泣ける犬映画はもう飽きた!? 小日向文世×”笑う犬”激突ハートフルコメディー
『星守る犬』『ロック~わんこの島~』など、ここ最近”泣ける”犬映画が続けて公開されている。犬を飼っている友人と見に行ったところ、用意していたハンカチを握りしめ、ボロボロ泣いていた。犬どころか金魚すら飼ったことのない筆者は涙がうるっとくることもない。そんな自分がものすごく冷徹な人間に感じられ、いたたまれない気持ちになった。
冷血な自分から脱出を図るため、共感できそうな犬の話はないかと思い、手を出したのが文庫版『犬飼さんちの犬』(竹書房)シリーズ。主人公・犬飼保はスーパーに勤めるごく普通のやや冴えないサラリーマン。犬飼という名字のくせに、犬が大嫌い。離島に単身赴任していたが、休暇を取り家族が暮らすマイホームへ帰ってきた。すると、そこには家族が内緒で飼っていたサモエド犬・サモンがいた。家族やサモンとどうにかコミュニケーションをとろうと悪戦苦闘する犬飼の姿を描いた、心温まる脱力系コメディーだ。
犬はかわいいもの、そして犬を飼っている人は”良い人”だという神話をこの物語は簡単に覆す。犬飼が単身赴任している離島には、犬をたくさん飼っている通称「犬屋敷」に居座る偏屈老人がいる。悪臭や凶暴な鳴き声、ゴミの喰い散らかしなど近隣に大迷惑をかけているが、この飼い主はお構いなし。それどころか犬が皮膚病になっていても予防接種も受けさせないし、犬飼が犬嫌いなことを知っていて、わざと飼い犬をけしかけて笑っているような、ねじ曲がった性格だ。ナゼこの老人がたくさんの犬を飼い続けるのか? それは犬を飼うことで自分の”居場所”を確保しているのだ。自分がいないと生き続けることができない犬たちがいる、彼らを飼うことが自分の存在意義になり、彼らとともに暮らす日々が”居場所”になる。
はじめはサモンに家族という”居場所”を奪われたと感じる犬飼だが、いつの間にかサモン自身が自分の”居場所”になっていることに気が付く。すると、働くことも、結婚することも、子どもを産むことも、すべては自分の”居場所”を確保するため……”居場所”づくりそのものが人間の生きる原点なのかもしれない……な~んて深く考えさせられた物語だった。
『犬飼さんちの犬(上・下)』は既にドラマ化されていて、その続編『その後の犬飼さんちの犬』を含めた3冊の文庫版を原作にした映画『犬飼さんちの犬』は明日6月25日からロードショー。主演は味のあるバイプレーヤー・小日向文世さん。なついてくれない飼い犬にあたふたするコミカルな姿が、映画を見る前から想像できる。泣ける犬映画はもう見飽きてしまったという人も、犬嫌いな人も、正面から見ると笑っているように見える!? とネット上で早くも話題のサモエド犬・サモンに、心を癒やしてもらってはいかがだろう。文庫版を読み込めば読み込むほど……その時間こそがアナタの “居場所”になるかもしれない。
わふわふしてるッ!
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