女の子も憧れる"男の娘"

元禄時代の禁断の文化……”男の娘”に会える「若衆バー」に行ってみた

2011/03/13 12:00
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どこから見ても女性のMIYAさんです!

 キレイな”おネェ”さんは好きですか? まつ毛バシバシのばっちりメイクをしたおネェさんたちが、広~い懐で迎え入れてくれる、と言ったら歌舞伎町や二丁目ですが、東京・上野の路地裏にこじんまりと店を構える「若衆バー」も、キレイなおネェさんたちが切り盛りするお店です。

 「おネェさんと言っても、ウチはちょっと違います」とは店長のMIYAさん。彼女(彼?)は、男子が化粧をして美を競うイベント『東京化粧男子宣言!』の主催者でもあります。いわゆる「男の娘(こ)」ムーブメントの火付け役。MIYAさんにされるがままに案内されたのは、なんとまさかのコタツ席! 和で統一された店内の雰囲気に、和装のMIYAさん、そしてじんわり暖かいコタツ。おばあちゃんの家に遊びに来ているような錯覚に陥り、あまりの安心感に眠くなってまいりました……。

――店内も衣装も、和風の雰囲気に徹底してますね。このコンセプトにしたのは?

MIYAさん(以下、MIYA) うちらの存在って、どうしても”異形”なんです。骨格も立派だし、背丈もあるし。そういうガタイの良さがある中で、和装っていうのはピッタリハマるんじゃないかなと思ったので。

――どんなところが、二丁目と違うのでしょうか?

MIYA うちは”若衆バー”だから、「ニューハーフ」でも「女装」でもないんです。「若衆」っていうのは、性行為の受け手をする少年のことで、もともと、この上野の一帯は、特に元禄時代に若衆が栄えた場所でした。せっかくこういう土地でお店を開けることになったからには、そういう文化を引き継いだコンセプトにしたいと思ったんです。ウチはあくまでテーマは「若衆」なんです。


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秘蔵の酒をお持ち頂きました。

――訪れるお客さんの層もよそとは違うんでしょうか?

MIYA お店が女性の団体客でいっぱいになって、女子会みたくなることもありますよ。あまりの居心地の良さに、コタツで眠っちゃう人もいる(笑)。あとは、何も知らないで偶然入ったサラリーマンとか。そういう人は、うちらの性別について聞いていいのか、いけないのか戸惑うこともあるみたいです(笑)。全然聞いてくれていいんですよ。

――MIYAさんご自身は、普段から女の子の格好をしているんですか?


MIYA はい、これが普段着です。たいていは和服を着てますね。お仕事でスーツを着なくちゃならないときも、スカートスーツ。お店のコたちも、普段から女の子の服を着て、メイクもしてるんですよ。

――その……MIYAさんはいつからそういうのがお目覚めで、と言いますか……。昔からなのでしょうか?

MIYA 私は、何年か前までは大工の仕事をしていたんですよ。今よりも太ってて、見た目もガチで男だったし、周りも男だらけで。そういう、極端に男臭い現場にいると、ちょっと疲れちゃうんです。そんなとき、痩せたのがきっかけで、私もキレイになれるかな!? って思って、ニューハーフ業界に入りました。でも、今度は、ニューハーフ業界って極端に”女らしい”世界だから、そっちでも疲れちゃって……(笑)。今は、女の自分も男の自分も、両方コントロールして好きな方を使って生活しています。このお店は、「性別で遊ぼう!」って思ってやってます。だから、「女装」だけでなく「男装」のイベントも設けたりしてね。男が男の格好をするんではなくて、あくまで「男の娘」が男の格好をするって意味で「男装」。このお店では、性別の多様性を伝えたいですね。

――お客さんも、性別を意識せずにラクな気持ちで飲めるってことでしょうか?

MIYA そうだと思う! ウチで女子会するコたちがいるのも、男の目線を気にしないで飲めるから。ウチでは、股広げて飲んでてもいいんです(笑)。それに、うちらはオタク気質だから、普通のホストができないようなアニメやゲームのディープな話もできるし、男の子だった経験もある分、男を意識させない程度にもてなしますよ。ちなみに、他ではなかなか飲めないジャスミン梅酒に紫芋焼酎、紅茶梅酒や1本6,000円くらいする日本酒も各種取り揃えてるから、飲兵衛さんもいつでも来てください。

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MIYAさんと莉紅(りく)さん、二人とも激マブ

 と言って、レアな日本酒を冷蔵庫から運び出し、その価値を楽しそうに説明する様子に「お酒は大好きですよ」と話すMIYAさんの男の姿がちらり。と思えば、マスカラばっちりの長いまつ毛が印象的な目でじっと見つめてニコッとするMIYAさんに漂う女の色気。女と男を自在にコントロールする様を垣間見たのでした。そして、「正直、うちらよりメイク上手いよね……」と、ナチュラルメイクという名の手抜きメイクが常となっている筆者&編集Nは「今度教わりに来よう」「あの酒を飲みにこよう」と決意を新たにしたのでした。
(朝井麻由美)

若衆バー 化粧男子 
東京都文京区湯島3-38-3 つくしビルB102
19時30分~翌朝4時まで(月~土)
公式サイト

『夜這いの民俗学・夜這いの性愛論 [文庫]』

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最終更新:2011/03/13 12:00