コラム
[連載]そうだソルティー京都、行こう

バタ臭い人形に、実力行使の占い……歴史ある神社がおかしな方向に!

2010/11/23 11:45

 京都は、世界屈指の観光地。そして女の憧れの地である。美味いもん食って、寺社を見て、お洒落して、勉強する。何でもかんでも「京都でする」のが女の憧れなのだ。女性誌はこぞって京都特集を組み、ガイド本や京都観光エッセイがボロボロ出版されている。確かに京都には歴史がある。名産品がある。美味がある……そして誰も取り上げないけれど「しょっぱい京都」もある。

 しかし京都のほんとうの魅力は、こういうソルティーなところにあるのだ。上品ぶっている女性誌では取り上げないほんとうの京都の姿を、しっかり焼き付けて欲しい。そうだソルティー京都、行こう。

【第1回 松尾大社(無料ゾーン)編】

 松尾大社は、奈良時代から続く由緒正しい神社である。足利義政、豊臣秀吉といった歴史的有名人が馬を奉納してみたり、皇族がお参りしたりなんだり。そう、ここは有事に朝廷が援助をしてくれる「二十二社」のひとつなのだ。その中でも「上七社」という上中下のうち上クラス。神社のランクは「官幣大社」といって最上級である。全国に神社は約8万社あるというので、いってみれば松尾大社は東大理三首席並に優秀な神社なのだ。調べれば調べるほど、歴史と威厳のある神社である。しかし残念なことにその歴史も威厳も、調べなければまったくピンと来ない。ただ観光に行っただけでは、ソルティー観光地の王様的存在になっているのだ。恐るべし京都。

 とにかく酒の神様だけあって、洒落っ気満載なのである。

 まずは境内に入る手前の、「お酒の資料館」だ。ここからもうガンガンに攻めてくる。お酒の作り方や日本酒のラベルなどが展示されており、中に入ると、昔としまえんにあった「アフリカ館」みたいな匂いがする。そこにひとり、酒をかき回している男性がいるのだ。彼はいつでも孤高を保ち、少し高いところから資料館を見下ろしている。はっぴを着て葉巻をねじり、そして当たり前のようにバタ顔……。

彼の名前は「フィリップ・マツオ」。厳格な職人のお父
さんの元に生まれた日系二世である(ウソです)

フィリップの後ろ姿。凜とした姿勢に威厳を感じる

 展示品は実際に使っていたもののようで、非常に歴史を感じるのだが、フィリップがここの空気を思う存分安っぽくしてしまっている。

 また「お酒の資料館」のお隣では、たいていささやかな展示をしているので、ついでに覗いてくるとよい。

 さあ、こんな前哨戦を眺めたあと、期待の境内入りである。ここは左回りに見学していこう。手を洗ってうがいをして身を清めたら、まずはおみやげ屋さんへ。

 お酒の神様を祀っているだけあって、お酒のお守りなどが売っている。ここのお土産は正直、欲しいものがたくさんある。その中に、山吹のお守りが。ここは山吹が自慢の神社でもあるのだ。かわいらしい黄色のお花をかたどったお守り。……だけど御利益が分からない。書いてない。宮司さん(なのか? 売店にいるのは)に聞いてみると、「……いろんな……」とグレーな感じ。うむ、ここはいっそ「多少しょっぱくても許されて愛されるお守り」にしてみませんか。必要な人はたくさんいるはずだ。

 そして恋みくじを発見。境内には「相生の松」というのが生えていて、恋愛成就の御利益もあるらしいが……このみくじはデジャブだ。確か、恋愛成就に御利益があると評判の東京大神宮でも引いたことがある。お守りを作るメーカーが全国の寺社に卸す「お守り産業」なるものがあるんだろうなとは思っていたけれど、実際に目の当たりにするとなんとも……。個人的にはこのみくじ、9割が大吉だと踏んでいる。松尾大社版も試しに買ってみよう。

やはり大吉! それにしても、近所のカラオケ好きな
おっさんが作ったかのようなしょっぱい歌......。歴
史も文化も威厳もなにもかもがみじんもない。

 そしてこの無料スペースで一番の売りが、「樽うらない」。矢を射るのは、酒の神様だけあって「樽」。あくまでもここは酒の神を祀るんだという意気込みを感じるイベントである。矢を2本射て樽に入ったらよし、みたいな占いである。占うといっても、実力で吉を勝ち取ることができるのだ。これはやらずにおれまい。ちなみに、樽以外のところに何度か矢を射ってみて(人のいない方向にね!)、練習するとよい。なぜならここの弓はかなりいい加減なので、弓道部出身者でも甘く見てはいけないからである。

この占いが、この先に現れる有料ゾーン・アクティブ
アトラクションの始まりなのである

 そして「相生の松」に来たら、絵馬を読もう(恋愛成就の絵馬が一番読み応えがあるのだ)。「私にふさわしい男性が現れますように」などという上から目線のお願いや、「いい人と結婚できますように。祐一くんと仲良くできますように」などという二股ご免なお願い事がいっぱい読める。少し先の拝殿でお賽銭を投じて、いよいよ松尾大社の本領発揮、夢の有料ゾーンへと向かおう。

この奧には、500円ではもったいないほどのめくるめく
世界が......!

 次回有料ゾーン編へつづく
(和久井香菜子)

『そうだ京都、行こう。』

あれ、ネーミングかぶってんな~


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最終更新:2019/05/21 18:38
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