“無添加”、”オーガニック”に躍らされるな! ナチュラルコスメの曖昧さに迫る
エコ・ロハスブームは食品だけにとどまらず、ナチュラルコスメ、オーガニックコスメの人気が俄然高まっている。しかしそもそも、ナチュラルコスメって何? 安易に飛びついてよいの? そんな疑問を「真実のナチュラルコスメ読本」(毎日コミュニケーションズ)の著者であり、ブログ「アンチエイジングの鬼」で独自の情報を発信し続ける、勝田小百合氏にぶつけてみた。
――著書には、女性誌やコスメ誌では広告主への配慮から到底書かれることのない化粧品の弊害や、”なんちゃってナチュラルコスメ”の存在についても言及されていて、衝撃的でした。まず、ナチュラルコスメとは何でしょうか?
勝田小百合氏(以下、勝田) 実は、日本には明確な定義がなく曖昧です。ナチュラルコスメ”風”のマガイモノも多く流通しているのが事実。なので、本当に肌のことを考えたナチュラルコスメ情報を私なりに吟味してブログで発信してきました。興味を持ったのは19歳の時に母が使っていた石油系のクリームファンデを使用してひどくかぶれてしまってからです。
――ナチュラルコスメではなく、「ケミカルコスメ」にかぶれたのですか?
勝田 あまり大きな声では言えませんが、バリバリのケミカルコスメは海外高級ブランドの高機能コスメに多いですね。輸出先でもブランド力を失墜させないためには、高温の船底でも、トラックの中でも絶対に分離せず、腐らず、いつ使っても同じ感覚のコスメでなくてはならない。そのためには、防腐剤もたっぷり、合成界面活性剤(※後述)もおそらく3種類は必要なはず。つまり、安定性第一の「工業製品」として商品化しているわけです。それが嫌で、19歳の時以来ずっと、「無添加コスメ」一筋だったんですがが、2001年の法改正で、化粧品の全成分表示が義務化された際、2度目の転機が訪れました。
―― “無添加コスメ”に疑問を持った?
勝田 はい。無添加コスメは、基本的に「1:石油系の成分、2:パラベン(防腐剤の一種)、3:”103種類の表示指定成分”は使用不可」というメーカーの共通認識のもと、作られています。しかし、01年に薬事法が改正され「全成分表示」が義務づけられました。つまり、”パッケージでの全成分表示の義務化”と引き換えに、”表示指定成分”も全成分の中に紛れ込んでしまいました。新しい成分も、かなり導入しやすくなり、アレルギーも多様化しているので、こうした新成分が肌に合わない方もいます。旧指定成分の103種類だけ入っていないということに、もはや大きな意味はありません。
――特にどんな化学物質が気になりますか?
勝田 例えばパラベンフリーの条件をクリアするため、大量に投入されている合成ポリマー。また、水と油を混ぜる作用がある合成界面活性剤は、肌のバリア機能を破壊し、乾燥肌などの問題を引き起こす可能性が指摘されています。油がたっぷり入ったコスメを水で簡単に落とすことができるオイルクレンジングに至っては、全体の30%を合成界面活性剤が占めるような商品もあり、成分としてはキッチンの合成洗剤と大して変わらない。個人的には、無添加コスメを一概にナチュラルコスメと呼ぶには違和感がありますね。
――流行のオーガニックコスメはナチュラルコスメの一種ですか?
勝田 はい。オーガニックコスメの場合は、植物原料のほとんどが無農薬無化学肥料で育てられ、植物の持つ高い性質がコスメに活かされています。ただし、欧州の「オーガニック認定」のような基準は日本にはなく、成分をよくよく見てみると、原料の一部がオーガニックなだけで、他は石油系の成分だったりするアイテムも見受けられます。
――う~ん、怖い。でも、成分にこだわり始めると、どのコスメにも難点がありますよね。
勝田 確かに。全てこの調子でナチュラルコスメ全般を語ってしまうと、ほとんどがNGになっちゃう。合成界面活性剤でも、植物性由来で、少量ならばまだOKとか、海外ブランドのものなら防腐剤を多少使っても、酸化しているよりは良いとか、段階的で総合的な判断基準をもって、よりナチュラルコスメ指数が高い商品を選ぶという姿勢も必要でしょう。
――なるほど、現在ケミカルコスメを使っている人も、そんな方法ならナチュラルコスメにトライしやすそう。一方で、勝田さんが納得するナチュラルコスメがどんなものか、気になります。
勝田 植物や天然鉱物(ミネラル)など自然の力を利用し、石油由来のケミカル物質、合成防腐剤、タール色素、合成ポリマー・シリコーンオイル、そしてこれがかなり難しいのですが、たとえ植物性でも合成界面活性剤を一切使っていないモノですね。
――一方でナチュラルコスメが不得意なアイテムってあるんですか?
勝田 マスカラや日焼け止めなど、機能性が求められるものは、成分の追求がとても難しいですね。マスカラだけは私もケミカルのものを使っています。一般的な日焼け止めには、紫外線散乱剤(酸化チタン、酸化亜鉛)が入っていますが、個人的には安全性にまだ疑問がある。それなら! と決意して、酸化チタンや酸化亜鉛を一切使わず、紫外線の強い地域で育つ植物の「抗酸化力」を集結させた日焼け止めをアムリターラ(勝田氏のブランド)で開発しました。製造工場の方には「出せてSPF3が関の山」「せめて酸化亜鉛だけでも入れたら?」と説得されたのですが、SPF10を記録し非常に驚かれました。これが、植物のもつ実力の証明になれば、嬉しいです。
――最後に、昨今のナチュラルコスメブームについて思うことはありますか?
勝田 日本は経済成長と共に化学成分賛美、機能性を重視するため、こういったアイテムは一部の自然食品店に扱われる程度でした。だけど、大人アトピー、アレルギーの人が増加して、コスメの成分表示にも目が向くようになった。同時に、地球環境を大切にするエコやロハスな生き方が注目され、植物の持つ力のすごさが世界的にも再発見されるようになったことも大きい。そして東日本大震災、原発事故をきっかけに、自然に則した生活をしたいと思う人が増え、その傾向はより強まったと思います。政府や大企業は国民の安全性よりも経済やお金を優先することがあるのだという実態も、悲しいかな、見えてしまった。だけど、それを政府や企業のせいにするだけでなく、自分なりの知識や判断基準をもって行動することが大切で、これは、ナチュラルコスメブームに関しても言えることかと。消費者が求めなければ、企業が作るものだって変わりません。買い物は、私たちが日常的にできる投票行為だという意識を持つことが大切だと思います。
(取材・文=城リユア)
勝田小百合(かつた・さゆり)
1968年生まれ。カイロプロクター。ナチュラルカイロプラクティック院長を務める一方、ナチュラルコスメの追及に取り組み、ブログ「アンチエイジングの鬼」では独自のビューティー情報を発信。著作に「真実のナチュラルコスメ読本」(毎日コミュニケーションズ)、「アンチエイジングの鬼」(ワニブックス)などがある。2年半前に、自身の理想を突き詰めた国産オーガニックコスメブランド「amritara」(アムリターラ)を立ち上げ、今年6月には初の直営店「amritara HOUSE」を表参道にオープンし注目を集める。
読み応えアリ!
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