「おい、コラ!」、パトロールボランティアの「善意」が歪んで見えてしまう言動
今回ツッコませていただくのは、10月3日放送のテレビ朝日系『ワイド!スクランブル』。9月26日に「バスケットボールストリート(通称:バスケ通り)」と名称を変えた、渋谷センター街をパトロールする地元の中高年男性たちに密着するという内容だった。
若年層の地べたでの座り込みや、禁止区域への自転車の乗り入れ、東京都の迷惑防止条例に反する路上での客引き行為などを取り締まるという立派な取り組みに、どことなく違和感を覚えてしまった。
まず、コンビニ前に座っている少女たちを注意するパトロールの中高年男性のこんな言葉。
「あんたたちは、よくこういうとこ(コンビニ前)座ってるよねェ(嘆息)」
コンビニ前に座っているという「行為」を注意するのではなく、「若者集団の習性」としてまとめてひとくくりに説教をするのって、どうなのだろうか。日々、若者を注意していると、苛立ちがどんどん蓄積され、「まったく近ごろの若いヤツらは」的なことを言いたくなってしまうのも、仕方ないのかもしれない。だが、さらに注意・叱責はエスカレートしていった。
「ここ、自転車乗って走っちゃダメなんだよ」と、自転車のハンドルをグイとひっぱり、注意する中年男性。そのうち「おい、コラ!」「何度言ったら分かるんだ、コノヤロー!」なんて荒々しい言葉も飛び出した。念のために言うと、これは若者の方ではなく、パトロールの人たちの注意の言葉なのである。
さらに、「ちょっとそれ、犯罪ですよ。あれ、読んでみて!」と言いつつ、キャッチの人の腕をグイッとつかみ、注意が書かれた看板の方に引っ張っていくシーンもあった。
もちろんボランティアでパトロールをしている方々の行為そのものは、普通の人が真似できることではないし、非常に立派である。頭が下がる。また、若者に注意するということは、大変勇気が必要な行為で、「ナメられないように」と言動をあえて荒々しくしている部分もあるのだろう。
とはいえ、第三者がこの注意・叱責の場面を見たとき、「おい、コラ!」「コノヤロー!」などの怒鳴り方は、まるで恫喝のように見えてしまわないだろうか。また、警察でもないのに、人の腕を押さえる・引っ張るなどの行為は、行き過ぎではないのだろうか。
パトロールの中年男性の呟きが、そんな思いをさらに強めた。
「俺の街が汚くなっていく……」
俺の街って??
そんな中、同番組のコメンテーター・なかにし礼の「行為そのものは良いことだけど、注意するほうの言葉遣いをもうちょっと……」といった発言が、珍しくフツウに思えた。
ボランティアでやっている「パトロール」という立派な行為と、荒々しい言動との違和感。人の善意や正義感は、実はけっこう危険だと思う。そんなことを痛感させられる番組だった。
(田幸和歌子)
渋谷のパトローラー、Kダブ先生をお忘れなく!
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