世間の批判が怖くて書けない? 作家・水嶋ヒロの限界と解決法は……
下世話、醜聞、スキャンダル――。長く女性の”欲望”に応えてきた女性週刊誌を、伝説のスキャンダル雑誌「噂の真相」の元デスク神林広恵が、ぶった斬る!
第66回(3/3~3/8発売号より)
すごいぞ、あめのもりようこ。『ソロモン流』(テレビ東京系)で放映された骨盤エクササイズ。早速DVDを入手し、やってみた。すると――、なかなかくびれなかったウエストがスッキリ! 「女性自身」で紹介されてた激痛エステで7キロ痩せた。そしてあめのもりでウエストのくびれをゲット。興奮してあめのもりようこにリスペクト! の日々である。
1位「海老蔵缶ビールで麻央と乾杯! 禁破った『入籍記念日の夜――』」(「女性自身」3月22日号)
2位「水嶋ヒロ『小説が書けない――』2作目の煩悶!」(「女性自身」3月22日号)
3位「佑ちゃん『プロの重圧』に両親が息子をたずねて『3千キロ』!」(「女性自身」3月22日号)
残念というか、詰めが甘い記事の目立っていた「自身」だが、今週はなかなかイケてる。ランキングも全て「自身」である。
まずは海老蔵ネタ。「自身」記事には、麻央の妊娠が発覚して以降の母親や姉との交流、つつがなく謹慎生活を過ごし、パパになる準備をしているという海老蔵の様子が延々と書かれている。それだけでは、どうということのない記事だ。だが、ラスト20行。これだけがイケてるのである。
海老蔵夫婦の入籍1周年記念日、奇しくも伊藤リオン被告の初公判と重なったことは大きく報じられた。多くの報道陣も海老蔵宅に集結した。そんな中、おそらく「自身」記者だけが目をつけたもの。それが海老蔵宅から出されたゴミだ。自宅前に置かれた空き缶回収ゴミ、その中に数本の缶ビールの空き缶があったのだという。これに目をつけた記者は偉い。
今や海老蔵と酒はセットで語られる存在だ。彼の人生には欠かせないパーツである。これまでの禁酒宣言がそれを如実に語っている。父親が病に倒れた際に、海老蔵は願かけのために禁酒宣言をした。麻央と結婚した際も再び禁酒宣言。大切なことのために禁酒するってことは、逆に言えばそれだけ”酒が命”ってことでしょ。お酒が相当好きなんだな。公の場で禁酒宣言しても、いつの間にか酒を飲んでいた海老蔵。暴行事件の会見でも「しばらくはお酒を飲む気になれない」とは言ったが、決して「酒をやめる」とは言わなかった。辞めるつもりはさらさらない。酒に人生をかける、それはそれで潔い。
だが「海老蔵はいつ飲むのか」が世間の興味になるのも仕方ない。そして多くの記者は「外で飲む」ことに標準を合わせていた。家飲みに目をつけたのは「自身」だけだった。
かつて伝説のエロ本「JAM」(エルシー企画)で、編集者の高杉弾が山口百恵のゴミを持ち帰り、誌上公開し、話題を呼んだことを思い出した。時代は変わった。ゴミの所有権の問題もあり、「自身」記者はゴミ箱を覗いただけで持ち帰らなかった。賢明である。でも少し寂しい。今度テキーラの瓶を見つけたらぜひ持ち帰り、誌上で公開する根性を見せてほしい。
やっぱり書けないか、2作目。水嶋ヒロが悩んでいる。100万部を突破した『KAGEROU』(ポプラ社)だったが、次の作品が書けないらしい。依頼されたフォトエッセイも文章がダメで、編集者からNGを連発され、企画自体が頓挫中だって。水嶋が原作・脚本を手がけたGIRLS NEXT DOORのプロモーションビデオも、『KAGEROU』以前に書き溜めておいたもの。
その理由として「世間の反応が怖い」と記事にはある。自信を持って世に出した『KAGEROU』が酷評され、精神的に追い詰められているのだとか。弱いな。
作家が新人時代、評論家や世間に酷評されることは珍しくない。有名評論家から酷評されたある新人作家が「あいつだけは一生許さない。潰してやる」と息巻いているのを聞いたことがある。大御所となった十数年後にも、まだ「許さない」とつぶやいていた。作家とはそういうものだ。ルサンチマンやコンプレックス、被害妄想の塊。それがなければ書けない、書く意味がない、必要がない。
帰国子女で高校時代はサッカーで活躍、一流大学に入学し、学生時代にスカウトされる。芸能界でも順調に活躍してきた水嶋。そして順調に作家デビュー。献身的な妻もいる。かつ長身イケメン。挫折がない。なさすぎる。これでは書けないのも当然だ。
とはいえ、希望がないわけではない。昨年には事務所解雇されるというハプニングがあり、デビュー作も酷評された。妻は病をもっている。あと最低5つくらいは不幸な要素が欲しいな。友人の裏切りとか、近親者の怪死とか、金銭トラブルとか、精神不安定とか、虐待とか。不倫もいいかも。良い人を辞めろ。芸(作品)のためなら女房も泣かすのだ。今の水嶋にはそれは不可能のように感じる。だが波乱万丈で理不尽、かつ不安定な生活を作りだせた時、きっと書ける。
毎日、毎日、佑ちゃん、佑ちゃん。世間は本当に斎藤佑樹好きのようだ。まるで日本全国民が佑ちゃんの応援団、ファンのよう。いや実際にそうか!? 佑ちゃんはあまり好きじゃない、と言っただけで非国民扱いされそう。いいのか、それで。
いや、違和感を持っているのは筆者だけではない。メディアでもチョロチョロとではあるが、その萌芽・予兆が出始めている。「女性セブン」(2月24日号)では野球少年ママのつぶやき、という形で佑ちゃんブームに疑問を呈した。そして今回「自身」も、記事の行間から、それがにじみ出ていると見た。
「自身」は記事もプロの重圧を心配した両親が札幌入りし佑ちゃんを見守る、という美談仕立てだ。だが、その文章には皮肉が満載されている(と思う)。
「札幌ドーム一塁側最前列には、沖縄・名護キャンプを訪れ、息子の調整ぶりを見守り続けた両親の姿も」(名護に3週間以上も滞在して、さらに札幌入り。何日滞在するんだ。そんな過保護なルーキー見たことない。つぶやきは文責・筆者、以下同)、「ご両親から『息子のピッチングを静かに見守りたいから……』という要請があり、球団関係者が付き添うことになったようです」(球団も両親まで特別扱いかよ。特等席で付き人ありってどうなのよ)、「群馬の太田市から名護までの道のりは約2千キロ。(略)札幌の間は約1千キロ。ご両親は約3千キロをかけて息子をたずねています」(わざわざ数字を羅列して異常な感じを醸し出してみました)、ってな感じ。
なんだか、嵐の予兆がするでしょ? マスコミは怖い。持ち上げて落とす、持ち上げまくってバッシング(某CMのようだが)。ウズウズと、そして虎視眈々とその時を待っている。だが敵も手強いぞ!
水嶋ヒロもダイエット系に転身した方が儲かるよ!
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