被災者自身が惨状を伝えるためにまとめた『阪神大震災雑記録』
――『ジャニーズおっかけマップ』『タカラヅカおっかけマップ』や、”松田聖子の愛人ジェフ”による『壊れた愛』など、芸能人の研究本・暴露本など問題作を次々と刊行してきた、鹿砦社・松岡利康社長。”言論の自由”を守るために闘ってきた、社長の壮絶出版人生に迫っちゃうぞ~!
【阪神大震災編】
芸能人の暴露本や、タレントの非公式本などを多く世の中に送り出している鹿砦社ですが、その他にも力を入れてきたジャンルが、実は”震災関連”の本なのです。と言うのも、鹿砦社が社を構えるのは兵庫県西宮市。社長の松岡利康さんは、16年前にこの地で阪神・淡路大震災に遭い、その経験から阪神大震災の関連書籍を多数出版しました。今回は、松岡さんが被災した当時の話を語ります。
「3月11日に東日本大震災が起こって、もう、悪夢が蘇ったって思ったよ……。阪神大震災のことはすっかり忘れて暮らしていたのに、当時の地獄絵図を思い出してしまった。ただ、僕自身は阪神大震災のとき、西宮に住んでいたものの、たいした被害はなかったんだよね。僕の家では、TVやワープロがひっくり返ったり、本が散らばったりはしたけど、そんなのは被害のうちに入らないからねぇ」
とは言え、西宮市は大きな被害が出た土地のひとつ。
「そうそう、阪神大震災での死者約6,500人のうち、4,000人が神戸市、2番目に死者が多かったのは西宮で、1,200人くらい亡くなってる。西宮は小さい街だからね、その中でこれだけ亡くなったわけだから……。ただ、同じ神戸市でも、北の方は被害がほとんどなかったんだよ。それと、西宮から武庫川を越えると尼崎市なんだけど、尼崎市の方は被害が少なかったし」
建物が倒壊し、街が悲惨な状態になったことを、鹿砦社の書籍『阪神大震災雑記録』(山下和則・著)では、写真付きでレポートしています。
「これは、山下さんご本人も被災者で、この大変な状況を世の中に知らせるべく、地元の出版社であるウチに持ち込んできたんだよね」
本をめくれどめくれど、電信柱が斜めに傾き、高架が崩れているなど、被災地の様子がリアルに写った写真がずらり……。
「この本は、山下さんが自分の足で撮影して、取材してきてくれたんだよね。しんどかったと思うよ~。僕も当時の様子を写真に撮っておきたかったけど、あまりにひどすぎて、なかなか撮るのが憚られるんだ。古い木造の家や、バブル期に建てられたデザイン性の高い建物はかなり崩れていた。今回の東日本大震災は被害の9割が津波だけど、阪神のときは直下型だったから、半分以上が建物が崩れての圧死。阪神大震災が起こるまでは、関西は地震は無い土地だって言われてたから、油断してた人たちも多かったんだよね」
阪神大震災での崩壊、そしてそこからの復興を目の当たりにしてきた松岡さんだけに、今回の東日本大震災には並々ならぬ関心を抱いているようです。
「偶然なんだけど、年始に鹿砦社のホームページをリニューアルしたばかりでね。そのときに、旧ホームページの既刊情報の、個別ジャンル”震災関連”を、”社会問題”の枠に一緒に入れてしまおうかと思っていたんだよね。でも、なんとなく新ホームページでもそのまま残しておいたら、今回の大震災が起こってさ。今となっては、”震災関連”ジャンルを残しておいてよかったと思う。兵庫の地元出版社として、阪神大震災の本は十数冊も作ってるから、この本が今回の復興の役に立てばいいな。もちろん、具体的な支援なども考えていますよ!」
(朝井麻由美)
松岡利康(まつおか・としやす)
1951年9月25日生まれ、熊本県出身。同志社大学文学部卒業後、貿易関係の仕事に従事。サラリーマン生活を経て、83年にエスエル出版会を設立、88 年に一時期経営危機に陥っていた鹿砦社を友好的買収、同社社長に就任。05年にパチスロメーカー大手のアルゼ(現ユニバーサルエンターテインメント)を取り上げた『アルゼ王国はスキャンダルの総合商社』、球団スカウトの死に迫った『阪神タイガースの闇』などの出版物について、名誉毀損で神戸地検に逮捕、起訴され、有罪判決を受ける。「ジャニーズ研究会」も開設。
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