いつまでたっても”現役の女”から引退させてくれない「HERS」の圧力
先月号のレビューで、萬田久子が『「ぷっ」すま』(テレビ朝日系)の「我流グルメ! こだわり三択王!!」に出演した時のことを書かせていただきましたが、なんと今月号では、巻頭の「萬田久子の『楽しみましょ』コラム 萬50+3ダッ」にてその時紹介した「味噌チャウダー萬田流」の作り方を公開しているではないですか! しょっぱなから度肝を抜かれました。レシピは超シンプルで、残ったお味噌汁に、レタス、トマト、タマゴを入れるだけ。テレビでは、最後に加えたタマゴの固さが気に入らず再調理する、という半端ないこだわりを見せていましたが、本誌コラムではタマゴについては「大好き」という一言だけ。丁寧に調理工程を写真で追っていますが、そこにスペースを割くなら、テレビで見せたタマゴ愛を披露して欲しかったです。さて、そんな「HERS」の今月のトピックを見ていきましょう。
<トピック>
◎「デニムスタイルは”もう50″がちょうどいい」
◎「浅野温子」の舞台裏
◎「お婆ちゃん」とは言わせない!? グランマのジレンマ
■飽きか悟りか
50代、と一口で言っても、”50代”に対する思いは人それぞれ。自分は「もう50」なのか「まだ50」なのか――。これは、男女問わず、どの年代に属していても誰もが思うこと。「もう●歳」と年齢を受け入れ落ち着くか、「まだ●歳」と冒険を続けるのか、その「まだ」と「もう」の間で揺れながら人は成長していくのです。
なんて語ってみましたが、萬田久子の今の気分は「もう50」だそうです。「まだ50」の気分はいろいろと遊び尽くしてしまったので、今度はシンプルカジュアルかな~って気分だそうですよ。インタビューでは、「53歳の今、いろいろなものを削ぎ落して、”シンプル”に立ち返ってみようかなと思うんです」と悟りのようなお言葉ですが、過去3年、「HERS」誌上で萬田久子が見せてきたコーディネートの一部を見ると、全身真っ赤なコーディネート、膝上20センチ以上のミニスカ、左右で柄の違うタイツなど、50歳という年齢を無視しても冒険し過ぎ・やり過ぎ感たっぷりで、見ているこちらはお腹いっぱい。やっている本人はきっとそれ以上にお腹いっぱいになってしまったんでしょう。
だからなのでしょうか、先月辺りから萬田久子は「シンプル」という言葉を頻繁に使っています。確かに、今まで何十年もさまざまなコーディネートを楽しみ、”オシャレキャリア”を積んできた人間からしたら、いろいろ組み合わせるコーディネートを「もういっか」と思っても致し方ありません。しかし、シンプルなスタイルは自分自身が映し出されてしまいます。体系はもちろん、それ以上にその人のセンスが露骨に出てしまいます。”オシャレキャリア”が長い「HERS」読者たちは、そぎ落とされたシンプルも長年のキャリアでカバーできるんでしょうが、いかんせん、そのキャリア=人生すらも素直に出るのがシンプルスタイル。
オシャレひとつとっても、人生を背負わないといけないとは……。今まで熱心にオシャレを研究し、身に着け、頑張ってきた人だけがたどり着ける境地、それが「HERS」の世界なのです。
■みんな知ってた?
先々月号のグラビアに登場して以来、3号連続で登場となる浅野温子。なぜかと思えば、6月号から「HERS」のレギュラーになっていたんです。バックナンバーを見返しましたが、「レギュラー」「仲間入り」なんて単語はどこにもなし。今回の浅野温子登場ページで、「レギュラー陣の仲間入りをした浅野温子さん」とさらりと紹介されているだけです。なにか、大々的に取り上げられない理由でもあるんですかね?
この、浅野温子投入は、萬田久子に次ぐ、”「HERS」の顔”候補かと思ったのですが、インタビューで「オフの日は外へ出る時もスッピンのまま」「洋服はあまり考えずにその日なんとなく着ているもの」と、オシャレに関心があるような素振りを微塵も見せません。萬田久子の自然体にはオシャレがマストですが、それとは逆ベクトルの自然体っぷりに、レギュラー入りした浅野温子が今後「HERS」においてどのようなポジションを確立していくのか興味津々です。
■こんなおばあちゃんはイヤだ!
特集「グランマのジレンマ」では、孫や娘・息子たちとの過ごし方をグランマたちが紹介しています。そこに掲載されている家族写真なんですが、登場するグランマたちが想像以上に若く見える! 特に、自分の娘と並んで映っている姿を見ると、冗談じゃなく「姉妹ですか?」と言ってしまいそうなぐらいなんです。それもそのはず、登場するほとんどのグランマは20代の内に結婚出産し、その娘or息子も同じく20代の内に結婚出産。あえてそういう家族を選んでいるのかどうかは知りませんが、いや本当、グランマたちの見た目の若さにびっくりです。これも「HERS」を愛読しているおかげでしょうか。
50歳を越えても美しくありたいと思う「HERS」読者は、孫がいようがいまいがオシャレのポリシーは曲げられない! 「たとえ孫が何人で来ても私のスタイルは変わりません」と、ショートパンツに高いヒールという強者が登場です。孫と近所の公園に遊びに行く時もそのスタイルだとか。他人だったら見て見ぬふりだけど、嫁だったらちょっと勘弁してほしい。公園で遊んでいるときに孫に何かあったら走って駆け付けることができるのか? と不安で面倒を見てもらうことを避けてしまいそうです。「HERS」のグランマモデルはこういった感じなのか? と一抹の不安を覚えましたが、「保育園にお迎えに行くときは、自分が転んだら大変だし、いざというとき走れるようにぺったんこ靴」という人もいてほっと胸をなでおろしました。孫ができたからオシャレをするな、とは言いませんが、せめていざという時、孫を助けられる最低限の恰好をしてほしいものです。
こういった人の登場を見るにつけて、つくづく「HERS」は現役から退くことを許してくれないんだな思いました。50代のファッション誌として誕生した「HERS」は、待ち望んでいた多くの女性の救世主になりましたが、反面、仕事も家事もひと段落し、そろそろ”現役の女”から引退して落ち着きたい思っていた女性に対しても「まだまだ現役でいなければいけない」とプレッシャーをかけることにもなっているんですよね。
先月・今月と、萬田久子の突飛なコーディネートが見られず、ちょっぴりさびしい思いをしていましたが、浅野温子新レギュラーというホットトピックもあり、またまた目が離せなくなりました! 来月予告に名前はありませんが、お披露目だけでフェードアウトってことにはならないですよね?
(エメラルド真希)
こちらも要チェケラ!
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