取次が委託配本拒否! 原発問題の根幹に迫る『東電・原発おっかけマップ』
日々、テレビや新聞から流れている「ベクレル」「シーベルト」という言葉。感覚がすっかり麻痺しているが、本来ならそれらの言葉が耳馴染みになってしまっていること自体が異常なこと。「3.11」直後の情報が錯綜していたころに比べればメディアも落ち着いたが、東電や政府から情報が「後出し」されたり、政府や大手メディアの出す「情報」の信憑性が疑われ続けている。なぜ、こんなことが起こっているかといえば、それは原子力発電(以下、原発)自体が巨大な利権になっているからだ。では、原発はいつから利権になったのか。その謎を解く本が『東電・原発おっかけマップ』(鹿砦社)である。
本書は「東電編」「永田町編」「霞が関編」「学術・メディア編」という章立てで構成されており、原発稼働・保持に”尽力”した関係者の経歴や、原発との関わり方が詳細にサポートされている。一見、それぞれの立場での権力闘争の様相だが、ちょっと見方を変えれば「原発を誘致、利権化した人たちの歴史」という縦軸と、「現在、その利権に群がっている人たち」という横軸が交差し、原発問題の根幹に肉迫した1冊となっている。
「原子力の父」とも言われ、日本に原発を持ちこんだと言われる読売新聞社主・正力松太郎(1885~1969)。関東大震災直後に「朝鮮人暴動の噂」を流布したとも言われ、戦時中は大政翼賛会総務を務め、戦後はA級戦犯として巣鴨プリズンに収監されていた。釈放され、衆議院議員に当選した彼にとって、最大の関心事は「日本を共産化から守ること」であり、原発はそのためのコマでしかなかった。
正力同様に、戦後、国づくりの礎として原発を求めたのが中曽根康弘だ。「安定的な電力がなければ、日本は農業と水産業だけで欧米列強に肩を並べられない」という概念は、原子力を夢のエネルギーに見せていたのだろう。
そして、その原発を「利権」という名の錬金システムに変えたのが、田中角栄である。電源三法と呼ばれる3つの法律を成立させ、交付金や補償金という多額の金が原発立地に落ちる仕組みを作り上げた。
本書を読み進めるうちに、利権が巨大化し、東電社内の権力闘争、メディアと電力会社の癒着、経済産業省の天下り、文化人・学者の懐柔と多岐にわたる問題をはらんでいったことが分かるだろう。
本書を出版した鹿砦社の松岡利康社長は「フクシマでは多くの人が避難勧告を受け、故郷を失った。不浄な原発マネーを貯め込んでいる”戦犯”に反省してもらう必要がある」という決意のもと、関係者のプライバシーに踏み込んだ内容を記載している。そのため、取次各社から委託配本を拒否されるという異常事態まで引き起こした。『ジャニーズおっかけマップ』でジャニーズ事務所と裁判をした時や、『厚生省おっかけマップ』『大蔵省おっかけマップ』『あぶない銀行おっかけマップ』を出版した際でも拒否されなかった委託配本。まさに「禁断の書」というべき1冊に書かれた、フクシマを巡る”真実”をぜひその目で確かめてもらいたい。
※委託配本=書籍の新刊発行時に各取次会社が発行部数の大半を書店に適宜配本する制度。日本の出版界は長年この下にやってきた。本書はトーハン、日販に委託配本を拒否されたことにより、委託配本されたのは発行部数の1割ほどにすぎなかった。
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