「行動しなきゃ何も始まらない!」、鹿砦社&「週刊金曜日」の東電報道
前回の対談では、「我々は、”大マスコミ”にできない報道をしていく」と熱く語ってくださった、鹿砦社社長・松岡利康さんと「週刊金曜日」の北村肇さん。後編では、昨今の原発報道から見えてきたマスコミ・国民の姿勢を語っていただきます。
――原発報道では、媒体によって報道するスタンスが大きく分かれましたね。
北村肇氏(以下、北村) 東京電力(以下、東電)が広告主というケースだけじゃなく、主要メディアの関係者の子どもが東電に就職していたり、原発関係者が過去にメディアと関わりがあったりと、東電とメディアというのは複雑で深い関係になっているんですね。例えば、原発を日本に持ってきたのは原子力委員会の初代委員長でもある正力松太郎(1885~1969)ですが、彼は読売新聞社や日本テレビの社長を務めていた。だから、読売・日テレは原発問題の核心を突けないんです。また、テレビで一番ひどいのは、フジテレビですね。フジサンケイグループのホールディング会社の監査役は、元東電の社長。鹿砦社では、これら原発にまつわる人々を取り上げた、すごい本を出されるようで?(笑)
松岡利康氏(以下、松岡) 『東電・原発おっかけマップ』です。本当の情報を隠してながら「原発は安全だ」と喧伝して、原発マネーを蓄財してる奴らには反省してもらわないといかんからな。悪い奴はとことん追及しなければならない、という一心で作りましたよ。
北村 40年間、「反原発」を唱えてきた私も、正直、ここまでの大事故が起こるとは思ってなかったですね。
松岡 だからって、原発が危険だってのは昔から分かりきってたことなんだから、事故が起こる前からもっとテーマとして取り上げておくべきだったと僕は反省してます。今回の原発事故も、もう単純に”怒り”しかないわけですよ。冷静に考えたら、こんな本作らない方がいいと思うけど、福島県民は故郷を奪われ、農林畜産業、漁業も壊滅状態ですよ。このA級戦犯は明らかに、原発推進をしてきた人たちですからね。それなのに、この本に関しては、日販など取次各社が委託配本を拒否してきたんですよ! 読者や書店からの注文は受けるとのことなので、どうにか営業を強化して受注を拡大していきます。
――反原発デモも各地で起こっていますよね。松岡さん、北村さんはともに学生運動の時代をリアルタイムで経験された世代ですが、この動きをどうご覧になっていますか?
北村 僕と松岡さんは同い年ですが、大学に入ったときには学生運動も収束に向かっていたんですよ。
松岡 過激な先輩たちが卒業していって、そのまま運動も下火になっていってね。でも、僕は大学入った頃に一生懸命闘いましたよ。
北村 僕も、東京教育大学(現・筑波大学)には、闘争をやるために入ったようなもんですからね。時代の流れとしては、闘争が収束し、もう組織的な運動体はできないだろうと思っていた時に反貧困運動が起こったんです。そして、今回の反原発運動に加わっている人たちは、反貧困運動をやっていた人たちが中心になっている。彼ら、彼女らは、我々の時代のイデオロギーの対立のことは知らなくて、単純に「こんなに貧乏にさせられて許せない」という憤りで集まって運動をしているんです。反原発運動も、根っこの「許せないことは許せない」の部分が同じなんじゃないかな、と思っています。
松岡 その通り! 昔は、若い世代が許せないことを「許せない」と言って、過激な行動に走っていったんです。イデオロギーとか言うと難しい話に聞こえるけど、結局は”怒り”なんですよ。社会や制度に対する怒り。今の若い人たちは、小難しいことを考えるせいで身動きをとれなくなっているみたいだけど、”怒り”を行動で表さないと何も変わらないんですよね。
――お二人とも原発報道に関しては、今後も攻めの姿勢は崩さないのですよね?
北村 そりゃもう、とことんやります。確実な情報が出ているのかも不明で、現状が安全か危険か分からないんだからね。分からないんだったら、「危険」と思っていた方がいい。週刊誌では、「週刊現代」(講談社)と「週刊文春」(文藝春秋)が反原発寄り、逆に「週刊ポスト」(小学館)と「週刊新潮」(新潮社)が安全寄りだったけど、最近は「週刊現代」のような煽り記事は売れなくなってきて、「週刊ポスト」の部数が伸びているみたいですね。
松岡 安全だと思い込みたいんだな。実際は、情報がどれだけ隠されてるか分からないのになぁ。
北村 事実、3月14日、15日あたりが放射線の飛散が一番ひどかったのに、後になってからそのことを明かしたでしょ。あのときにきちんとした情報を出していれば、関東の人は外出を控えることもできたのに。「週刊金曜日」では、これからもまだまだ原発報道をしていきますよ。”暴露”というよりは、淡々と本当のことを伝えるまでですが。事実を伝えることが煽ることになるのかもしれないけど、それは仕方ないでしょ、だって事実なんだから。危険なものは危険と言うしかない。僕や松岡さんのような人間のことを”異端児”と見る人もいるみたいだけど、僕に言われれば、むしろ周りのみんなの方が異端児だと思うわ(笑)。
松岡 そうそう、その通り。自分らでは、異端児だなんて思ってないよ(笑)。
松岡利康(まつおか・としやす)
1951年9月25日生まれ、熊本県出身。同志社大学文学部卒業後、貿易関係の仕事に従事。サラリーマン生活を経て、83年にエスエル出版会を設立、88 年に一時期経営危機に陥っていた鹿砦社を友好的買収、同社社長に就任。05年にパチスロメーカー大手のアルゼ(現ユニバーサルエンターテインメント)を取り上げた『アルゼ王国はスキャンダルの総合商社』、球団スカウトの死に迫った『阪神タイガースの闇』などの出版物について、名誉毀損で神戸地検に逮捕、起訴され、有罪判決を受ける。「ジャニーズ研究会」も開設。
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