「化粧品を一緒に選ぶ」のが良妻!? 「VERY」のイケダン量産プロジェクト
今月号の「VERY」は一見したところ、おとなしめの作りのようです。先月号のような「母さん、夏の終わりに豹になる!」というような衝撃的なタイトルも踊っていませんし、夏の狂想曲も終わったということでしょうか。ただ、常々この女性誌レビューでお伝えしている通り、女性誌は「オシャレ」という仮面をかぶってはやりたい放題暴れまくる、なまはげのような存在(なまはげもオシャレの範疇)。今月号の「VERY」も匂う匂う。「悪い子はいねぇか~!?」とこちらがなまはげになって、詳細を確認したいと思います!
<トピック>
◎オシャレすぎて感動しました! コンフォートシューズの逆襲
◎イケダンの隣の『あなたの良妻力偏差値』は?
◎ママライターが体当たり取材で実証 まだまだ『おっぱい』はアガります!
■ファッション誌としての底力
今月号の大特集は「オシャレすぎて感動しました! コンフォートシューズの逆襲」です。ファッション誌があまた存在する中で、第1特集に「靴」を持ってくるとはさすがの「VERY」です。トップはSHIHOや坂下千里子ら有名人にお気に入りのコンフォートシューズを紹介してもらい、靴のカタログページが続きます。後半からは、靴ありきのコーディネート紹介ページなのですが、贅沢にも特集全体で29ページも使っています。これだけ靴だけでページを引っ張れるのも、「VERY」らしさが確立されているから。読者が好きなブランド、デザイン、ライフスタイルを熟知しているからこそ、大胆に展開できるのでしょう。靴だけで30ページ近くを割けるのは、「VERY」か、バチカン市国並みの世界観(宗教観)を共有している「25ans」(アシェット婦人画報社)だけ!
もう一つ、今月号の素晴らしいファッション企画は「1年生ママ2人の行事服頼れるブランドはここ! エレガンス派滝沢眞規子さん・ハンサム派藤原ひろみさんの学校服」です。「VERY」お得意の”学校服”企画で、「個人面談」「PTAの集会」「学芸会」などの設定に合わせたコーディネートを提案。企画自体はいつも通りの展開なのですが、今回はオールご本人の私物だということ。なので、価格表記もなく、時々「え!?」とビックリするようなコーデもないわけではないのですが、109ブランド「SLY」のジャケットを取り入れるなど新しい風が吹いています。上記と矛盾するようですが、編集部や固定スタイリストですと、世界観を作り上げやすいものの、新しさを摘んでしまうことも。それを思えば、「VERY」の攻めの姿勢が垣間見られる、いい企画なのではないでしょうか。
■イケダンも大変だぁ~!
「VERY」が全面押ししている「イケダン」(=イケているダンナ)。それを増殖せよとの「VERY」からの指令なのでしょうか、「イケダンの隣の『あなたの良妻力偏差値』は?」という謎の企画が急きょ差しこまれています。リードでも「夫をイケダンにするかしないかは、全てあなたの力量にかかってます!」と考える隙も与えず、読者にイケダン製造マシーンになれとのことです。うーん。いい夫婦の日(11月22日)まで遠いし、何で今、この企画なんでしょう。
その理由に答えを見つけられませんが先に進みます。歴代のイケダンの妻に「良妻たるべく、日ごろから心がけていることは?」と聞いたところ、仰天の回答が! 「体型維持と健康のため、32品目取り入れたメニューを心がけています。スリムになりました」「吹き出物に悩んている主人。肌をスッキリさせる洗顔料やローションを一緒に選ぶようにしている」「乾燥肌の主人には、肌の状態に合わせてグルーミング類のアドバイスをしています」って、相変わらず「見た目」に関する答えしか返ってこない……。ちなみに、「VERY」が提唱するイケダンの定義は「仕事をバリバリしながら、家庭を大切にしている旦那様のこと。忙しい時間の合間に、妻の手助けを惜しみなくしている男性」って書いてあるのに、外見がいいってことはあまりに基本過ぎて不文律なんでしょうか。
さらにイケダンをつくるための「良妻力偏差値を測る10問チェックリスト」の内容もまた独特。「夫の頭髪の状態に合わせて、シャンプーを選んでいる」「男物のトレンドもチェック。夫のファッションコーディネートは完璧」「夫にとって心地よい洗顔料を把握している」など。もう勘弁してやって~というぐらい、夫にカッコよさを求めているようです。それでも「VERY」読者の83%はセックスレスなんでしょ? ということは、「カッコいい人(優秀な遺伝子)とセックスしたい」というより、「”オシャレな私”の夫」にカッコよくいてほしいということ!? 相変わらず「VERY」読者は欲張りさんのようです。
というわけで、今月号はファッションページが圧勝した「VERY」。「ママライターが体当たり取材で実証 まだまだ『おっぱい』はアガります!」という企画もタイトルは面白そうだったのに、中身はイマイチ。飛ばし過ぎたら「こら!」と言いたくなるのに、大人し過ぎると「大丈夫?」と励ましたくなる、「VERY」と筆者の恋の駆け引きはまだまだ続きそうです。
(小島かほり)
ほ~んと女心を弄ぶんだからっ!
【この記事を読んだ人はこんな記事も読んでます】
・体力がないと読めない!? 濃厚すぎるほど100%「VERY」な8月号
・「Men’s LEE」と真逆の精神! 「VERY」による夫管理術とは?
・「セレブとは我慢の集大成」という現実を見せた、「VERY」10月号