カルチャー
[不定期連載]同じアホなら、見るだけで。【番外編】

地震でも停電でもキャンセル不可! 外国人男性との婚活パーティに潜入

2011/04/05 11:45

――「踊る阿呆に見る阿呆、同じアホなら踊らにゃ損々」と言うけれど、どうせ同じなら「見るだけ」の方がだんぜん楽でしょ! ということで、日本中、いえ世界中の「変な大会」をナナメ切り。参加者、観客まで余すことなくウォッチング。

 先日の「婚活雪かきボランティア」が予想以上にしょっぱかったおかげで、俄然婚活に前のめりになった。次は、「男性は医者限定」のパーティとかに行ってみたい。しかし悲しいことに、「男は医師限定」パーティには女28歳までと年齢制限があったり、女性の参加費1万5,000円(男は1,000円なのに)であったりと、本気じゃないと敷居が高い場合が多かった。まあ敷居が高いどころか、まず年齢で参加資格すら喪失してんですが。

 そんなところに発見したのが、「男は外国人限定」パーティである。女性の参加費5,000円(男は無料だけどね!)、値段も「まあいいか」と思える程度。そして「ジョニー・デップみたいな彼が欲しい!」という魅惑のキャッチ・コピー。とすると、女はウィノナ・ライダーorヴァネッサ・パラディになれるのか。

 申し込んだのは全国に会場を持つ、超大手の婚活パーティだ。場所は都内。一定の期待はして良さそうだ。パーティの日を指折り数えて待った。しかしその1週間ほど前に、未曾有の大震災が起こった。とてもじゃないけれど、呑気に婚活パーティなんか行ってる気分じゃない。計画停電のおかげで電車の運行状況も不安定だ。当然、キャンセルの電話をかけてみる。こうした非常事態だ。快くキャンセルさせてもらえるに違いない。

 ところが電話口で告げられたのは「キャンセルするには、キャンセル料がかかる」!! この事態だよ? 電車動いてないよ? フツーに行けないだろ? ところが「他にキャンセル希望の方もいらっしゃいませんし」とのこと。こんな事態の時に、婚活に目を血走らせているとは、どんな輩が集まるのか。そもそも避難勧告が出ている現在、外国人は日本にいんの? これはもう、「ものすごく婚活に必死な参加者」を見るためにも参加するしかない。

帰りまで電車が走っているのか確信が持てないまま、
会場へ向かう。ネオンが消えた街は輝きを失って、ど
こか荒廃した感じがする。地球末期の未来SFみたいだ

 一緒に参加する友人と女2人で歩いていると、3歩ごとに飲み屋の勧誘に遭う。どうですか飲みませんか歌いませんか。いや、今から婚活パーティでものすごく必死なジョニデとヴァネッサを観察しに行くので、いりません。

 もうすぐ会場だ、という時になって、携帯が鳴った。知らない番号だ。出てみると、開催者からだった。「今、どこにいますか? いつ頃来ますか?」だそうだ。いや、まだ開始時間前のはずだけど?

 会場に着いてみると、どかーんと広いスペースに、男性3人が座っていた。フツーに白人で、みんな英語を喋っている。人数はまあともかく、ジョニー・デップを求めて来たとしても、大きく外れた感はない。しかもプロフィールを見てみると、会社経営だったり外資系勤務だったり、めちゃくちゃエリートっぽい。その上、こちらが青くなるくらい日本語が堪能。いやいや、もっとネタ作りに協力してくれないと! これはもう、「すごく日本人女性と結婚したい必死な外国人」を取材するしかない。

 広い会場に敷き詰められたミニテーブルとイス。そこに点々と座らされたジョニデ候補たち。向かい合わせに座る女。つまり「二人っきりでトークしろよ」オーラ満載の配置なのだ。うん、これならジョニデ&ヴァネッサになるまで時間はかからなそうだ。しかしジョニデ候補たちからは「なんで1対1?」「固まって座ればいいじゃん!」と、合コン座りに席替え。

 婚活パーティの定番アイテム「プロフィールカード」も、彼らにかかれば「なにこれ?」扱い。婚活パーティのプロフィールカードというのは、「家族構成」とか、「最初に行きたいデートの場所」とか、人となりがわかり、なおかつ会話の補助をしてくれる便利なツールである。たいていの婚活では、これを必死になって読み解き、会話を作っていく。しかしジョニデたちにはこんなもの、全然必要なさそうなのだ。

プロフィールカード。項目は、氏名~好きな歌~食べ
物、家族構成、飲酒頻度、初めてのデートで行きたい
ところ(笑)、趣味特技、休暇の過ごし方、将来
日本に住みたいか、結婚歴

 こういう様子を見ていて、「ああ日本人って、すごく真面目だけどフレキシブルじゃないんだな」としみじみ思った。紙の問題を解くのは得意でも、研究は好きでも、応用力がないのが日本人。だから、パーティが「婚活」と限定される必要があるし、会話のネタになるプロフィールカードなるものを必死に読まなければ、コミュニケーションが取れないのだ。……って、このパーティに参加したのは、こんな真面目なことを感じ取るのが目的じゃないはずだったんだけど。

 聞いてみると、外国人向けのフリーペーパー(都内にはよくこういうのが店に置いてある)にこのパーティの告知が載っていたとのこと。どうやら彼らは、フツーに「パーティ」に参加しに来てるようである。

 そしてひとりの女性が遅れてやって来た。聞いてみると、彼女もやはり数日前にキャンセルを申し出たのだそうだ。しかしやはりキャンセル料を請求されたので、当日会場に顔を出したのだとか。時間前に来て、「誰もいないから帰ります」と言って会場を出たところ、電話で連れ戻されたという。それでも、参加人数は決して教えてくれなかったらしい。そうそう、自社のHPに直前まで「満席」とか「ほぼ満席」とか表示していても、絶対に「参加人数」を明かさないのが、婚活パーティなのだ。ちなみにこのパーティの場合、募集人数は50人で、「まもなく満席」という表示もされていたけど?

 そして本格的に苦行のような時間が始まった。参加費5,000円も払ってるのに、「パーティ」っていう名目なのに、軽食どころか茶の一滴も出ないのだ。すみません水をください、もう喋れません……。

がらーん

 ジョニデ候補たちは、途中から英語でビジネストークを開始し、女子には目もくれない。どうやら、必死に女と出会いに来たのではなさそうだ。遅刻女性も、「腹が立ったので、お茶してのんびりしてから来た」とか言ってて、必死さがない。誰かもっと目血走らせてネタ提供してくれよ。

 っていうか、キャンセル希望者、いたんじゃねーか。なにが「他にキャンセル希望がいない」だ。その上、受付には「ボールペン50円」の表示。なんとプロフィールカードを書くための筆記用具がない人に売りつけるらしい。持ち物欄に書いてなかったけど?

 なるほど、この婚活パーティで一番必死だったのは、どんな非常事態にあっても参加者のキャンセルを認めず、飲食サービス一切なしで参加費をむしり取り、ボールペンを売りつけ、参加者に来場を促す電話をかけまくり、帰りかけた人まで呼び戻す開催者の方だったのである。そして、「今日はこれで終わりです」という一言で、パーティは突然終了したのであった。

 結論としては、こうした婚活パーティに行くなら、ホントに「出会いそのもの」を求めていないと、あまり得をしないということである。水の一杯も出ないしさ。というわけで、ジョニデとは連絡先も交換しなかったので、ウィノナにもヴァネッサにもなれませんでした。

和久井香菜子(わくい・かなこ)
ライター・イラストレーター。少女向けのコラムやエッセイを得意とする一方で、ネットゲーム『養殖中華屋さん』の企画をはじめ、就職系やテニス雑誌、ビジネス本まで、幅広いジャンルで活躍中。 『少女マンガで読み解く 乙女心のツボ』(カンゼン)が好評発売中。

『ダーリンは外国人』

夢のまた夢


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最終更新:2011/04/05 11:45
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