カルチャー
田房永子の「カタマン女の熟年セックス問題」

オバチャンの「潤ったおセックスライフ」事情を東陽片岡先生に学ぶ

2011/09/28 21:00
(C)田房永子

 私は不安だ。「男は若い女が好き」。この揺るぎない前提がある社会の中で、年をとるごとに”アッチのほう”は元気になっていくことが。10代、20代よりも、30代の今が一番ドスケベだ。しかし雑誌やテレビは「シミ、シワがどんどん増えていく、太っていく、衰えていく」と身体老化の恐怖をひたすら煽ってくる。最新美容をキメまくった「美魔女」にはなれそうもない自分は、身体はシワシワになってセックスしたくなった時、どうしたらいいのだろうか。現在、熟女の方々はどうやってセックスを獲得しているのか。

 今回は、そんな疑問を「熟女風俗」の達人であり、漫画家の東陽片岡先生に伺った。東陽先生は、系統で言えばなぎら健一系のアロハシャツがよく似合う53歳。スナックと演歌とグレープフルーツサワーが大好きなおっちゃんである。

――50代で男とセックスしている熟女って、やっぱり「美魔女」みたいな感じの人なんですか?

東陽先生(以下、東陽) 「美魔女」みたいな、若作りを頑張ってる人は若い男が好きなんだと思いますね。おじさん好きな中年女性は年齢を隠さないし、しっとりしたオーラを出してますよ。70歳の女性でも、シュ、とした格好してる人は、色気があってグッときますよ。特に着物なんか着てる人はいいですね。

――70歳!? 例えば橋田壽賀子なんて、典型的な色気のないオバチャンの代表格って感じがするんですが、どうですか?

東陽 (壽賀子の画像を眺めて)いいと思いますよ。この人みたいに、ふくよかなほうが色っぽくていいですね。痩せてるとどうしてもシワがこう、あちこちにね、目立ちますから。年取ったらダイエットしないで、逆に肉つけるといいと思います。

――橋田壽賀子、イケます?

東陽 橋田さんは首がツルツルでしょ。首と手の甲にハリがある人は、体もキレイですよ。橋田さんの首は、驚異的なシワのなさ。イイですね。

――でも、やっぱり胸は垂れてたら萎えますよね?

東陽 基本的にオッパイは垂れてるほうがいいんですよ。横になった時、オッパイが盛り上がったままはダメ。乳首が左右に流れてる方がいいんです。

――ハリはいらないってことですか?

東陽 ない方がいいですね。乳首が下にポジショニングしてるのがね、ありがたいんですよね。昔、肉が存在した痕跡のある、たるみがイイんです。熟女好きはみんなそうですよ。

 初めて耳に入れる価値観。まばたきするのを忘れた。そう言われてみると、「壽賀子を抱きたい男はいるはずがない」なんて、一体いつから思い込んでいたのだろう。完全に失礼じゃないか。「若さ至上主義」で成り立つメディアに洗脳され過ぎている……自分の頬を叩いた。東陽先生は、林家ペー並みの記憶力で往年の女優たちの年齢を即答し、川島なお美よりもあき竹城の話題に食いつきを見せる。男性としてはかなりの少数派だ。だが、こういった男性もいる、という事実が、私へ希望を運んでくる。

――「閉経前は急激に性欲上がる」って、よく聞くんです。この年代の女の人は特に性欲が強いとか、感じますか?

東陽 40半ばの人が、一番ハッスルしてますね。積極的に快楽むさぼってくる。

――やっぱりそうなんだ……。男は「年上の女は性欲の強すぎて怖い」とか言いますけど、引くぐらい激しいんですか?

東陽 女の人たちのインランな乱れ方も楽しいですよ。アトラクション的な楽しさっていうか。昔、板橋の風俗で会った、鳩山元首相の奥さんにソックリな40半ばの人。その人が一番すごかったですね、ヤル気が。もう止まらないって感じで、3時間で5回くらいさせていただきました。

――それ、先生がスゴイですよっ! じゃあ、50代になると女の性欲は下がっていく?

東陽 50になると、ちょっと「いい年こいて淫乱に見られるのはいやだな」って思うんじゃないですかね。そこまでやらしい人はいなかったですね。
 
 編集部員が持参した「50~60代のフツウのオバチャン達の集合写真」を先生に鑑定していただいた。写真には15人ほど並んでいて、一人だけ40代と思しき草刈民代っぽい美熟女がいるが、他は全員”地味な野村サッチー”に見える。

 先生は真剣な眼差しで数秒見つめ、草刈民代を指差し「この人は若すぎるから外します」と一言。良かった……真っ先に民代を選んだらどうしようかと思った。先生は裏切らない。そして、「この人。たぶん一番人気ありますね。あとこの人も、潤ったおセックスライフ過ごしてますね」順番に指を指していく。

 一人目はほっかむりをした、本当に単なるオバチャンである。しかし言われてみると、なんか他の人と違う。しっかりと”薄化粧”をしていて、背筋を伸ばしてカメラへ意識的な笑顔を向けている。「女を忘れてない、あわよくばモテたい」という風情が感じられる。急に一人だけ輝いて見え出した。そして2人目の「潤っている」と鑑定されたのは、おまんじゅう系のぽってりオバチャン。美人ではないが、首をかしげて隣の人の袖を掴んでおり、確かに甘え上手な雰囲気がある。

 唯一、先生が「この人は無理」と言い切った熟女がいた。ティアドロップ型の真っ黒なサングラスをかけ、集合写真の前列の中央に座っていながら何故か携帯電話で話している熟女だ。素人目には後列にいる、『踊る大捜査線』の北村総一朗にソックリなオバチャンのほうがアレな気がするが、そっちはOKと言う先生。

 私は思った。外見じゃないんだったら、思いっきり己のエロスを発奮させていけばいいじゃないか。お話を伺う前より、100倍も明るい気持ちになれた。

 だが、10代で刷り込まれまくった「愛のないセックス」はしてはいけない、という教え。それを強迫観念のように堅く守る”カタマン”な自分は、50代のタガの外し方もまだまだ不安が残るところだ。是非とも次は熟年女性に話を伺いたい。とりあえず、橋田壽賀子ルックスを目指し、真っ黒なティアドロップサングラスだけはかけないことは決定した。

今回の先生:東陽片岡(とうよう・かたおか)
東京都出身。多摩美術大学デザイン科卒。「月刊漫画ガロ」の初代編集長に才能を見初められ、漫画家デビュー。下町の人々とその生活をテーマとし、下品とシュールを織りまぜた独自の世界を描いている。近著に『しあわせのレモンサワー』(愛育社)、『熟女ホテトルしびれ旅』(青林工藝舎)など。

『熟女ホテトルしびれ旅』

熱海はいい感じのオバチャンの宝庫


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最終更新:2012/05/21 17:02
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