ピースに格の違いを見せつけた、天才芸人・出川哲朗の比類なき天然さ
今回ツッコませていただくのは、10月26日放送分『リンカーン』(TBS系)から「リストランテリンカーン」に登場した出川哲朗。出川といえば、「抱かれたくないランキング殿堂入り」とか「よく『かむ』、トーク下手」「うるさい」などのネガティブなイメージが続々思い浮かぶだろうが、この日の出川は輝いていた。
リストランテリンカーンに「シェフ」として登場したのは、いま吉本興業が猛烈にプッシュしている二人組・ピースと、しゃべりとツッコミが抜群に上手いフットボールアワー・後藤輝基と、出川哲朗の3組。毎回この企画は、勢いのある若手がトップバッターとして登場し、何の笑いも残せずに、2組目、さらにトリを務める3組目の芸人がオイシイところをさらっていく流れである。ピースはご多分に漏れず、やはり印象のないまま。
続いて、後藤は、「飛行機の機内誌で見た」というB級グルメ「つけナポリタン」をアレンジした「つけロンチーノ」など「つけゲティ」を披露。イカ墨作りのためにイカを釣りあげて大暴れされたり、アツアツの油を直接味見したり、生麺が製麺機からどんどんニュルニュル出てきてしまうハプニングなどで笑いを提供していた。だが、いくらトークやツッコミが上手いとはいえ、また「最近、キレキレ」とネットなどで絶賛されているとはいえ、後藤の場合はその達者さゆえに「全部盛ってる」ように見えなくもない。
一方、「リアクション芸人」として、また「天然の天才(?)」としての格の違いを見せつけてくれたのが、出川である。出川はしどろもどろの「かみかみ」のトークで、「パエリア」と「ガスパチョ」を披露。何の疑いもなく、何度も何度も力強く「ガスパチョ」のことを「ガスパッチョ」と「東京ガスのCM」状態で言い続けていたのは、さすがの比類なき天然ぶりである。さらに、リアクション芸人としてのベテランらしく、シーフードの具材にはきっちりと「ハサミを持つ蟹」「吸盤を持つタコ」というリアクション好適品をチョイス。蟹に何度も挟まれるという「お約束」を披露していたが、蟹に向かって「おまえ、今日はそういう(リアクションの)日じゃないんだよ……」と真面目に語りかける様子は、蟹との立派なコンビ芸になっていた。
思えば、『今夜決定!!そこまでやるかマン 世界最強の勇者達6』(日本テレビ系、9月13日放送)で「クマとのディープキス」などを見せたように、動物とは非常に相性が良い出川。「テレビでの見え方」を熟知していることに関しては、『ビートたけしのお笑いウルトラクイズ』(日本テレビ系)などでもダチョウ倶楽部と並んで、突出した能力を見せつけている。
「しゃべれない」けど、ある世界では一流の出川哲朗。長年、リアクション芸人として第一線にいるわけに納得した。
(田幸和歌子)
後継者不足が深刻な伝統芸
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