは一線を画したエロ作品の数々を見て、イベントから一週間以上がたった今もまだクラクラしている。これがもし、『東京”男子”エロ画祭』だったら、こんなにバラエティー豊かな作品群にはならなかったのではなかろうか。一口に”女のエロ”と言っても、「an・an」(マガジンハウス)の指南する”フェ○チオ論”をはじめとしたベッドテクや、「婦人公論」(中央公論新社)のめくるめく濃厚プレイだけにあらず。女の数だけエロスはあるのだ。
(朝井麻由美)

■『東京女子エロ画祭』公式HP
次回『東京女子エロ画祭』第三回目は2012年10月を予定している。作品の募集もすでに始まっている。締切は2012年8月末。詳細はHPまで。

『武士道とエロス』

武士道ってのもなかなかの妄想力


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最終更新:2011/10/23 17:00
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