視聴者がツッコミ役? 『極める! 田中卓志の紅茶学』の正しい鑑賞法
タイトルだけで、なんかもう面白い。『極める! 田中卓志の紅茶学』(NHK)。
アンガールズ・田中卓志が、大好きな紅茶についての知識をあれこれ学んでいくという、6月6日からスタートしたEテレの教養番組。いくつかの番組で紅茶に凝っていることを語り、「気持ち悪~い」というギャップで笑いをとっている場面を何回か見たが、一気にNHKまでいっちゃうとは。Eテレが全力で笑いをとりにきたのか、”紅茶タレント”として正面からマジメにオファーしたのか。番組コンセプトは、<こだわりのモノ・ヒト・コトを持つ著名人が、自らそれを極める旅に出発し、その道の達人を徹底調査、おのれのこだわりを磨き、オリジナルの「学問」を作り出す番組>(番組HPより)だそう。「紅茶を愛してやまない田中卓志さん」という、至極当たり前のナレーションだけで面白く感じてしまうのは、きっと頭の中に「田中なのに」的な思いがあるからだ。もしかして、そこが狙いか?
とにかく4週にわたって田中が紅茶について学んでいき、最終的には本場イギリスのアフタヌーンティーの楽しみ方まで習得する域に到達するという。6日放送の初回は、英王立化学協会が検証して発表した「How to make a Perfect Cup of Tea」(一杯の完ぺきな紅茶の入れ方)に沿って、科学的根拠を検証しながら、究極のミルクティーの入れ方を紅茶研究家に学んでいくというもの。この仰々しいまでの「たかが紅茶」ではないっぷりは、さすがイギリスだ。なんでも150年にわたって、ミルクが先か紅茶が先かという、入れる順番についての論争が続けられてきたんだそう。
その協会による正しい入れ方は、「やかんのお湯が沸くのと同時に、加熱したポットからお湯を空けているように行動を同期させる」だの「熱すぎる紅茶を飲むことで起こり得る下品な飲み方を避けるため60℃から65℃で飲む」だのといった調子の言い回しがまた、さすが「王立」といった感じでおかしい。
さて『アメトーーク』(テレビ朝日系)の「お酒飲めない芸人」の回でも、お酒が飲めないことを語っていた田中。「休みの日には、愛用の紅茶セットで友人をよくもてなす」ということだが、田中に紅茶でもてなされている仲間たちの図や、「田中愛用の紅茶セット」について考えると、これもおかしい。この紅茶の知識は基本的には本を読んだりしながらの独学だそうで、「これが正解なのかどうかもいまいち分からない」と言うことからも、仕事を超えた意欲にあふれる感じがどこかある。
それゆえか、番組内でもいつもとノリが違う。
「先に入れた方がキッと抜けてたかなという感じはしますね」
「スッキリしてておいしいです」
「本当にヌケがいいですね」
いちいちコメントがキマっていて、表情もいつもよりキリッとカッコいい風だ。いつもみたいに「な~んで~」とかやらず、先生の話に「なるほど」とうなずくのもまた、キリッとしてる。さらに、入れた紅茶を目を閉じてじっくりとうっとりと味わう田中のアップ。相づちも味わいも、ごく当たり前のことなのに、やっぱり面白い。
昨年に同じ番組でやっていた「友近の温泉学」を見た時にも感じたのだが、高度なコントを見せられているんじゃなかろうか。ツッコミ不在のシチュエーションコントのような。例えば、田中がキリッとしたり、うっとり味わう映像にスタッフの笑い声をかぶせてみたら、「ああそういうことか」と、どこか安心して見られそうだ。番組の求める本質とは全く別物になりますが。
友近がバスタオル巻いて温泉でうっとりすることに対し、視聴者が茶の間でツッコむ。田中が「ヌケがいい」とかコメントすればまた、茶の間で「キモ~い」と言ったり、ツッコんだりする。ある意味での双方向コントか、さすがNHK。
田中も番組に意欲的なようで「さらなる高みを目指します」とのこと、さらにレベルの高い笑いに期待したい。って全然違うか。
(太田サトル)
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