寿司のバランをつけまつげに!? 話題の『姫ギャルパラダイス』作者を直撃!
これまでたびたび、ギャル系雑誌の”盛り”まくりのヘアメイク特集が、「人の髪型じゃない」「もはや中世の貴婦人」「やりすぎw」などとネット上で話題を呼んできましたが、最近、その流れの中で注目されている少女マンガがあります。「ちゃお」(小学館)にて連載中の『姫ギャルパラダイス』。ご存じでしょうか?
「姫ギャル!! 山盛りポテト・カール仕込み デコ盛りハーフアーーーップ!!!」「揚げだけにアゲーー↑↑」と見開きブチ抜きで、ポテトを編みこんで盛った姫ギャルが描かれたコマの画像が、ネットの海を漂っているので、目にしたことのある方もいるかもしれません。しかし実はこの作品、ネタとして消費するだけではもったいない、女と「装うこと」についての名言連発マンガなんです! 今回は、作者である和央明先生にその真意を伺ってきました。
――『姫ギャル~』は、姫系ギャルファッションを極めた「美神(みかみ)とちおとめ」という男子高校生が、地味でコンプレックスを抱えている主人公の姫子たちにオシャレをレクチャーするという内容ですが、インパクトのある設定ですよね。
和央 当時、姫ギャルを扱ったマンガがなかったので、目立つかなと思って(笑)。やっぱり時代はギャルじゃないですか。しかももうファッションとして定着しているので廃れることがないですし。とちおとめを男にしたのは、「かわいいギャル」や「女の子の主人公」ではどこにでもいるので「いっそ男にしちゃえ!」という思いつきです。それと、これは後付けですけど、女が上から目線でオシャレをレクチャーするとムカつくじゃないですか(笑)。でも、例えばIKKOさんやはるな愛さんみたいなオネエ系の方が上から目線で語ってもイヤミじゃない。だから、女装男子の方がいいかな、と。
――そんなとちおとめ様に対して、メイン読者の小学生女子からの反応はどうなんでしょう?
和央 「かわいい!」っていう反応が一番多いです。
――とちおとめ様は男の格好をするとイケメンですが、そちらの人気は……。
和央 断然、姫ギャルバージョンの方が人気があります(笑)。マンガ全体でも、キャラ人気では姫ギャルとちおとめの一人勝ちですね。
(担当編集)西巻氏 あと、「男が女装して」みたいな、いわゆるセクシャルな受け取りは全然ないですね。和央先生の作風もあるのでしょうけど。
和央 「かわいいから、それでいいじゃん!」みたいなところはありますよね(笑)。
――「ウニの殻や寿司屋のバランをつけまつげにする」「髪巻きコテで肉を焼く」「頭にカニを盛る」など、『姫ギャル』のギャグは独特ですが、そういった発想はどこからきてるのでしょうか。
和央 完全に思いつきです! 面白いかなー、と。
――時々、TwitterやSNS上で画像がアップされて話題になってますが……。
和央 あっ、それ、見ました、見ました(爆笑)! 「やっぱりココに飛びつくのか!」「インパクトあるんだね」という感想は持ちましたね。
――ネットユーザーからの反応で、「揚げだけにアゲーー↑↑」というギャグや「イケめてる!」などの言葉に対して、「最近の少女マンガは日本語がおかしい」という意見もみられますが……。
和央 ファッションの流行と一緒で、これも言葉の流行なので、アリだと思います。「ナウい」「チャラい」とか、いつの時代も人は言葉をいじるじゃないですか。人が使っていれば、自分だって使いたくなるのは当たり前。ただ、TPOに合った話し方はするべきだと思います。友達との話し方、仕事場、目上の人への話し方はきちんと区別をつけてほしいです。
――ネット上だとギャグの部分ばかりが注目されますが、『姫ギャル~』は「ジミでダサイからって最初からあきらめてていーの? 自分と一生つき合って行くのは自分だよ? どうせならかわいい自分とつき合いたくねー?」(1巻18P)みたいなせりふに象徴されるように、女子の真理を突いたマンガだと思うんですよ。それは和央先生の実体験からきてるんでしょうか?
和央 連載を立ち上げる前は週1で渋谷109に通ったり、「小悪魔ageha」(インフォレスト)の関係者にお話を伺ったりもしました。109には今でも月に1度は足を運んでいますね。あそこにいる女の子たちは元気ですし、そのパワーがマンガに反映されていると思います。「目が小さければアイラインを引けばいい! 盛ればいい!」みたいなギャルの心意気がすごく好きなんですよ。私はすごいコンプレックスが強くて、学生時代も「どうせ私なんか……」と殻に閉じこもるような感じだったんですけど、同じような女の子は少なくないと思うんです。だから、そうした時期に「かわいくなれるよ!」って背中を押してくれるようなことを言ってもらえたら、救われるんじゃないかなと思ったんですね。マンガの中のせりふにはそんな想いも込めています。とにかく、ちゃおっ娘(編注:ちゃお読者の総称)のために頑張って描いてます。
――最近は小学生向けのファッション誌も増えてますが、小さな女の子がメイクをすることについてはどう思ってますか? 最近は少女マンガ誌の付録もポーチや手帳など女性誌並みですが。
和央 ダメだと思います!(キッパリ) とちおとめたちも高校生ですからね。読者の女の子たちにも、もっと大人になってからやってね、と。でも、子どものころから前向きな心意気を養ってほしいと思っています!
西巻 最近の子どもはオシャレになったといいますけれど、「ちゃお」は全国の女の子が読んでいるので、最先端を行き過ぎるとダメというか、より親しみやすいオシャレを目指しています。今は豪華なブランドコラボ付録よりは、シールやレターセット、ペンなどをたくさんつけていますね。細かいアイテムがたくさん付いてる方が女の子は喜ぶので。
――妙齢の女性読者が多い「サイゾーウーマン」読者でも『姫ギャル』は楽しめますかね?
和央 「サイゾーウーマン」を読んでみて、近いセンスを感じたので、読者さんなら『姫ギャル~』を楽しんでもらえると思います!
(構成/藤谷千明)
和央明(わお・あきら)
2005年、「ちゃおDX」(小学館)春号にて、『ハイカラ恋らんまん』でデビュー。以降、「ちゃお」系コミック誌にて活動を展開。発売中の「ちゃお」11月号には、『姫パラ』のアニメ収録のDVD付き。ちゃおコミックス『姫ギャル(ハート)パラダイス』1~4巻発売中! そしてなんと現在3DSゲームも開発中~!! 前作『特攻サヤカ』シリーズも要チェックです。
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