麗しき女装の二世マンガ家が語る、”男の娘”論
先日、カリスマ的人気を誇るマンガ家の母を持つ、”二世マンガ家”が華々しくデビューした。『キャンディ・キャンディ』の作者・いがらしゆみこの長男であり、11月27日にデビュー作となるコミックエッセイ『わが輩は『男の娘』である!』(実業之日本社)を刊行した、いがらし奈波だ。しかしながら、彼には”二世”以上に大きな特徴がある。同書のタイトルにもある通り、彼は日常的にファッション感覚で女装やメイクを嗜み、一見、本物の女性かと見紛うような愛らしい外見を誇る、「男の娘(おとこのこ)」なのだ。そんなバイタリティー溢れる生き方をしている人、サイゾーウーマン的に見逃せない!……ということで、さっそくお話を伺ってみた。
――奈波さんはチェックのスカートだったり、ニーソックスだったり、”萌え系”のアイテムを好んで着用されているように見受けられますが、どんな女性像を意識されているのでしょう?
いがらし奈波(以下、奈波) 堀江由衣さんや田村ゆかりさんなど、女性声優さんのような容姿を目指しています。僕は今29歳なのですが、彼女たちは30代になってもPVで制服を着こなしていたりして、もう非現実的なレベル。そういった、言わば”2.5次元的”な域に達したいと思っているので、参考にしているのは声優雑誌のグラビアとか、AKB48のまゆゆ(渡辺麻友)とか、『みつどもえ』(秋田書店)などの少女マンガ。逆に女性ファッション誌はあんまり読まないですね。強いて言うなら、「ニコラ」(新潮社)や「ピチレモン」(学習研究社)などのローティーン向け雑誌。僕自身がロリコンなのもありますが(笑)、”2.5次元”を体現するなら、その辺の年齢層のファッションが一番ハマりやすいんですよ。
――29歳になっても、ローティーン・ファッションがハマるのは、”男の娘ならでは”といった感じがします。
奈波 いやいや、僕からしてもこんな恰好をするのはチャレンジですよ(笑)。たまに現役の女子高生に間違えられることがあって、そんな時は「奇跡が起こった!」って嬉しくなりますね。こないだなんて池袋駅のホームに立っていたら、男性が紙袋を……おそらくその中にカメラを忍ばせているんだと思いますけど、それをちょうどスカートの下に置かれて。一応、見えてしまってもいいように、いつもブルマを穿いているんですが、気持ち悪いので避けたんです。そしたら、「もし暇だったら、一緒にお茶しませんか?」って話しかけられて……「盗撮した挙句にナンパかよ!」ってビックリしました。こっちは女装で、しかも三十路手前なのに(笑)。
――そういうどうしようもない男、本当に多いですよね……。そんな状況だからこそ、女性の中には「女の気持ちも理解できる男の娘と付き合いたい!」と思っている人もいるんじゃないかと。実際に奈波さんにも愛する彼女がいて、2人でコミケに出掛けたり洋服のショッピングに出かける日常が「わが輩は『男の娘』である!」の中でも描かれているわけですが、一般の女性が男の娘と出会うためには、どうしたらいいのでしょう?
奈波 男の娘が多く集まる女装系のイベントがあるので、そこに行ったらいいんじゃないでしょうか。ただ、クオリティが高い人は本当に女性と見分けが付かないので(笑)、「あれは男の娘かな?」と思ったら、声をかけて確かめるしかない。女性を過度に意識したような細い声を出している人は、男性である可能性が高いです。それから男の娘って、基本的に草食系気質である上、女装をしている時は物凄く気が小さくなるんですよ。「女の子に見られたい!」という意識が強くなるあまり、自分が思っている以上に何も出来なくなってしまう人が多くて。でも、「女の子ってかわいい! 女の子が好き!」という”女好き”の想いが高じて男の娘になる人も多いので、女性の方から積極的にアタックしていけば、ガンガン釣れると思います。ただし、本当に草食系気質なので、いざ付き合ってみたら「もうちょっとリードしてほしい」とか、いろいろと不満が生じてしまうかもしれませんが……。
――つまり、男の娘と相性が良いのは、肉食系女子ということですね。それにしても、奈波さんってばヒゲの1本も見当たらないし、お肌ツルツルで羨ましいです。男性でその美しさを保つには、並々ならぬ努力が要るんじゃないかと……。
奈波 「男性ホルモン」という、”美容の大敵”が備わっていますからね(笑)。肌は荒れるわ、ヒゲは濃くなるわ、ハゲるわ……男性ホルモンの性能の低さといったら、本当に悲しくなりますよ。だから、男性ホルモン抑制効果があると言われている「イソフラボン」が配合された基礎化粧品でスキンケアをしたり、オナ禁をしたりして頑張っています。
――えっ!? オナ禁をすると、男性ホルモンの分泌が抑えられるんですか!?
奈波 射精をして、体内で精子が再生産される際に、男性ホルモンが大量に分泌されるんですよ。そのため、日常的にオナニーやセックスで射精していると、肌質が荒れ気味になり、ヒゲも濃くなってしまう。まぁぶっちゃけ、あんまり禁欲できていないんですけどね(笑)。”女性としての美しさ”よりも、”男性としての快感”が勝ってしまって……。だから、もとから「女性ホルモン」という素晴らしいものを兼ね備えている女性が羨ましいです。男性ホルモンとは真逆の効果があるので。美容をサボりがちだという女性の話を聞くと、「せっかく女性ホルモンが分泌されているのに、もったいないなぁ」って思います。
――ホルモンに着目される点も、まさに”男の娘ならでは”ですね。容姿のみならず、仕草も女性的ですが、やはりそこも気にされているのでしょうか?
奈波 そうですね。女性が大股を開いて座っていたり、大口を開けてあくびをしたりしていても、人によっては「あんな一面もあるんだ。かわいい」なんてプラスの印象に転じることもあるじゃないですか。でも、僕らの場合は否応なしに「やっぱ男なんだ」と思われてしまうため、仕草にはすごく気を遣います。女性らしく見せるコツは、内股にしたり、カップは両手で持ったり……こじんまりするというか、「小動物になる」といったイメージを持つとやりやすいと思います。中には女性らしさを意識し過ぎたあまり、”女性”を通り越して”オネエ”になってしまっている男の娘もいるので(笑)、あくまで自然に見せることがポイント。こういった部分は、彼女の仕草を見て学びました。
――なるほど。ところで、奈波さんは元ジャニーズJr.という経歴をお持ちですが、何かジャニタレにまつわるお話を聞かせていただけませんか?
奈波 う~ん、僕は短期間しか所属していなかったので、それほど交流があったわけではないんですよ。ただ、”元ジャニーズ”の括りになってしまいますが、秋山純さんと小原裕貴さんの2人の先輩方には、とても親切にしていただきました。小原さんが舐めていたチュッパチャップスを「舐める?」と手渡されたこともあったなぁ。羨ましいでしょ?(笑)
(取材・文=アボンヌ安田)
『わが輩は「男の娘」である!』(実業之日本社)
『キャンディ・キャンディ』の作者・いがらしゆみこの息子である奈波さんが、同棲中の彼女に女装趣味がバレてしまったことを皮切りに、日常的に女性のファッションを楽しむ”男の娘”として成長し、やがて母と同じマンガ道を歩むことに至った経緯などについて、ユーモラスに描いたコミックエッセイ。
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