「愛人を囲う気持ちが分かってきた」太田光代が語る、夫婦の距離感
睡眠や食事と同じように、誰しもが当たり前にするものと思われていた結婚、そして夫婦生活。いつしかそれが”婚活”という努力の果てにようやく達成されるものになり、ようやく掴んだ幸せも”性格の不一致”や”性の不一致”によってあっけなく崩壊することが自明のものとなった現在。世の中には『ただトモ夫婦』なる新型夫婦まで登場し、夫婦=愛情で結ばれた男女という図式はもはや幻想になりつつある。そこで、10月に発売された文庫版『奥様は社長』(文藝春秋)で、夫への過剰な愛と男まさりの社長業のエピソードを綴った太田光代さんに夫婦の在り方を伺った。
――『奥様は社長』は10年前のインタビュー記事(「鳩よ」/マガジンハウス)がベースになっていますが、今回新たに加筆された部分とのコントラストが大変興味深かったです。
太田光代氏(以下、太田)10年経って、感覚は大分違ってきましたね。私自身は何も変わってませんが(笑)。
――10年前には「睡眠前の3時間トーク」が習慣とありましたが、それは健在ですか?
太田 当時の私は爆笑問題を売り込まなくちゃいけなくてすごく忙しかったんですけど、今は彼がすごく忙しいんですよ。向こうが先に寝ちゃうんで、3時間トークも難しくなりましたね。男45歳、今が働き盛りだから仕方ないけど、私はもうちょっとかまって欲しい。いつもお互いの「かまって欲しい」が噛み合ってないんですよ。
――今、その「かまって欲しい」という気持ちの薄い、ただのトモダチ=ただトモ夫婦っていうのが増加していると言われています。
太田 いや、うちこそまさに友だち夫婦じゃないかな。「ただのトモダチ」ではないけど。でも、「妻」っていうのも違うんですよね。夫婦でも友だちでも上司と部下でもない。でも全部混じってるような、ちょっと珍しい感じです。もちろん支障もあるんですよ、夫婦としては。
――仕事上でも夫婦が近すぎるから?
太田 夫が私のことをどう見ていいか分からないんじゃないかなと感じる時はあります。私としては一緒にご飯食べるだけで幸せなんだけど、夫としては「俺は今、奥さんとご飯食べてるのか、社長と食べているのか混乱する時もある」んですって。仕事上のパートナーだと夫婦に支障が出てくるというのはこの部分かな。でもお互いが「かまってかまって」だと、今度は仕事に支障が出てくるんですよね。だってそれで完結しちゃうから(笑)。
――普通の夫婦でも職場が違えばお互いが何をやっているか理解するのは難しいし、専業主婦ならなおさらです。
太田 「仕事と私とどっちが大事なの?」とか、言ってみたいなぁ(笑)。仕事=社長としての私ですからね。でも言えたら楽だろうなぁ。逆を聞かれても困るけど。最終的には、絆や信頼感がものを言うんでしょうね。
――夫婦の絆でいえば、先述の「ただトモ夫婦」は”同居人”にも似た、冷えた考え方が先行してるように思います。
太田 それは今に始まったことじゃないと思いますよ。私が結婚した頃(20年前)の統計で、夫婦の平均会話が15分。夫とよく「信じられないよね」って話してました。ずっと一緒にいても「風呂」「飯」「寝る」しか言わなかった時代から、夫婦の関係ってそんなに変わってないように思う。変わったのは女性の生き方じゃないですか?
――働く女性が増えて、夫婦の在り方も変わってきた。
太田 そう。この間、別の取材で聞いて驚いたんですが、30歳までに1,000万円貯める女性もいるんでしょ? だけど貯めたら貯めたで不安もありますよね。彼氏もいない、結婚の予定もない、手元にあるのは1,000万円だけ。この世の中、1,000万円だけでこれから暮らしていけるとも思えない。ここからは私の推測だけど、そこで初めて「じゃあ結婚してみようかな」ってなるんじゃないかな。
――好きだからというよりは、不安だから?
太田 私たちの世代で一生懸命仕事をやってきた女性が、今「おひとりさま」って呼ばれてるでしょ。職場では上司だから孤独。休みにどこかに出かけたくても、友だちはみんな結婚して子どももいる。だからひとりで旅行したりご飯に行ったりするしかないんですよ。「ああはなりたくないな」って思う30代女性は多いと思います。「おひとりさま」報道の仕方って意地悪でしょ(笑)。高級なレストランで周りはカップルだらけでその中でワインボトルで頼むおひとりさま、とか。
――私も「ひとりでボトル空けちゃうんだ……」って思いました(笑)。
太田 自分の生活スタイルを変えず、なおかつひとりではなく誰かと居たい。それ自体は悪いことではないと思うんですよ。「解散!」って離婚する軽快さを非難する人も多いと思うけど、離婚件数でいったら私たちやさらに上の50、60代の離婚の方が多い。むしろ、ただトモ夫婦の方が長続きするんじゃないですか? お互いに過度な期待をしない分だけ、ここまでくるとお互い浮気しててもOKなのかもしれないですね。
――そう考えると、何のために結婚するのか、分からなくなります。
太田 今の30前後の女性がどうして結婚するのかっていえば、家族や社会からの圧力もあると思うし、「おひとりさま」へのアンチテーゼもあるでしょう。今の30代は就職難まっさかりの時に働く人たちだから、優秀な男の子でも高給取って奥さん子どもを食べさせるのは難しいし。一緒に働くことで助け合うこともできるし、もし奥さんの方が稼ぎがいいなら、男女逆転の役割でもいいと思う。要は両方が納得してればいいと思うんです。
――光代さんのように、外でモーレツに働く妻にはその分ストレスも多いのではないですか?
太田 そうですね。さっきも言った通り、今は夫が反抗期でしょ。帰ると絶対もめるなって分かってるから、まっすぐ家に帰りたくないのよねぇ(笑)。そういう時、私は行きつけの飲み屋に飲みに行きます。例えば奥さんが育児にかまけてて、全然自分を相手にしてくれなくて、そういう時に男の人は拠り所を求めて浮気するんでしょうね。もうね、男の人が愛人を囲う気持ちが分かってきちゃった。私は飲み屋で他愛もない話をしてホっとするくらいで済んでますが(笑)。
――そんな『奥様は社長』ゆえの多忙さやストレスを抱えながら、敢えて今不妊治療を再開しようと思われたのはなぜですか?
太田 4年くらい続けた治療を中断したのは、うちのタレントである長井秀和と橋下徹弁護士(現・大阪府知事)が同時にブレイクしたから。すごく忙しくなって、私にとっては止めるいい理由だったんです。時間も拘束されるし、体調管理も大変で、治療は正直ハードでした。今、気持ちも少し落ち着いてきたので、当時チャレンジできなかった顕微授精に挑戦しようと。以前TVで不妊治療のことを話した時に、びっくりするほど反響があったんですね。私的には「不妊治療なんてみんなやってるんじゃないの?」って思っていたのに。
――確かに大っぴらには言えない雰囲気があります。
太田 でも、不妊って病気じゃない。毎日のように注射したり薬飲んだり通院したり、女性にとってリスクが大きいにも関わらず、負い目になるなんておかしいでしょ? 最も出産に適してる年齢は17~24歳くらいと言われています。てことは、結婚年齢が上がれば上がるほど、自然妊娠は難しくなるわけだから、必然と不妊治療者は増えてるはずなんですよ。
――まさにこれからの女性が直面する問題です。
太田 30歳過ぎて結婚して子どもが欲しいと思うのであれば、結婚と同時に不妊治療を始めるのも手かもしれない。年齢が上がれば上がるほど、受精卵が着床しづらくなるのは、悲しいけど現実なんです。大変になる前に、確実な方法を試すのはお互いにとっていいことだと思う。何も異常なことじゃない。夫婦のどちらが悪いということでもない。自然にそう思えるような社会環境に早くなって欲しいし、一企業の経営者として不妊治療の待遇向上を国に働きかけたいと思います。
(西澤千央)
『奥様は社長―爆笑問題・太田光と私』太田光代著
「爆笑問題」の事務所社長にして太田光の妻、太田光代の爆笑エッセイ。バブル時代の極貧生活、スケベサイトを見ていた夫を痣が出来るまで殴り飛ばす、夫より少し後に死にたいという思い。大爆笑と過剰な愛に満ちた普通じゃないエピソードの数々。書下ろしエッセイも収録。
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夫婦=一番近い他人、を忘れないこと
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