「Domani」が提唱する、”自称・おやじオンナ”の浅さが凄まじい!
はい、お待たせしました「Domani」のお時間です。きっと配信されるのは発売日からだいぶたってしまっていることと思います。言い訳じゃございませんが、やっぱり言い訳させてください。
これまで女性誌レビューで散々お知らせしてきましたが、「Domani」の読者セグメントは既婚・未婚ではなく、「きちんといい女」「こなれたいい女」という企画が示すとおり、「自分をいかにいい女と思えるか、といううっとり度」にあるかと思っています。そんな「Domani」の今月号に、「私に似合う『黒ブチめがね』教えてください!」という危険なページがあります。原宿系・渋谷系をはじめ、去年あたりからずっと黒ブチめがねは流行っていますし、同誌メインモデルの知花くららも多用してるので、根がコンサバな「Domani」読者もほしいようです。というわけで、このページでは「Domaniメイツ」という読者モデルが数種類のフレームを試しているのですが、問題はその隣のページ。
「”BEST1″黒ブチめがね 原寸大チョキチョキ試着リスト」として、ご丁寧にも切り取り線まで付いた、ブルガリ、ディオールなどタイプの違うめがねの写真が掲載されています。このページだけ厚紙にしてくれればいいのに、いつものペナッペナな紙。これを、「いい女と自認するうっとり女」が切り取り線の1mmまで気を使いながら切り取って、鏡の前でペナッペナの紙にあたふたしながら、「アタシ、これ似合う♪」と言ってると思うと、涙と笑いとまた涙が出て来て、レビューを書くまでに心を落ち着かす必要があったのです。「Domani」ったら、酷なことするぜ……。ちなみに、黒ブチめがねの他にも、今月号には”黒ブーティー徹底試着室”なーんていう同様なページもありますので、今月号の「Domani」を隅から隅まで見逃さないでください! それでは今月もトピックからどうぞ。
<トピック>
◎私の中には、”おやじ”と”オンナ”が住んでいる…!
◎私、この部分がたまらなく”おやじ”で”オンナ”です!
◎”BEST1″黒ブチめがね 原寸大チョキチョキ試着リスト
■くららさんの扱いが丁寧なんだか、雑なんだか……
今月号の「Domani」の特集は、「私の中には、”おやじ”と”オンナ”が住んでいる…!」です。タイトルだけで胸やけしそうな、自意識過剰。「オヤジだろうが、オンナだろうが、だーれもお前のことなんか気にしちゃいねーよ!」と言いたい気持ちをグッと抑えてください。女性誌なんて、「いつだってあなたが”主役”です」「常にあなたの服はチェックされています」「兄さんは、いつでも注目の的ですや~ん」といってその気にさせる、”サバンナ・高橋詐欺”みたいなものですから。
おやじを表現したかったのかは不明ですが、今月号の表紙は方向性を完全に誤ってます。ボサボサ頭で、異常に濃いメイクを施され、うつろな表情の知花くららさん。それ、おやじじゃなくて、初期の鳥居みゆきだよ? と注意してあげたい。今月号には「『女は髪でしょ!』”なれるものならくらら髪”の秘密」という企画もあるのに、こんなボサボサ髪まで晒しちゃうなんて、くららさんったら男前!(と言っておけばいいんでしょ)
そして、「”おやじ”と”オンナ”」の企画は、「知花くららinイタリア 私の中の”男”と”女”を探しに……」という、「え? オヤジはどこに行ったの?」と思ってしまうページからスタートしてます。中身はいつもの「うっとり写真+不思議ポエム」という”知花くららのうっとり劇場”ですので、「カメラマンからどういうオーダーがあれば、このポージングをするのだろう」など自分なりの楽しみ方で写真を眺めていただければ幸いです。
■「霊峰=オヤジ」という拡大解釈が気になるッ!
そして今回の特集の根幹となる、「私、この部分がたまらなく”おやじ”で”オンナ”です!」というページを見てみましょう。「Domani読者のリアルボイスを集めてみました!」と鼻息も荒めですが……。
<広告代理店勤務・35歳>
おやじ「新幹線に乗るとすぐビールとピーナッツ」
オンナ「ドライヤーはドライ専用とセット専用のふたつ使い」
<ライター・35歳>
おやじ「高野山や霊峰に興味が湧いてきた」
オンナ「チョコレートはいつも常備」
<金融関連会社勤務・35歳>
おやじ「巻頭グラビア見たさに『週刊文春』を購読」
オンナ「会社では姉御なキャラでも、旦那の前では甘えん坊」
???? これは……何というか……みなさまの心の声を代弁いたしますと、「日常じゃん!」。いや~、女の自己申告/自己評価ほど当てにならないものはありませんが、これは「私、不思議ちゃんって言われるんですぅー」と同じレベルなのでは? 自分の言動に意味を持たせて、自己評価するなんて、「サブカル女子」以来のめんどくささ。「私、サブカル女子なんです」「私、オヤジ入ってるオンナなんです」と言われた時の、受け手の「正解」を誰か提示してください。
その昔、故・中尊寺ゆつこが「オヤジギャル」という単語とともに世に出たとき、本物のオヤジたちは驚いたフリしながら目を細めて歓迎しましたが、そこから約20年、女によって「オヤジ化する私」がブランドになるとは思いませんでした。これらの企画もあくまで「ダサかわ」「ダサキレイ目」ファッションの前振りにしか過ぎないと分かりつつも、いろいろを複雑な思いを抱かされた、「Domani」11月号。来月号は、「『Domani』がご乱心!」と業界内の話題をさらった、「華麗なる貧乏」特集の続編だそう。名前負けしないように、編集部に代わってお百度参りでもしておこうかな。
(小島かほり)
めがねをちゃんと切り取った人、少なくないと思う
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