頭髪問題もさわやかに語る石田純一に比べ、フサフサ茂木健一郎は……
石田純一はカッコイイ。彼が先月出版した、脳科学者・茂木健一郎との対談本『茂木先生が石田純一の「幸福脳」を解剖したら』(講談社)を読んで、ますますそう思った。本書で彼が語ることは何から何までカッコイイのだが、いちばんカッコイイ発言を紹介すると、「ダンディズム」に関する以下のくだり。妻の理子にも「朝の見苦しい姿は見せない」という流れで一言。
やっぱり、無防備なハゲ散らかした姿なんか見せられないですからね。
ハゲ散らかした? 思わず二度読みしてしまった。温水洋一でもなく高橋克実でもない。一応「女性にモテるキャラ」で通っているザ・トレンディ俳優の石田純一が、ハゲ話である。妻の理子は「見せてほしい」と言うそうだが、それは嫌なので先に起きて頭髪を整えるのだという。こういうことをサラリと言ってしまう石田純一、カッコイイ。
一方、モジャモジャ頭髪の豊かな茂木健一郎はひどかった。タイトルには「石田純一の幸福脳を解剖したら」とあるが、ふたを開けてみれば、脳科学なんて単なる添え物。石田が「女性とセックスする際に台風を利用する」といったノウハウを語ると、「それはいわゆる『つり橋理論』と一緒ですよね。つり橋を渡るときってドキドキするんですけど、それを『好き』のドキドキと勘違いして惚れちゃうという理論」とぬるい解説。はたまた自分から「この前、『セックスは脳にいいんですか』って聞かれました(笑)」と興味深そうな話をふっておきながら、「悪いわけはないですよね。逆にそれをしたいがために努力する、健全に努力するのは良いことですから」と誰でも思いつくようなオチ。あとは、誰々がこう言っていたという引用と、石田純一のヨイショに終始。言うことが机上の空論以下なのである。そればかりか、石田純一と地上波テレビ論について語り合った際、こんなことを言い放っていた。
僕もときどき行くじゃないですか、テレビのスタジオに。いわゆる「雛壇芸人」の人がいて、僕も脳科学者として同じところにいて、本当の深いところについては、なかなかテレビではいえなくて、「アッ」というひらめきが脳を活性化する「アハ体験」がどうのこうのとかってなっちゃうんです。(中略)「テレビのスタジオはちょっと戯れて、それなりのエンターテインメントを提供して帰っていくところ」ってなっちゃってるような気がして仕方ないんですよ。
さすが、バラエティーに出まくって、アハ体験でお茶の間に名を売って、しょうもない本で稼いで、所得の申告をしていなかった高名な脳科学者先生は言うことが違うなあ。で、その解決策は「思い切った編成をしてほしい」とのこと。そのほか「ユーストリームが」「ユーチューブが」「ツイッターが」とやたらネットを礼賛しておられます。いわく「ネットも『2ちゃんねる』から『ツイッター』にシフトしてるでしょ。ツイッターって2ちゃんねると違って、ストレート・メッセージのメディアなんですよね。揶揄したりっていうのはあんまり流行らなくて、本音のメッセージ」なんだって。2ちゃんねるで先生を揶揄しまくってるあんたら、もう古いんだよ、と先生が怒ってますよ~。
ということで、2ちゃんねるで茂木健一郎を検索してみたら、「NHK『プロフェッショナル 仕事の流儀』 茂木健一郎さん抜きで再開へ」というスレッドが立っていた。今年3月末で終了した番組『プロフェッショナル 仕事の流儀』が、10月から司会役なしで再開するのだそうだ。そこに、
「オカルト脳科学者 脱税の問題なくてもいなくなってよかったよ ゲストの良さを引き出せてなかったし」
「そもそも聞き役に向いてないだろコイツ 見ててイライラしたわ」
「ゲストよりも目立とうとするし ゲストに脳科学の説教をするし ほんとうざかったわ」
「こいつが居るだけで一気に胡散臭くなるから英断」
といった書き込みが多数あった。視聴者の本音のメッセージが実によく伝わってきた。本書における茂木健一郎も、まさに上記と同じであると付け加えておきたい。いや、逆に茂木健一郎がいたおかげで、よりいっそう石田純一のカッコよさが際立ったという良い効果もあった。ちなみに、石田純一の「ハゲ散らかした」発言に対する茂木健一郎の分析は、「『この人は、髪が薄くなることなんか、本当になんとも思っていないんだな』と思えた瞬間でした。(中略)衰えることを怖がらないことが衰えないこと。石田さんを見て学んだことです」。これって脳科学!? 頭科学的な結論を言えば、男の価値は頭髪の量では決まらない。薄毛に悩む男性に贈りたい一冊である。
(亀井百合子)
亀井百合子(かめい・ゆりこ)
1973年、東京都の隣の県生まれ。編集プロダクション勤務を経てフリーランスライターに。ファッション誌やカルチャー誌のライター、アパレルブランドのコピーライターとして活動中。
茂木ブランドもそろそろ賞味期限近いね
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