男のインチキ自己肯定を見抜け! 二村ヒトシが恋愛至上主義を一刀両断
モノが売れないこのご時世、出版界では「恋愛マニュアル本」や「セックスハウツー本」が百花繚乱。お金で買えない「オンナの自己実現」に着目する著作が激増しています。そんな中、AV監督・二村ヒトシ氏が『恋とセックスで幸せになる秘密』(イースト・プレス)を刊行。帯には「なぜか恋愛がうまくいかない女性へ」とじんわり響くボディーブローのような名言が……。これはオンナたちの救世主となるのか?! 二村氏にお話を伺ってみました。
――著作は恋愛指南というよりは「恋愛至上主義へのアンチテーゼ」を強烈に感じました。
二村ヒトシ氏(以下、二村氏) 「恋愛はいいこと」という風潮があると思うんですよ。女性誌でも「愛され~」「モテ~」の文字が躍り、恋愛至上主義が当たり前のように掲げられている。でもね、恋することはツライこと。恋は確実に人を不幸にする、いわば「毒」。決して憧れるものではないんです。とはいえ、それでも落ちてしまうのが「恋」ですが。
――女性誌の「恋愛」扇情には正直、辟易しているオンナも増えていますしね。
二村氏 女性誌は「恋をしてる(したい)女性にモノを売るための広告」ですから。でも、それが分かっていない人も多い。自分で価値判断できない女性や、自己肯定できていない女性がうっかり女性誌に誘導されて、恋愛至上主義にすっかりハマってしまうんです。男の方はろくでなしのヤリチン男なのに、「好きな人とセックスした方がいい」と信じて状況から抜け出せない女性っているでしょ? 支配的なセックスや精神的な暴力を受けているのに、「好きだから幸せなんだ」と解釈してしまう。
――ダメンズ、ヤリチン、クズ男にほだされてても、恋愛してないよりはマシ! というムードはあります。
二村氏 そういう女性は、自分の「欠損感」とか「寂しさ」とか(僕はコレを「心の穴」と呼ぶんですが)を恋愛の相手で埋めようとするんです。でも恋じゃ埋まらないんですよ。もっと言えば、自分の心の穴そのものに気づかない人もいる。自分自身と向き合ってないから、恋をしてもツラくて苦しいだけなんです。
――ロクでもない男しか近づいてこないのは、自己肯定できていないからだと書かれてましたね。
二村氏 今の社会は、男が「自己肯定しているような気分」になりやすくできているんです。男は肯定できる自分の姿や生き方に多様性がある。オタクは重要な消費者層として社会的に認知されていますし、ヤリチンだって「たくさんの女とセックスできているのが、男性社会では地位が上」という共通認識が男にはあるから、これでいいと思えてしまう。ギャンブルにハマったりトラブルを起こしても「アウトローが活躍するマンガ」を読んで、かっこいい生き方だと思えてしまう。社会や仲間内に認められることで、自分に深い疑問を抱かないでいられるんです。
――オンナは、仕事も結婚も育児も女としても評価されなければ自分を肯定できない。
二村氏 女性は男のように「インチキ自己肯定」ができない状況だからこそ、愛されることを求めて恋をしてしまうのかもしれません。でも、そこでもやはり苦しい思いをすることになってしまう。昔、自己肯定できていない女性と付き合っていまして。自分の心の穴を押し付けてくる女性って言えば分かるかな? 彼女たちに対して、「コレだからお前はダメなんだ!」「だから俺たちみたいなヤリチンに引っ掛かるんだよッ!!」という憎しみで、てんこもりだったんです(笑)。
――ヤリチンだった二村さんの憎しみも含まれているんですね。
二村氏 実は、この本は僕の個人的な「憎しみ」とか「怒り」から始まったんです。執筆に5年近くかかったのは、そこから憎しみを取り除いていたからなんです。地道に、アジの小骨を抜くようにすべての憎しみを取り去っていくという(笑)。
――小骨を抜く前の原稿も読んでみたかったです。
二村氏 10年前に『すべてはモテるためである』(KKロングセラーズ)という本を書いたんです。これは女性とうまくコミュニケーションをとれないオタクの男性向けです。まあ、当時の自分を書いたんですけどね。そのころはまだAV監督としても有名じゃなかったし、モテなかったし。ところがその後、ちょっとモテるようになって、何人かの女性たちを苦しめてしまったんです。その出来事を、自分の中で昇華していくために書いたとも言えますね。
――二村さんがオンナたちを呼んでしまう誘引力って何でしょうね?
二村氏 僕自身にも、メンヘル系女子を引き寄せてしまうような心の穴があるんでしょうね。男性だって、自己肯定できていないし、心の穴があるワケだから。仲間内でよく言われますよ。「おまえは日本三大メンヘルメーカーだ」って(笑)。
――心の穴の原因は母親にある、と書かれていましたが、原因の在りかを明らかにすれば穴がふさがってよい恋愛ができるのでしょうか。
二村氏 あくまで自分の心の穴を知る作業過程のひとつとしてです。そうすることで、自分がどんなことをされると傷つくのか、どのようにして人を傷つけてしまうのか気づくことができるんです。
――心の穴も分かった、恋愛史上主義でもない、だけど満たされないオンナはどうすれば?
二村氏 「恋=毒」という理屈が分かっている女性ですね。多くの女性が持っている「頑固で」「負けず嫌い」で「私、Mなの」って3点セットをやめることです(笑)。頑固と負けず嫌いは自覚していない人もいるけど、「私、Mなの」発言って、たいていの女性が言うでしょ? その結果、自称S男に引っ掛かって、嫌いなフェ●チオを延々させられたり、乱暴に扱われたり。結果、後で必ず相手を憎むことになりますから。
――二村さんが提案する「自分を愛せるようになるための7つの方法」のひとつ、『するのが「うれしい」ことだけをする』ですね。
二村氏 「ケンカと仲直りの方法」「別れの作法」なども書きましたので、感想を聞きたいところです。
――しょっぱい恋愛観をもつオンナには、「ヤリチンとオタクだらけの男たち」、「良いヤリマン・悪いヤリマン」の章が参考になりそうです。
二村氏 まともな男が周りにいない、とボヤいている女性にもぜひ(笑)。
二村ヒトシ(にむら・ひとし)
1964年、東京都生まれ。慶応義塾大学中退。AV監督。著書に『すべてはモテるためである』(KKロングセラーズ。2002年に幻冬舎より『モテるための哲学』と改題し文庫化)がある。
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