カルチャー
[女性誌速攻レビュー]「Domani」6月号

ただ歩いても「いい女通勤」! 「Domani」の盛大な「いい女」マジック

2011/05/05 16:00
「Domani」6月号(小学館)

 先月号のレビューでご案内した通り、今月の「Domani」は「白」特集です。表紙には「女には『白』しかできないことがある!」という勇ましい文字が躍っていますが、筆者30年あまり女をやっておりますが、”白しかできないこと”が分からずに、のっけから困惑しています。このレビューを最後まで破たんせずにお届けできるか分かりませんが、表紙から読み取るに今月号は「白」「いい女」「美脚」がテーマのようです。それでは、今月も「Domani」というワンダーランドへ飛び込んでみましょう。

<トピック>
◎大人の女の「白」って、なんですか?
◎時代を超えて愛したい…MY”白”名品図鑑
◎「美脚のためならどこまでも!」な1か月コーディネート

■女性誌最強の敵が登場

 それでは今月の大特集「大人の女の『白』って、なんですか?」っていう特集名こそ何ですか?って疑問を持ちながら読んでみましょう。「”いい女ホワイトデニム”でハイパー着回しマラソン」なんて得体の知れない企画ばかりが並んでいますが、白特集の読むべきところは2カ所。

 まずは「時代を超えて愛したい…MY”白”名品図鑑」です。ファッションディレクターやらバイヤーやらプレスやら、「おしゃれプロ」がご自慢の「白アイテム」を紹介しています。えっらい高そうなバッグやローファーが並ぶ中に紛れているのが、白のタンクトップ。「ジェームス・パース」のものらしいんですが、あまりにも「裸の大将」のソレみたいなんで、目が釘付けになってしまいました。「Domani」という一流雑誌の、一流カメラマンによっても、どうしてもオシャレに映らない白タンクトップ。物撮りでもそれなりに気を使っているはずなのに、どうしても「う、う、うまいんだな」と言いながらおむすびを貪る芦屋雁之助しか思わせない、最強アイテム・白タンクトップ。これはファッション雑誌編集者の最大の敵だと確信しました。「うちは白のタンクトップをこんなにオシャレに撮りましたよ!」という女性誌関係者の方がいらしたら、ぜひご一報ください。

 もう1カ所は、正確にいえば「白特集」のページではございません。読み物ページ「Domani Journal」の尾木直樹さんこと、尾木ママのファッションです。東日本大震災現状、風評被害、福島第一原発の対策と話自体はとっても真面目で、確かに今、日本が向き合わなくてはいけない問題を提起しています。なのに! 尾木ママのファッションは、白特集と呼応するかのような白ストール&白パンツ&白ローファー。そんでもって、幼稚園児が徒競争で行うスタンディングスタートのようなポーズ&ギュッと堅く閉じられた握りこぶし。なんで? なんで尾木ママにこんな(似合わない)ファッションとポーズをさせるんだろうと30分ほど悩んでしまいました。中身はとってもいい話なだけに残念。

■恐るべし美脚マニア

 今月号のもう一つの柱・美脚については、「『美脚のためならどこまでも!』な1か月コーディネート」という企画で見てみましょう。よくある着回しコーデ企画だと思ったら大間違い! 今回の主人公は広告デザイン会社勤務の35歳というところまでOKなんですが、次の一文が!「趣味は『美脚』と言い切るほどのマニアで、衣食住のすべてを”美脚基準”で考えるほど」って、どこにいったらそんな人に出会えるんでしょうか。しかも、その私生活が面白いんです。

「セルフタンニングの引き締め効果を味方にいい女通勤を開始」
→脚になんか塗って、ただ高めのヒールで歩いているだけなのに、いい女通勤という謎。

「エレベーターに乗ろうとする後輩を”階段で行くよ!”と一喝」
→自分の脚痩せをなぜ他人にまで強要するのか意味不明。しかもいい先輩ヅラで。

「テレビ通販で話題のレッグマジックXがやっと届いた」
→この商品は4~5年前から売ってるんですが、マニアなのにいま買ったの?

 この「美脚」と「着回し」という両立は難しかったようで、上記のように読むほどに不思議な雰囲気が漂ってくるのですが、いかんせんコーディネートとモデルが「いい女」風で、ぱっと見はまともに見えないから、恐ろしい。女性誌のトラップには気を付けて!

 というわけで、今月もふんだんにお金をかけた”バカ騒ぎ”を見せてくれた「Domani」。冷静に見れば同誌だけでなく、女性誌そのものが毎月”バカ騒ぎ”を送り出すマシーンだということに気がつくのですが、「いい女」だの「美脚」だの「痩せて見える」だの言われると、読者も冷静な判断を失ってしまうから不思議です。だって冷静だったら、白特集にいくら何でも「初めての『歯のホワイトニング』」っていう記事が入っていることを見逃せないと思うんです。っていうか、こうなると作り手の方が冷静さを失っているとしか思えないけど。
(小島かほり)

「Domani」

「働くいい女」って書いてある雑誌を買う方が勇気いるわ~


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最終更新:2011/05/05 16:00
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