やり過ぎ? 有名税? 『田口ランディ その「盗作=万引き」の研究』
――『ジャニーズおっかけマップ』『タカラヅカおっかけマップ』や、”松田聖子の愛人ジェフ”による『壊れた愛』など、芸能人の研究本・暴露本など問題作を次々と刊行してきた、鹿砦社・松岡利康社長。”言論の自由”を守るために闘ってきた、社長の壮絶出版人生に迫っちゃうぞ~!
【田口ランディ編】
芸能人の暴露本がメインだと思われがちな鹿砦社ですが、意外にも(?)文化人を扱った本も少なくありません。2001年頃、作家・田口ランディ氏の複数の著作が盗作であると、ネット上で大激論になりました。結果、著作物の無断使用をした件を本人が認め、著書の『アンテナ』と『モザイク』は絶版に。この盗作騒動を研究したのが『田口ランディ その「盗作=万引き」の研究』(大月隆寛・編/鹿砦社)です。実に382ページにも渡る長編。13人のライター(中には盗作された被害者も)がめいめい盗作の件について、取材や研究をし、寄稿している気合いの入りようには、イチ作家に対してなぜこんなに、と思ってしまうほど……。
「これは大月隆寛からの持ち込みだねぇ。これは読むのが大変なくらい、ぎっしりと内容が詰まってるよねぇ。当時はサイバッチやら2ちゃんねるやら、大騒動になっていたからこそ、田口ランディの作品を出版した複数の版元からもコメントを集めた。そこまでしたら、本人の言い分も載せなきゃと思って、田口ランディにも直撃取材をしたんだよね」
とは、鹿砦社・松岡利康社長の弁。本の巻頭に堂々と、田口氏の自宅や周辺写真、周辺地図を載せてあり、同じ鹿砦社から出ている『ジャニーズおっかけマップ』の初期のもの(個人情報保護法施行前のもの)を彷彿とさせます。
「自宅へ取材に行ったその翌日にランディ側から内容証明が来たんだよね。大月が対応したから、僕は詳しくは把握していないけどね。その内容証明も、縮小したものを本に掲載してるよ。この本も、出版前に内容証明が来ただけで、出版後はモメなかったよ~。ここまで徹底的に書かれちゃ、向こうも反論できないでしょうよ」
いくら盗作をしたとは言え、芸能人でもないのに、自宅写真の掲載し、382ページにも渡って書き立てられるのは、少々やりすぎでは……? とおそるおそる聞いてみると、
「いやいや、そんなことないでしょう。うちが、ジャニーズや宝塚なんかの芸能人暴露本を出すのは、”有名税”と僕はよく言っているけど、作家さんだって”有名作家”なら同じだよ! この本で、ランディのファンから怒られたこともないよ。もともと、ネット上で盗作が騒ぎになったことから生まれた本だから、出版後にもネット上で本のことが話題になったなぁ~」
確かにこれだけ大胆な本を出せるのは、鹿砦社だけのような気もしますが、出版意図にはそれだけではようで……。
「こういった作家や文化人の検証本や暴露本というのは、大手の出版社からは出せないでしょ? 大物作家”先生”の売り上げを頼りにしているわけだからさ。でも、だからといって作家が何をしてもいいというわけじゃない。だから、普段から作家との”健全な”お付き合いがない鹿砦社が出すし、意義もあるの。ボクも考えているんだよ(笑)」
なるほど、文化人の監視機能もあるということですね。松岡社長、おみそれしました~。
松岡利康(まつおか・としやす)
1951年9月25日生まれ、熊本県出身。同志社大学文学部卒業後、貿易関係の仕事に従事。サラリーマン生活を経て、83年にエスエル出版会を設立、88 年に一時期経営危機に陥っていた鹿砦社を友好的買収、同社社長に就任。05年にパチスロメーカー大手のアルゼ(現ユニバーサルエンターテインメント)を取り上げた『アルゼ王国はスキャンダルの総合商社』、球団スカウトの死に迫った『阪神タイガースの闇』などの出版物について、名誉毀損で神戸地検に逮捕、起訴され、有罪判決を受ける。「ジャニーズ研究会」も開設。
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