「VERY」の細部ににじみ出る、お受験ママのファッションと受験校のヒエラルキー
先月号の「VERY」のレビューでもご紹介した通り、「VERY」「STORY」など光文社の主要女性誌が震災後に読み応えのある、丁寧なコラムや座談会などを作っています。今月号の「VERY」でも、政井マヤ、小島慶子、堂珍敦子、立教新座中学・高等学校の渡辺憲司校長による座談会「『母親としての覚悟』の持ち方」が掲載されています。他社の女性誌でもちらほらと「節電」「放射能」などの言葉が躍る企画はありますが、震災後に母として、女としてどう生きるかという問題に正面からがっぷり四つで向き合えるのは、これまで読者と多くのものを共有してきた光文社だからこそ。
「セグメント」と言ってしまえばそれまでですが、夫の社会的立場、ライフスタイル、世帯所得といった分かりやすいものから、「他人からの羨望と、見得のギリギリのバランスで生きる苦しさ」「お受験で味わう孤独感」「若さへの嫉妬と老いへの恐怖」といった精神的なところまでフォローし(時にはとんでもないことを提案しつつ)、寄り添ってきた雑誌だからこそ、正念場で読者をひきつける求心力を発揮するのだと思いました。「GLAMOROUS」(講談社)や「InRed」(宝島社)はどちらも既婚・未婚を問わない雑誌がゆえに、「VERY」「STORY」のような求心力は持っていないように感じます。導入はマジメになってしまいましたが、今月の「VERY」もその求心力を遺憾なく発揮したつくり(反面、部外者を置いてきぼりにする)ですので、細かく見ていきましょう。
<トピック>
◎タンクトップ攻略で、脇汗知らずの夏レイヤードスタイル
◎ランチロールアップをマスターせよ
◎真夏の学校説明会で”袖ありワンピ解禁!”
■脇汗と裾の1ミリにこだわる怖さ
今月号の「VERY」には、”細部にこそ神が宿ってる”状態です。まず、「あなたのワキ汗をどうにかして」というファックスを自ら読み上げたNHKの有働由美子アナにおススメしたい、「タンクトップ攻略で、脇汗知らずの夏レイヤードスタイル」という企画があります。以前の「Domani」(小学館)でもそうだったように、白のタンクトップというものは、掲載するすべてのものをオシャレに見せなければならない女性誌の天敵! ただ並べて写真に撮るだけでは山下清状態になってしまいます。そこで、「VERY」が取った手段は、タンクトップの物撮りと、それをインナーに着た状態のモデルの全身カット。これで、脱・山下清は成功しています!
そして、「ランチロールアップをマスターせよ」ではカーゴパンツや今年はやりのチノパンのまくり方を提案するだけで4ページも使ってます! しかもリードには「ランチに行けるスタイリッシュさを手に入れるテクニックをマスターしましょう」という一文が!! 「やだ、ママ友とランチにいくからパンツの裾をまくんなきゃ!」という女性が世の中にそうそういるとは思えませんが、「VERY」が言うから間違いないんでしょう。しかも「スリムカーゴの夏シルエットを作る技」「ボーイフレンドチノをこなれて見せる技」は、やり方が全く違うのに、最終的な見え方は一緒。1ミリの裾に神経をとがらせる「「VERY」信者に、「世界はもっと広いのよ」と言いたくなる企画でした。
■規律を美徳とする、M体質?
そして、お受験ママ必見! 学校説明会ファッションに異変が起きているようです。「真夏の学校説明会で”袖ありワンピ解禁!”」というページでは、先輩ママが「お受験スーツを着てなくたって大丈夫!」というためだけの対談まで仕込まれています。それなのに、「私も暑さ対策に胸元が少しあいたFOXEYのフレンチスリーブのワンピにしましたが、あくまで説明会なので涼しさを優先しつつ、きちんと感を忘れないようにしました」と先輩ママがやんわり注意を促しています。ほかにも、「娘の学校はカトリックなので説明会でのワンピ率はほぼ100%」という先輩ママの発言があったのですが、なぜカトリックはワンピ率100%なのかは一切書かれておりません。きっと、筆者をはじめとする非お受験ママには「ぽかーん」ですが、カトリック系のお受験を狙っているママには常識なんでしょう。
ただ、このワンピースページは見ているだけで勉強になります。志望校タイプ別に紹介されていますが、「カトリック系女子校」「リベラル系共学」は基本的に黒や紺でデザインの”遊び”も少ないのですが、「自由度の高い国立校」はベージュやパステルカラーも登場。なにか規律の厳しさと、受験校としてのヒエラルキーの高さが比例しているようで興味深い。どこかの偉い先生、「お受験ママの狂気と受験校偏差値」という本でも出してみてはいかがですか? 絶対売れると思いますよ。
■共感率1%の奇跡
そして、今月号の「VERY」で一番部外者を置いてきぼりにしたのは、「肉体改造成功例 ママだって細マッチョ!!」のページにありました。昨今の「ただやせてるだけじゃダメ、筋肉もなきゃ!!」ブームに乗った企画で、子育てや家事の合間にストレッチやエクササイズをすることでやせた読者の体験談なのですが、そこに見逃せない一言が!!
「英陸軍経験のある夫に教わった腹筋で、割れたお腹を10年キープ」
一般的にはどのぐらいの人が共感してくれるのでしょうか。それでも「VERY」は外国人との婚姻率がほかの雑誌の読者より多いから、1人ぐらいは誌面を見ながら「分かる~」とうなずいているんでしょう。あとはビリー隊長(古っ)の嫁とかかしら? でもなあ、彼は米軍だしな~。
今月はほかにも「イケダン候補者たちのON/OFFファッションチェック」という企画がございまして、計23人のイケダンたちが仕事着と私服を公開しています。みなさん、私服から持ち物まで1ミリの狂いもなくイケダンでいらっしゃって、筆者にこういうダンナがいたら「自分もちゃんとしなきゃ」という強迫概念と、「この人はちゃんとしているのに、自分といったら」という自己嫌悪と、「こんな完璧なダンナはいるはずないから、奇妙な性癖があって、きっと変な風俗に通っているに違いない」という猜疑心で、脇汗じゃーじゃー流れてると思います。あ、そっか。だから、「タンクトップ攻略で、脇汗知らずの夏レイヤードスタイル」で脇汗を隠せってことですね。
(小島かほり)
「VERY」公式HPでは「イケダンコンテスト」開催中
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