「日経ウーマン」が大震災を通して気付いた、本当に大切なものとは?
「日経ウーマン」5月号は、映画のPRの疲れが出てしまったのか、”ほほ笑み”というにはちょっと苦しい中谷美紀が表紙です。そしてなんと、今月は創刊23周年記念特別号! ほかのファッション誌なら高級ブランドから提供してもらった読者プレゼントを大放出しようものですが、「日経ウーマン」に限っては浮かれたような特別企画があるわけでもなく、いつもと同じテンションでお金の大切さを語っているところはさすがです。”ファッション誌じゃない”という自負がそうさせるのでしょか。それでは早速中身を見ていきましょう。
<トピック>
◎貯蓄1000万円最短ルート
◎発表! 女性が活躍する会社Best100
◎1分でスラスラ分かる政治・経済、基本のキ
■お金があればどんな困難も大丈夫……なはずなのに
第一特集は「貯蓄1000万円最短ルート」。「日経ウーマン」お得意の貯蓄術です。3.11の震災以降、人生において何が大事なのか考え方が変わった人も多いと思いますが、「日経ウーマン」はぶれません。「この時代、本当に頼れるのは貯蓄という結論に!」と声高々と、より一層「普段の備え=貯蓄」の大切さを訴えています。
平均年収が500万円以上の「日経ウーマン」読者は、貯蓄100万円はすでに達成済み。今回はさらに上を目指して貯蓄1,000万円の提案です。ちなみに、貯蓄10万円以下の人は実践するには問題ありと見なされてしまうので、まずは1週間、自分の支出を見つめ直すことが必要とのことです。
「いざというときにお金があれば安心! だから貯蓄1,000万円目指そうよ!!」といった趣旨なのに、「貯蓄があっても、漠然とした不安が消えません」という読者の声が。そんな不安だらけな人の平均貯蓄額を見てみると、なんと942万円!! 1,000万円近くあるのに目の前の不安を乗り越えられないなんて、そんなメンタルでいざというときに本当に大丈夫? と逆にこちらが心配になってしまいました。
■貯蓄ノルマをこなすための副業は当たり前
そして次は、貯蓄1,000万円超えを果たした女子のリアル生活レポートです! 年収・月収、1ヵ月の家計簿から、血液型&干支、彼氏の有無など、貯蓄と関係あるのかないのかわからないどうでもいい情報も織り交ぜて、4人の女性の貯蓄ストーリーが紹介されています。
ここで注目したいのが、登場する人たちの節約・贅沢ポイントです。年収400万以上の女性は月々の貯蓄を生み出すのに余裕があるのか、月イチで温泉旅行にいったりブランド物を買ったりして適度に楽しんでいます。が、年収300万円以下ともなると貯蓄額の捻出に余裕がないのか、贅沢が「毎日の晩酌は欠かさない」ことって……。しかも、トップバリュの99円のチューハイと発泡酒……。おそらく、1本当たりの単価を下げるため、ケース買いしてるんでしょう?
さらに300万円以下だと、「家賃3万円台の激安物件に住み、浮いたお金を貯蓄に回す」「週末はティッシュ配りやキャンギャルのアルバイトを入れる」「ネットアンケートに答えたり、商品モニターに登録したりして、毎月少しずつ謝礼やポイントを稼ぐ」など、月の貯蓄ノルマを果たすため必死! そんなに頑張れるんだったら、金持ちのダンナを見つけた方が早くないっすか?
ほかにも、「不安な時代に本当に頼れる保険の正しい備え方」や「安心にお金を殖やせる賢い投資術を紹介!」など、とにかく、不安をお金で解決しようという企画が盛りだくさん。しかし、ためたからって不安はなくならないというのは、先の読者アンケートで実証済み。それでも「日経ウーマン」が「幸せとは何なのか」を提示しないのは、ほかの女性誌のように上滑りの理想論を拒絶しているのか、あくまでニュートラルな立ち位置を守ることが「日経イズム」なのか……。単なる貯蓄特集ですが、「日経ウーマン」の限界がにじみ出てきたような気がします。
さて、来月号は「働き女子の恋愛白書2011」という、「日経ウーマン」らしからぬ特集が! いったいどんな展開を見せてくれるか、楽しみに待ちたいと思います。
(小林理恵)
ためたお金、義捐金にするって手もあるよ。
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