「ナベプロ王国」を打破し、現在の芸能界の礎を築いた番組
「UFO」「サウスポー」などの大ヒットで、スペースシャトルより速く芸能界を駆け抜け、たった4年7カ月で解散してしまったピンクレディーが、30年の時を経て、解散した3月31日に復活した。ここ数年、K-POPなどに押され、新しいものを生み出すことが出来なくなっていたかのような日本の歌謡界には、リメイクや再結成、復帰という言葉が並ぶようになっている。たしかに懐かしいが、音楽業界が前に進んでいない印象を持つのは私だけだろうか。
そんな中、究極のDVD、CDセットが発売された。日本テレビが、日曜午前11時から放送していた番組『スター誕生!』の懐かしい映像と、この番組から生まれたアーティストのデビュー曲をまとめた『スター誕生!CD&DVD-BOX』だ。70年代から80年代にかけ12年間、619回続いた番組は、森昌子、山口百恵、桜田淳子、ピンクレディー、岩崎宏美、小泉今日子、中森明菜など数多くのスター歌手を輩出した。この番組で芸能界入りした88人のデビュー前の貴重な映像や、不幸にして亡くなってしまった岡田有紀子さんや清水由貴子さんらの歌声もある。女優に転身した片平なぎさも『スタ誕』出身だった。合格したがスカウトされなかった中に、5年前に白血病で亡くなったあの本田美奈子.さんもいる。司会は初代が萩本欽一、次に谷隼人・タモリと続き、坂本九・石野真子。4代目が漫才のやす・きよ(横山やすし・西川きよし)だった。
視聴者参加のオーディション番組には、スターを夢見る約200万人が応募しテレビ予選には5,500人が参加、423人が決勝大会に出場した。プロダクション、レコード会社がスカウトする形で札を上げ、桜田淳子には25社、山口百恵に20社、森昌子は13社が名乗りでた。
そもそも、この番組が企画された背景には、テレビ創世記から続いていた大手芸能事務所「渡辺プロダクション」の芸能界独占状態を揺るがすという目論見があった。企画は当たり、スター歌手は「渡辺プロ」以外のプロダクションからも生まれていったのだ。芸能界=ナベプロ王国ではなくなった、いまの芸能界が誕生した瞬間でもあった。