9・11での救助経験を持つアメリカ人元消防士が、一人で被災地入りしていた
東日本大震災が発生した3月11日から1カ月が過ぎ、被災地では多くのボランティアが活動をしている。その中に9・11とハイチ大地震の被災地で救助活動をした経験を持つ、元ニューヨーク消防士がいた。男性は地震発生直後、飛行機に飛び乗り、一人で被災地にたどり着いたのだという。
男性の名はトム・クラーク、年齢は50歳。ニューヨーク市の南西部にあるスタテンアイランド出身で、1980年代にニューヨーク市消防局で消防士として活躍していた。トムは退職後、家族と共にミネソタ州に移り住み、静かな生活を送っていたが、アメリカ同時多発テロ事件で故郷の惨事を見て「自分も何か手伝いたい」とグラウンド・ゼロに赴き、ボランティアとしてがれき撤去作業を手伝った。2010年1月にハイチで大地震が起こった際も、「自分の経験が役立てるかもしれない」とボランティアを志願。震災から1カ月後に被災地へ入り、活動をしている。
米テレビ局「CBS」の取材に応じたトムは、「地震と津波により、めちゃくちゃになっている日本を見て、居ても立ってもいられなくなったんだ。自分は、9・11とハイチでも手伝わせてもらった経験があるからね。テレビに映し出された震災の様子を見て、絶対に行かなくては、と思ったんだ。選択の余地などなかったね。考えもしなかった」「『被災地に行こうか、どうしようか』ではなく、『行くぞ』だった。問題は、どうやったら被災地までたどり着けるのかだった」と、コメント。
大地震から4日後の、3月15日に被災地入りしたトムだが、一人で飛行機に乗り言葉の通じない日本に来たため、相当な苦労をしたようである。多くは語らないが「みんなに助けてくれと懇願し、やっと被災地入りできたんだ。朝一のバスに空きがでることを願って、バス停で寝たもんだ」「赤十字の被災地本部を訪れたとき、みんなびっくりしてたね。本当に、たった一人でここまで来たのかって」と語っている。
CBSのニュース番組は、グラウンド・ゼロで作業をしたときに着用していたつなぎを身にまとい、荒廃した被災地で、表情を変えず黙々とがれきを撤去するトミーの姿を紹介。赤十字スタッフや被災地の住民とコミュニケーションを取るときに、笑顔を見せることもあるが、「広範囲にわたり、ひしゃげた家が重なりあっている。住民たちの気持ちを思うと本当に心が痛む」と、悲しみがこみあげてくるようであった。
強い余震が続き、福島第一原発事故の不安も広がっている被災地で活動するトムだが、妻は「神様が望む仕事をしているのだから、神様が彼を守ってくれるはず」と、気丈に振る舞っているとのことだ。
「もちろん、とても怖くなることはあるさ。でも、自分のできることは、これしかないから」「遺体は発見していないけど、生存者も発見できていないんだ。みんな、奇跡が起こることを強く信じている。決して望みは捨てないよ」と静かに語るトム。被災地では、トムのようなヒーローたちが、今なお多く活動している。
今は、トミーだけが使っていい言葉。
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