「こんなご時世に生まれてどうすんの?」と、腹の赤子に問いかけた
なんだか毎日、1日のうちのどこかで揺れてる。被災地でもないのに、街中で、やたらとせわしなく、ピーポーピーポー救急車だの消防車だのが走ってるし。なんなんだ? 一体。スーパー行けばレジの前は行列で、棚はカラッポ、カップラーメンの買いだめなら理解できるけど、パンとかって、長期保存なんて出来ないような気がするんだが。
どうなんだろう? 私が無知なだけなのか? 新聞だのニュースだので「買いだめすんな」って、いくら口酸っぱくして言ったところで、何の効果もないような気がする。カラッポの商品棚や行列を目にすると、ニンゲンって相当焦るように出来てるんだなとつくづく思った。普通に街中歩いてるだけだと、そこまで焦ることはないのだが、スーパーで店内の有り様を目にすると、非常事態発生中なのかと、なんだかもう気持ちが暗くなってくる。出来ることなら今、スーパーには行きたくない。ほんとに。(まぁ、そういうわけにもいかないんだけど)
あの時の地震の揺れで、本が雪崩を起こして部屋中に散乱したのだが、なんとなくもう、本棚に戻す気になれなくて、ほんとに好きなもんだけ残して、あとは全部処分してしまった。それで本棚、今、スッカラカン。そんなことしてたら、部屋中のあちこちに「なんでこんなもの、今まで取ってたんだろう?」って物がたくさんあることに気が付いて、それらのガラクタも全て処分してしまった。昔付き合ってた男にもらった、珍しいレコードとか本とか。何年も開いてない名刺入れとか。踏まずに放置されたまんまのステッパーだの、味噌瓶、漬け物瓶、ほこりだらけの植木鉢。壊れた子供のおもちゃ。2~3回使ってほ放ったらかしたまんまの化粧品etc、etc、エトセトラ……家中、タンスの中や食器棚の中まで、これでもかというくらいガラクタを捨てまくり……ああ、被災地の人たちが苦しい思いをしてるさなか、なんだって私、いきなり断捨離なんかやってんだ??
自分が今ニンプ中だからだと思うけど、やっぱり、被災地のニンプさんのことが頭から離れない。他人事に思えない。ニンプにとっちゃ「よく寝てよく食べてよく笑う」のが一番大事なことなのに、そういうことがままならない過酷な状況の中で生活しなきゃいけないなんて、ほんとに胸が痛む。もう、泣きそうになる。てゆうか、泣く時ある。私に何が出来るのさ? 募金ちょこっとしたけど。(ちょこっと、ってゆうのがもう情けない……)
そんなふうだから、あんまりにも辛くなって、テレビのニュースが見てられなくなってしまい、ついつい、『ゼロの焦点』(昔のモノクロのほう)のDVDを借りてきて、そっちを見てしまった……。そして「やっぱヒロスエの芝居って、ちょっとどうなのよ?」とか、「中谷美紀、若すぎて奥様ってかんじには見えないな~」だの、「殺人のシーン、なんか、Jホラーっぽい演出に走り過ぎなんじゃないの?」などと毒吐きまくってたら、おい、そんな事ほざいてる場合か? と、もう一人の自分にハリセンで頭を殴られ、ハッと我にかえって、ものすごい罪悪感を感じてしまった。今、ほんとうに「……被災地の皆さん、ごめんなさい!!!!」という気持ちで一杯である……。
そんなわけで、今日もまた、揺れるんだろうか。私が不安になると、腹の赤子も不安になってしまう。気持ちが沈み込んでしまうのが、ニンプには一番いけない。「アンタさぁ、こんな世の中になっちゃってるけど、それでも絶対生まれたいんだよね?」と、腹の赤子に問いかけてみたら……赤子は絶対生まれたいらしい。
昔の私だったら「こんなご時世に生まれてどうすんのよ?」と、斜に構えたような態度で言い返したかもしれないが、そんな意見は実は「いらぬおせっかいである」と今なら思う。腹が減ってしょうがなくて、とにかく何でもいいから食いたいと言ってる人に「そんな添加物だらけのもの、食べてもしょうがないよ」と言うような、そんないらぬおせっかいなのである。
生まれたいもんは生まれたいんだからしょうがない。あーだこーだと、こっちがとやかく言う筋合いはないのだと思う。
あと3カ月くらいだから、お互い頑張りましょう、と赤子に言ったら「それはいいけど、家族にイライラをぶつけるのは、もう少し控えてほしい」と、腹の中から言い返された。ような気がした。こんな状況の中でも生まれようとしてる奴だもの、きっと、図太くたくましく元気に育つような赤んぼが出てくるんだろうなと、私は思うわけです。被災地でも、きっとそんな奴らがいっぱい生まれるんだ、と思うので、ニンプさん、胎児さん、頑張って下さいと、私は思います。あ、そうじゃない人たちにも、頑張って下さい、と思います。
図太く生きようぜ、赤子のみんな!