謝意広告が掲載されなくても、民間レベルの”善意”が続く日本と台湾
東日本大震災で未曾有の被害を受けた日本を少しでも助けたいと、震災直後から義援・支援活動を続けている台湾。台湾の王金平立法院長(国会議長)は20日に義援金が142億円を超えたと発表しており、その額は今も増え続けている。
日本政府は、震災から1カ月経った4月11日に、海外6カ国7紙の新聞に「震災支援を感謝する」広告を掲載したが、多額の義援金を集めた台湾の新聞には掲載されなかった。このことを受けて、日本人女性がTwitterで「謝謝台湾計画」を立ち上げ、その経緯は台湾でも報道されている。
「台湾の2ちゃんねる」とも言われる掲示板「PTT」などでは、少し前から「2ちゃんねる」に書かれた台湾への感謝の声などが紹介され、「感謝してほしくてやっているわけではない。でも実際にこういう書き込みを見ると、うれしくなる」「自分はお金がない学生だから、50元しか出せなかった。ありがとうと言われる資格はないけれど、とてもうれしい」と、ユーザーたちが書き込んでいた。
有志がお金を出し合い、台湾の大手新聞に日本人からの感謝広告を掲載しようという「謝謝台湾計画」に対しても、「PTT」ユーザーたちからは、「うわべだけでなく、政治的な意図もない、真の感謝だ。日本人と台湾人の真の友情が生まれた」と称賛する声が多く上がっている。
日本政府は「菅直人総理が台湾の総統に向けて感謝を表明した」と説明しているが、台湾政府も「菅直人首相と日本交流協会(領事館・大使館にあたる)の今井正代表から、馬英九総統、呉敦義行政院長、外交部長あてに、心のこもった感謝状が贈られた」と発表し、もう十分に謝意は示してもらったと伝えた。
日本が台湾に「謝意」広告を出さなったのは、日本が中国に配慮したとの見解が広がっているが、台湾も中国との政治的な関係についてはあまり触れてほしくない部分であり、日本政府の今回の対応を非難する声は上がっていない。ニュースサイトにも「震災からまだ1カ月しかたっていない。感謝してくれたかなんてことよりも、これから我々が何をできるかが大切だと思う」「謝意が、我々の新聞に掲載されないことなど重要ではない。気にしていない」というコメントが寄せられている。
なお、今回の台湾から多くの支援・義援を受けたことに関して、親台議員として知られる中津川博郷議員が、「台湾のみなさまがたに、心から御礼申し上げます。ありがとうございます。日本の政府を代表して」と感謝の意を述べていることがニュースで流れており、台湾では、日本政府からはきちんとしたお礼をもらっていると受け止めているようだ。
4月14日には日本の大手旅行会社H.I.S.が、読売新聞に「ありがとう。台湾の皆さん。」という見出しの大きな広告を掲載したことも、台湾では大々的に報じられた。この広告のサブタイトルは、「世界の国々や地域の方々に感謝の気持ちを」で、内容は世界中の子どもから大人まで多くの人々が日本を支援してくれている、私たちも彼らの国を訪れて観光という形でお礼をしよう、そして日本も元気を取り戻していこう、というもの。最後に「今回の震災に対して、台湾の方々から支援していただいている様々なこと」と、一覧表が掲載され、その下の広告欄にいくつかの台湾旅行パッケージツアーが紹介されていた。
この広告を、台湾では「中央日報」をはじめとする大手メディアが報道。「台湾に感謝するだけでなく、台湾を旅行しようと呼び掛けてくれている」と伝えた。中央日報は、アメリカの「トモダチ作戦」や世界で最も貧しい国の一つであるアフガニスタンからの支援など、多くの国々が日本の震災に対して手を差し伸べていると前置きした上で、「しかし、日本が一番驚いているのは台湾からの支援のようだ」と言及。多くの日本人が台湾人の気持ちを受け止めていると報じた。
その約1週間後、この報道を裏づけるようなニュースが流れた。20日から22日まで開催されていた「台北國際安全博覽會」を訪れたネットユーザーが、同博覧会に出展していた某日本企業の社員たちが、台湾人に感謝するメッセージが書かれたTシャツを着ていたと、掲示板「PTT」に写真とともに紹介したのだ。
背中側に中国語で「日本国民を支援してくれた、台湾人のみなさまに、心より感謝します、ありがとう」という文章と、日本と台湾の旗がプリントされているこのTシャツを見た「PTT」ユーザーたちは、「感謝してもらいたいわけではないが、実際にこういうメッセージを見ると胸が熱くなる」「日本人と台湾人の絆が一層深まった」などと称賛。
ネットでの反響を受けて、大手メディアでもこのことが報道された。「自由時報」は、このTシャツを作って着ようと提案したのは、社長の男性だと伝え、男性の「台湾には何度も仕事で来ているので、台湾の人がどれだけ親切なのかはずっと前から知っていますよ」「ただ、今回の震災では本当に多くの台湾の人が支援してくれたので、それを伝えたかっただけです」というコメントも紹介した。
台湾は日本の震災による経済的打撃を大きく受けており、放射能汚染に関する被害も受けている。台湾第二の都市・高雄では、魚の売れ行きが落ちて値段も下がり続けており、漁師たちが頭を悩ませていると報じられている。しかし、日本を非難したり攻撃する発言は出ていない。
先日、米「TIME」誌恒例の特集「世界で最も 影響力のある100人」が発表されたが、その中に、台湾佛教慈済基金会の代表・證嚴法師が選出されていた。73歳になる證嚴法師は、国内外で震災が起こると、すぐに支援行動を起こすリーダーとしても知られており、今回の日本の震災でもいち早く立ち上がっている。
台湾佛教慈済基金会の日本支援活動は、震災から1カ月以上たった今も続いている。そして、ネットでは「復興に向けて動き出した日本に、私たちは何ができるのか」という議論が交わされている。台湾からの温かい励ましは、今後もまだまだ続きそうだ。
止められても行くもんね! 食いつくすよ!
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