[女性誌速攻レビュー]「日経ヘルス プルミエ」12月号

「日経ヘルス プルミエ」の脳特集で脳力UPにフェンディのバッグが……

2010/10/24 22:00
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「日経ヘルス プルミエ」(日経BP社)
12月号

 表紙&巻頭インタビューは夏木マリ姐さん。「美STORY」12月号では「サバサバしている私」を語っているそうですが、こちらでは、突然「フランス人のように愛に生きる!」と宣言したり、カレに誘われて途上国に行き、子どもたちの前でパフォーマンスをして「ハッピー」になったり、エチオピアのバラ農園を中心とした援助プロジェクトを立ち上げたり、「2年後の還暦のとき、赤いドレスをスカッと着て、ギターを弾くこと」を目標にしたり……。パートナー選びも途上国援助も還暦祝いも、まるで「オシャレな私」を演出するアクセサリーのように聞こえるファッショナブルトークを展開しておられます。途上国で歌って「私たち自身がハッピーになっていることに気づいた」と語るマリ姐さん、肝心の子どもたちはハッピーになれたのでしょうか。

<トピック>
◎特集 食べて賢くなおす!
◎特集 聡明な女性の、脳を鍛える技術!
◎相川喜恵子さんに聞く 満たされた心で生きるための知恵

■食べ物に対して失礼ですよ!

 巻頭特集は「食べて賢くなおす」。しょっぱなから”美肌師”佐伯チズが水を差しています。

 自分に何が必要か、好きか嫌いかも分からない人は感じる力を失っているのではないかしら。これでは健康に少しもプラスにならないし、何より食べ物に対して失礼ですよ。

 この思想自体は素晴らしいと思うんですが、それ言っちゃおしまいでは……。基本的にこういう雑誌は、自分に何が必要かまるで分かってない人が読むモンですし、分かりたいとも思っていないはず。テレビで「納豆がイイ」と言われれば、納豆が品薄になって納豆会社が困るまで買い占めちゃう、そんな人が読む雑誌なんです。現にこのインタビューのあとには「1日3個で効く ミカンは美肌フルーツ」「キノコで免疫力を上げる! 脂肪を減らす!」「毎日、ショウガ10gでお腹から全身が温まる!」「豆乳 毎日、1パック200mlで骨を強くし、コレステロール対策もおまかせ!」という記事が続いています。1日3個とか毎日10gとか、いったい佐伯チズの話はなんだったのかという……。ちなみに、ミカンを1日3個、2週間食べ続けると、肌に「”若干”ながら、改善効果が見られました」とのことです。若干です、若干。正直ですね。


■脳の話は脳(ノー)サンキュー!

 次に「聡明な女性の、脳を鍛える技術」にいきます。ここでは、プルミエ世代の有名人5人が「脳の力を高める」習慣を語っています。

人に対する興味や感心を持っていると、人生がとても豊かになり、脳は絶えず活性化する。(林文子)

2年前の夫の死では、強烈な苦痛でどん底に落ちましたが、脳はとんでもなく活性化しました。(脚本家・田渕久美子)

ブログも、脳の活性化に大いに役立っています。(PRプロデューサー・飯野晴子)


 と、言いたいことを言っていますが、そもそも「脳の活性化」ってどういうことなんでしょうか。上記の方々のインタビューから察するに、「頭を使う」「考え方が変わる」程度の意味で使われているようです。科学的な話ではなく”何となくそんな感じ”てな話です。それを「脳」というワードを無理矢理使って語るから、おかしなことになっています。

 その極みが「脳の力を高めるアイテムはコレ!」というコーナー。メモを習慣づけているという林市長の「万年筆」はまあいいでしょう。平野レミの「ツイッター」と「アイデア調理器具」も、一応、文章を140字にまとめたり調理器具を考案したり、無関係ではなさそうなので許せます。しかし、田渕久美子の「木彫りの仏像」と「フェンディのバッグ」はいくらなんでも。仏像は眺めていると心が落ち着く、フェンディのバッグは気分が上がるという意味で挙げているのですが、それを「脳の力を高めるアイテム」って言い切っていいんですか? フェンディの? ヒョウ柄バッグが? 「『カワイイ!』と思ったらすぐに買ってしまいます」って、それは単なる衝動買いでしょ。脳の活性化は言いわけ。まったくもー、脳みそ入れ替えて出直してきてほしいです。

■瞑想(迷走)するプルミエ世代

 フェンディのバッグ話の十数ページあとに、女性で世界初、瞑想・ヨガの最高指導者、相川圭子さんのインタビュー「満たされた心で生きるための知恵」があります。ここのページはすっごくピュア! あれやこれやと些事に振り回されている自分が恥ずかしくなります。しかし、すぐ次のページの企画は「スッピンにも自信!! 肌から届けるビタミンCで明るいもっちり肌に」。お高い美容液やイオン導入器など、女の虚栄心の塊みたいな品がズラズラ紹介されています。一瞬で天から地に落ちました(笑)。

 そんなわけで今号の「プルミエ」は、煩悩と悟りの間で揺れる中年心という印象。心と体は切り離せないものですが、真面目に精神論を語ってしまうとその他の記事がアホくさく見えてしまうという危うさを秘めていることが分かりました。ま、それはそれ、あれはあれってことですかね。
(亀井百合子)

『日経 Health premie』

煩悩がある方が、健康的というメタファーなんでしょうか。

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最終更新:2010/10/24 22:11