「クレジットの削除を」、『ハガネの女』原作者がドラマ側に異例の苦言
今月16日まで放送されていた女優・吉瀬美智子主演の人気ドラマ『ハガネの女』(テレビ朝日系)。モデルから一躍人気女優となった吉瀬にとっては連続ドラマ単独初主演作ということで、昨年金曜ナイトドラマ枠で放送された「season1」の好評を受けて、今年4月から「season2」がスタートした。
今シーズンでは、不法滞在外国人の子どもへの差別問題、アスペルガー症候群の生徒を題材に取り上げるなど、シビアな内容で物語が展開。深夜枠の前作に比べ、視聴率こそ平均7.3%と伸び悩んだものの、問題と真剣に立ち向かっていく吉瀬演じる「ハガネの女」の姿は好評を得ていた。
ところが、多くの要望に応える形でスタートした「season2」も、裏では思わぬトラブルが起きていた。ドラマの原作者であるマンガ家の深谷かほる氏は自身のHPで、
「私、深谷かほるは ドラマ『ハガネの女 シーズン2』の内容に対しての意思表明として、
1)原作者を降り、クレジットを削除していただきました。
2)DVDを含むビデオグラム化、モバイル配信、インターネット配信についても反対しております」
と発表。とはいえ、ファンとの交流をはかる掲示板には「○○さん(投稿者)のおっしゃる通り、出演者も、制作スタッフも一所懸命自分の持ち場は輝かせてくれていただけに、別な部分で問題が起きるのを防げなかったことは、私は自分の力のなさが悔しいです」と制作者・出演者側への配慮も見せていた。
この衝撃的な降板劇、どうやら今シーズンで取り上げたアスペルガー症候群の生徒をめぐるストーリー展開が原因のようだ。
先の掲示板には、以前から視聴者より「アスペルガーの子どもを転校させるか否かを生徒たちの多数決で決めた」というドラマの内容について、「いくらフィクションとはいえ酷すぎました」「障害があろうとなかろうと、人の存在を多数決で決めるなんて話、傲慢にもほどがあります」との意見が寄せられていた。
これに対して深谷氏は「私が書いたのではありません。おっしゃるとおりだと思います」などと回答。今シーズンに関しては完全にテレビのオリジナル脚本で、深谷氏も内容に関してテレビ局サイドに「何とかならないか」と要望を出していたほどで、ついには「原作者である私自身、許しがたい内容がたくさん含まれたドラマでした」と怒りを顕にしていた。放送倫理・番組向上機構(BPO)のサイトにも、同ドラマについて視聴者からの意見として「あまりにも差別がひどい」などと言った批判の声が挙がっているという。
深谷氏は、即座に原作を降りてしまうと、2~3割程度は通してもらっていた脚本に関する要望も、今後は一切受け入れてもらえなくなることを危惧し、ギリギリまで「原作・深谷かほる」のクレジットは残していたそうだ。そして最終回の放送分で、ついにクレジットを外すことになったという。原作者が映像化した作品に苦言を呈することはままあることだが、ここまでの内容は珍しい。
深谷氏の掲示板を見ると、ドラマに対して好意的な意見も多く「次回作もほんとにほんとにやってほしいです」という声も上がっていたが、深谷氏は次回作について「私にも分かりません。映像化については、その仕事の進め方やルールがよくわからないんです」とこぼすなど、マンガや小説を映像化する場合の問題点が浮き彫りになった形だ。今や、原作ありのドラマ・映画作品は主流となっているが、原作者の関わり方など明確化されなければ、このような騒動は後を絶たないのかもしれない。
こちらは秀作との声高し
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