「リア充」=リアクション充実女子はモテる!? 「MORE」の果てない逡巡
今月の「MORE」、表紙は蒼井優ちゃんです。赤ちゃんのようなつるつるほっぺ、凛々しい眉、ギリギリのラインですっぴんと思わせる絶妙なメイクをどうぞご堪能ください。この計算し尽くされた計算の無さが、某人気アイドルグループのメンバーを、個性派俳優を次々と我が物にしていったのだと思うと感無量です。今月号のメイク企画「目ヂカラ5割増!コンプレックスぶっ飛びデカ目」が、なんだか虚しく感じちゃいますね。だって結局は「アオイ(蒼井&宮崎あおい)勝ち」の世の中ってこと。アラサー女子が少女のようなあどけなさを追い求めると、その後の人生に痛手を残しそうで心配。さっそく中身を見て参りましょう。
<トピックス>
◎人気スタイリストがAnswer!美人な毎日コーデを即マネ!
◎「使える」MOREコスメ大賞堂々発表!
◎世界一わかりやすい! 妊娠&出産学
■結局スタイル次第
「JJ」(光文社)の「おしゃP」をはじめとして、「一般人以上タレント未満」が局地的に人気を得るのが、この女性誌という世界。その中にあって「MORE」は、鈴木えみ、篠田麻里子、加藤夏希……抜群の知名度を誇る専属モデルを従え、嵐の二宮和也の連載、旬の女性のインタビューなど、その手の人たちの登場は限りなく少ない雑誌と思われます。が、しかし、今月は珍しく”フィーチャリングスタイリストさん”。3人の人気スタイリストが旬のオススメアイテムを紹介したり、着こなしのお悩み相談に答えたりと、いつになく出張っております。
モデルたちから「姉さん」と慕われるスタイリスト・井関かおりんは、自らがモデルとなって私服を披露。そのコーデをモデルたちがマネするという体で企画は進んでいきます。モデルとみまがうスタイルを誇るかおりんと言えども、モノホンのモデルさんたちと並ぶとさすがに見劣りします。親しみやすい、逆に言えばもっさりした「MORE」テイストのファッションは、モデルさんが着てこそ花ということを、計らずも証明してしまった形となりました。着る人を選ぶって、奇抜なファッションに限定されたことではございません。「MORE」のファッションページを見るにつけ、「これはアタイが着たら妊婦だな」とか「ババアの同窓会って言われるな」とその難しさを痛感するわけですよ。
と、そんな思いは筆者だけではないのだと、スタイリストの石上美津江さんに寄せられた読者からのお悩みを見て思いました。「スカーフがバブル風になります」「花柄って”おば見え”の危険大…」「白ワンピが大好きなのに、”妊婦さん”って言われちゃう」etc。さすがは、かゆいところに手が届く「MORE」。電車の中でさりげなく席を譲られちゃった貴女、どうぞご参考になさって下さい。
■蒼井優がもたらす、『リア充女子』とは?
さてお次は女の花道ばく進中の、蒼井優ちゃんのインタビューです。
「ここは、東京の下町・谷中。昭和の風情が残る町並みの中、木陰を探しながら坂道や路地を歩いて、レトロなカフェにたどり着いた。畳の上にぺたんと座って最愛のかき氷を口もとに運ぶ。くつろぎながらも背筋の伸びた佇まいや、鈴の音のような声は、まるで風鈴のよう…」
どうでしょう。これだけで取材の全容が明らかになるような、秀逸な書きだし。「下町、路地裏、レトロ、畳、ぺたん」この短い文章の中に蒼井優のパブリックイメージが全て詰めこまれているといっても過言ではありません。「MORE」お得意の”うっとり”インタビューも、ここまでくれば芸術。そして「人見知り、出会い、小泉今日子、成長、自分らしく」と、最近の若手女優お決まりの”KYON2讃唱”へと続きます。「今日子さんと一緒にいて、彼女の友達とも過ごすようになって、ああ、もっと人を信用してもいいんだと思えた」。個人的には、若手からカリスマに仕立てられて立ち位置がどんどんおかしくなっていくKYON2姐さんが心配です。
見どころは最後のパラグラフ「たくさんの人にモテようとすると、”自分”を曲げなくちゃならないから難しいけど、たったひとりに好かれるのはさほど難しいことじゃない気がする」というくだり。ほんわかの中にある、ハンターの眼差し。これぞ、蒼井優を「アオイ勝ち」(しつこい)たらしめる所以でありましょう。
そんなアオイズムに対する「MORE」的アンサーページと言えるのがコレ「男の本音Show『リア充』女子ならきっと人生、うまくいく♪」です。「リアルな生活が充実している…だけがリア充ではありません!今回は、男子が『ホレてまうやろ~』とひそかに絶賛している、名づけて”リアクション充実女子”をご紹介」とのこと。チュートリアルの徳井義実をスーパーバイザーに迎え、男性が喜ぶ女子のリアクションを徹底研究しています。
「重い荷物を持ってあげたら、上目遣いで『ありがとう!』って言ってくれた」「職場の女性社員と目が合ってしまった瞬間。彼女の『んっ?』って小首をかしげるリアクションにキュンとくる」「飲み会で女の子に『顔真っ赤だよ?』と言ったら、『え~酔っちゃったのかな?』とほっぺを両手で押さえる」などなど。でも、恥ずかしさを克服してこのリアクションを完璧にこなせたら、大森南朋と付き合えるかもしれない。それだけは、神様しか分からないですよね。
今月は全方位的に「痛女」を推奨していた「MORE」。つくづく「モテ」というものが分からなくなりました。いや、「MORE」の場合は「モテ」より「ぶりっ子」が近いかもしれません。不特定多数にモテたいのではなく、鰹の一本釣りのごとくターゲットを確実にゲットして結婚したい。そのためなら、多少の痛手(周囲からの嘲笑など)はお構いなし。年貢の納期が迫っている「MORE」娘たちの、そんながむしゃらぶりにエールを送りたくなる8月号でした。
(西澤千央)
アオイ勝ち……?
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