放射能汚染MAPを作成した「女性自身」と、情報制限する原子力安全委
下世話、醜聞、スキャンダル――。長く女性の”欲望”に応えてきた女性週刊誌を、伝説のスキャンダル雑誌「噂の真相」の元デスク神林広恵が、ぶった斬る!
第72回(4/14~4/19発売号より)
原子力安全委員の専門家が、原発事故から1カ月以上経って、やっと福島入りをした。「一定の安定を見て」の現地入り。おいおい! 「安全、安全」なんて多くの原発専門家が言ってるけど、やっぱり「安全」じゃなかったってことではないのか。だから奴らの発言は信用できん。
1位「中居正広『極秘炊き出し』に原発難民2度目の涙」(「女性セブン」4月28日号)
2位「政府 原子力安全委員会が作成していた『1年後の放射能汚染MAP』」(「女性自身」5月3日号)
3位「放射能でスクール長期休校も 静香『気にしない』で娘と”お花見”」(「週刊女性」5月3日号)
収束を見ない原発事故同様、世の中まだまだ震災&放射能の話題から脱却できない。もちろん女性週刊誌も。だから芸能ネタの多くも”震災ネタ”だ。日常は遠い。はぁーー。
多くの芸能人が義援金や炊き出しボランティアを行い、メディアでも取り上げられている。ソフトバンク孫正義社長の100億円義援金には驚いたが、石原軍団の大規模炊き出しにも驚いた。まるでお祭り会場の屋台のようだった。さすが、いろんなものを”持っている”。巨大なトラックやお釜や発電装置――。
ジャニーズも今回は頑張っている。突っ込みどころが見つからないほどに。それでもって中居クンがプライベートで極秘炊き出しだって。突っ込めない。やりにくい。
ひとまず、その内容だ。福島原発から60キロ離れたとある避難所で、中居クンが身分を隠して炊き出しをした。中居クンは炊き出しが終了後、身分を明かし避難者を激励したという。さらにマッサージチェアやらゲーム。おもちゃなどをプレゼントした。立派!
だが、なんだか変な記事なのだ。なぜか避難所の詳細が触れられていない。福島原発から約60キロというだけだ。コメントをする避難所になっている学校の教頭先生も、被災者も全員匿名。なぜ? 詳細を明らかにできない理由があるのか? 本当に中居クンは炊き出しをしたのか? さまざまな疑問がよぎる記事なのである。いや、やめよう。中居クンは実際炊き出しをしたと思う。おそらく中居クンから口止めされたのに、誰かがマスコミにチクってしまったため、良心の呵責を覚えたとも解釈できる――。って、これが「週刊女性」や「週刊文春」だったらそんな解釈も可能だが、この記事はジャニーズと関係が良好な「セブン」だ。
そもそも極秘というからには誰にも知られてはいけない。本当に極秘にしたかったら、ジャニーズお得意の圧力を駆使してでも、この記事を潰すべきだった。なぜ極秘なのに仲良し「セブン」に書くことを許した! やっぱり巧妙なイメージ戦略か。
原発事故勃発以降、「女性自身」はイカしてる。今回は4月10日に行われた、第22回原子力安全委員会の資料を入手、その詳細を伝えているのだがかなり衝撃的だ。
10日の委員会で「子どもの被曝は1年間で10ミリシーベルト以内が望ましい」という新たな見解が示された。大手マスコミもこの”見解”を報じたが、”ただ報じた”だけ。設定されたこの数値の意味を”論評”はしていない。しかし「自身」記事によれば、この数値に当たる地域を避難対象にすると、現在の退避指示人口の3倍になるという。また「大人は年間20ミリシーベルトまで」というが、これは「国際基準で”安全”とされているのは年間1ミリシーベルト」であることから、「通常の20倍もがんになる可能性」を受け入れろ、ということだという。子どもでも「10倍」のがんを許容しろってか、ふざけるな。
さらに、委員会では、今後1年間にどの地域にどのくらいの総量が拡散するか”数値”で予測しているのだが、「自身」ではその数値をもとに独自に地図を作成している。委員会の訳の分からない数値を見るより一目瞭然! すばらしい! そして恐ろしい。こうしたMAPは本来、政府や安全委員会が公表すべきなのに、なぜしない? わざと難しい数値だけ羅列して、国民をだまそうとしているのでは、とますます疑心暗鬼にもなるのだ。だからこそ、「自身」が作成したMAPの意義は大きい。
政府、東電、保安院、安全委員はふざけている。そしてそれを報じるマスコミも。安全委員会に先立つ4月6日、枝野官房長官は「年間被曝限度量の大幅引き上げ」の検討を発表した。この発表の通り、安全委員会はこれまでの1ミリシーベルトから20ミリシーベルトへと大幅に上げたにもかかわらず、「安全」という一言で終わらせている。2,000枚にも及ぶ拡散試算図を作っておきながら、公表したのは2枚きり。いろいろな言い訳を使って公表を拒んでいるのだ。まったく信用ならない。
国が信用できないから、国民の行動もまちまちだ。だから芸能人の対応もまちまち。工藤静香が娘2人を連れてお花見をしたらしい。3人はマスクをすることもなく、楽しんでいたという。お花見だけでなく、娘の通うインターナショナルスクールが放射線の影響で2カ月間お休みになったため、子どもを連れて都内の観光めぐりもしているのだとか。
記事の論調は「放射能を気にしない静香は偉い」「さすが肝っ玉が据わっている」と一貫して静香の行動を称えている。それってどうなの? 海老蔵夫妻のように西へ逃げると批判され、放射線を恐れない静香のお花見が美談になる。どちらにしても、誰かに批判されたり褒められたりすることじゃないと思うのだが……。
『Shizuka Kudo 20th Anniversary the Best』
言ってくれれば、デコトラで花見に駆けつけたのに!!
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