時代にマッチしてしまったタモリというキャラクターを考える
今回ツッコませていただくのは、最近のタモリ。
6月24日放送の『笑っていいとも!』(フジテレビ系)のテレフォンショッキングに河村隆一が出演し、自身のミュージカル『嵐が丘』の話で
(河村)「あまりミュージカルお好きじゃない?」
(タモリ)「全然好きじゃ……」
というやりとりがあった。そして最後の方で、わざわざ河村が「あの、タモリさんのお嫌いなミュージカル」と振った上で、「ヒースクリフ役として一節を歌う」+相手役「キャサリン」をタモリにやってもらうというサービス満点の挑発をしていた。だが、そんな河村隆一の歌に対し、タモリは感心し、「別人!」と賞賛しただけで、まったくノらない。河村隆一もやや落胆したのではないかと思うほどのスルーぶりである。
ご存じの通り、かつてはタモリにとって「名古屋=みゃあみゃあ」「ゴルフ」と並んで「ミュージカル」は、大嫌いなモノとしてやたらと噛みつく「三種の神器」のような存在だったはず。話題がミュージカルに及ぶと、「脈絡なく突然歌い出す意味が分からない」などと延々噛みついていたのに、今では「全然好きじゃない」とゆるく言う程度だ。
思えば、タモリも、タモリという人に対する世間の評価も、この10年~15年ぐらいで大きく変わったような気がする。
音楽に対する造詣の深さ、料理の腕前、「坂道」「古地図」などオタク的知識の豊富さなどが広く知られ、「趣味人」として多くの人に慕われ、尊敬されている近年のタモリ。さらに、性格的な面でも、「ユルさ」とか「適当さ」とか「自由さ」なんかがもてはやされる時代にピタリと合って、いまは全面的に”みんなに好かれる芸人”になっている。
『笑っていいとも!』や『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)での司会は、コージー冨田が替え玉でやっているのではないかと思うほど、その無関心・無気力ぶりが昔からよく知られているところ。だが、趣味の番組『タモリ倶楽部』(テレビ朝日系)や『ブラタモリ』(NHK)とのテンション・熱意のロコツな違いすらも、おそらく「正直者!」と好ましく世間に受け止められているように思う。
でも、古い話で恐縮だが、かつては「抱かれたくない男」などのアンケートで上位に入っていた時代もあった。さすがに年齢的に「抱かれたい・抱かれたくない」云々ではないだろうが、それでもちょっと残念なのは、昔に比べて毒が薄まり、意味不明な行動が減り、気持ち悪さがなくなっているところだ。
かつては『笑っていいとも!』でも、ゲストによっては激しく食ってかかる回があり、「嫌われてナンボ」な発言も多かった。「名古屋=みゃあみゃあ」発言を知らない若いファンも、今では多いだろう。かつては大嫌いで文句を言いまくっていたゴルフも、何もなかったように大好きになり、よもやの「ゴルフボール顔面直撃」による入院まで経験するというオチがついた。
嫌いなモノ・人がどんどんなくなって、「趣味」と「仕事」が合致する部分が増えている今のタモリは、完全に「好々爺」である。
ブリーフ一丁で「イグアナ」をやるタモリ、片岡鶴太郎と九官鳥「キューちゃん」のマネをしつこくやりまくり、周囲を困惑させていたタモリが、ちょっと懐かしい……。
(田幸和歌子)
あれ? 髪伸びた?
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